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    らんじゅ

    すぎさく運命論者兼杉下に囚われる者
    色々捏造をする
    とみとが、うめ、らぎ辺りも描くかも
    パスは大体「」の中の英訳です

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    らんじゅ

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    息抜きのポーパロ小話
    薔薇に囲まれる🍅🌲はきっと耽美
    🍅💊もガッツリ
    ⚠️🌲🌸前提

    ざっくりとしたポーの一族
    簡単に言うと吸血鬼、血そのものを吸うのではなく生気を糧とする
    何処かに薔薇の咲き誇る不思議な村があり、そこには「キング・ポー」と呼ばれる始まりのポーと一族が薔薇を摘みながら穏やかに暮らしている。時々人間が迷い込む。
    人間の中に紛れて暮らすポーもいる。

    #すぎさく
    tooLateBlooming
    #うめすぎ
    overfilling
    #うめひい
    japaneseApricot

    薔薇の香りのする街2 この街には強きものが掲げた看板がある。

    『これより先
    人を傷つけるもの
    物を壊すもの
    悪意を持ち込むもの
    何人も例外なく
    ボウフウリンが粛清する』

     それは頂点に座す龍が敷いた、たったひとつの掟。懐に囲うものたちを害する者に宛てた修羅からの最後の警告。

    『梅宮一』それが龍の名前である。

     龍の元には、実に多くの少年たちが集う。その全てを龍は快活に笑い、慈愛でもって固く握る拳を解き、優しく触れる。龍にとってこの街で息づく全てが加護対象であり、集う少年たちは須く弟妹であるのだ。
     この街にはもうひとつだけ掟がある。

    『この街に漂う薔薇の芳香の理由を口にしてはならない』

     この街はいつも微かに薔薇の香りがする。花屋には常に新鮮な薔薇が置いてあるし、薔薇の香料は何処ででも手に入る。そして、梅宮一からは薔薇の香りがする。白い髪が揺れるたび、翠緑色が瞬くたび、彼の象徴たる学ランの裾が靡くたび、甘くその芳香が花開くのだ。

    『梅宮一は人間ではない』

     この街に住む人々がなんとなく察していて、なんとなく口にしないこと。薔薇の香りがする男の子たちの正体を、わたしたちは知らんぷりをする。


    ❇︎


     風鈴高校の屋上は実に雑多だ。主に梅宮の趣味である畑はあるし、くつろぐためのソファやベンチ、遊ぶための卓球台やミニ四駆のコースまで様々なものが置いてある。その一角に梅宮がひっそりと作った温室もあった。園芸の延長で作られたと思われてはいるが、これに関しては理由があった。

     梅宮一は人外である。

     ヒトより長く在り、その指先から生気を吸う、人智の及ばぬ美しき生き物。よりわかりやすく言うのなら『ヴァンパネラ』であるのだ。もはや帰ることは叶わぬ故郷の同族たちはこの名称を嫌い、自らを『ポー』と名乗った。
     ポーは基本的に実に温厚で、真っ赤な薔薇の生気を好んで口にした。ポーの食事は薔薇か、時々ヒトなのだ。ヒトの生気を吸う時だってほんの少し。首筋に牙を突き立てて死ぬまで生き血を啜るなんて御伽噺の吸血鬼のようなものではない。
     故に梅宮は薔薇を育て、その生気でもって生きながらえている。畑の手入れと同じように梅宮は薔薇の手入れに力を入れており、屋上の一角にひっそりと佇む温室には、季節を問わず鮮やかな赤い薔薇が咲いていた。

    「……うん」

     梅宮はひとつ息を吐くと、丸めていた背をうん、と伸ばして立ち上がる。それから綺麗に並ぶ薔薇を指先で順に触れて、三番目の薔薇を剪定鋏で切り取り、ひとつひとつ棘をむしっていく。生き生きと開くそれを見てうっそりと微笑むと、梅宮はくるりと温室の入り口を振り返る。

    「食う?」

     入り口を塞いでいたのは、猫背をさらに丸くした杉下京太郎だった。さらりと流れる夜色の中から焦茶の月がジッと梅宮を見ていた。杉下はふるりと頭を振って梅宮の申し出を辞退すると、またジッと梅宮を見つめる。

    「そう?じゃ食べちゃお」

     ぱちりと翠緑色が瞬くうちに、薔薇はみるみる枯れてぼろぼろに砕け散った。梅宮は薔薇の残骸をゴミ袋に放ると、杉下を振り返る。梅宮が動いたことでふわりと薔薇の香りが立った。

    「杉下、水に映ってないよ」
    「え、あ……すみません……」

     杉下が慌てて下を向くと、ぱちゃりと足元の空を映す水たまりが揺らぎ、波紋と共にじわりと杉下の姿が現れる。

    「……やっぱ食ったら?顔色も調整できてねえよ、ほら」
    「……はい」

     梅宮は杉下の手を取ると己の首元に誘導し、杉下は少し迷ってその指先を肌に触れさせた。ブワ、と薔薇の香りが立ち、ゆるりと目を細めてそのまま伏せる。杉下の触れた肌には、指の形に鬱血痕ができた。

    「すみません、ありがとうございます……」
    「おう、で?どうかしたの?」

     梅宮の問いに、青白い顔がほんの少しだけ良くなった杉下は、顔を顰めて目を伏せる。指先を弄りながら何やらもじもじと少しだけ考えるようにしたあと、杉下はまるで叱られるのを怖がる子供のように恐る恐る口を開く。

    「さ、くら、の貧血が……治らなくて……転化は上手くいったのに……やってもやっても流れていってしまって……どしたらいいのか……わからなくて……」

     ボソボソと困り果てたように溢す杉下を見て、梅宮はふむ、と腕を緩く組んで片手で顎を撫でる。
     
     この街にいる梅宮の同族は、三人。
     一人は防風鈴四天王の一角、柊登馬。一人は今目の前にいる龍の狂信者、杉下京太郎。それから、つい先日杉下が血を分けた気高き花、桜遥。どうしたことか、ポーとして目覚めた桜はずっと体調を崩しているようなのだ。
     
    「俺が、転化の手順、間違えたん、でしょうか……」
    「いやいや、間違えてたら桜は目覚めてないよ。そのまま死んじまうのもいるしな。ようは体質なのよ、キングの直系でもヒフの薄い奴は出てくるんだって」
    「ひふ……」
    「あーなんか、なんて言うかな、膜?がさ、あるのよ。で、それが薄かったり穴が空いてたりすると、漏れてっちゃうワケ。こういうのは柊が上手いよ、俺はからきしでな〜」

     梅宮がにこりと笑いながら杉下の頬に指先を這わせる。余程桜の具合が悪いのか、思ったよりもずっと杉下は衰弱していて、その頬は冷たかった。
     ヒトは、異端を排除するのに容赦をしない。故にヒトから隠れ、ヒトに紛れて、ポーの一族は生き延びてきた。成長をしない、温度のないポーをいつだってヒトは排除の対象に据え、銀の銃弾と十字架で殺めた。だからポーは常にヒトのふりをする。息をしているふり、ガラスや写真に映るふり、体温があるふり、ドアに指を挟んだなら痛がるふり。
     ヒトの中に紛れるポーであるならば当たり前にしなければならないことさえ出来ぬ程に、杉下は桜に生気を分け与えていた。

    「……杉下、もっと吸いな。お前が消えちまう」
    「…………すみません……」
    「いいよ、いつも言ってるだろ?お兄ちゃんたちに任せなさいって。ヒトより桁がひとつふたつ違う付き合いになんだから」

     梅宮は杉下の手を引いて温室を出ると、屋上の一角に置かれたソファに歩いていく。座面に置かれた漫画やブランケットを端に避けて梅宮は腰を下ろし、腕を広げて杉下を呼ぶ。よく回らない頭で腕の中に収まると、濃い薔薇の匂いがする梅宮の首元に顔を埋めた。


    ❇︎


    「よう」
    「……あ?」

     ブワリ、と薔薇の香りが立った。
     ウトウトと微睡んでいた桜は、重たい目蓋を持ち上げて声のした方向に目を向ける。玄関の戸を叩く音はしなかった。ついでに入ってくる音もしなかった。シンプルが過ぎる桜の部屋に突然響いた声の主は、武神の名を頂く四天王の一角、多聞衆筆頭・柊登馬であった。柊はおっといけね、と靴を脱ぎ、スタスタと玄関に置きに行った。

    「……どっから入った」
    「ちっとショートカットをな。具合悪いんだって?」

     柊の言う通り、桜はここ最近すこぶる具合が悪かった。愛しい男に血を分けられて人を辞めて以来、座っているのがやっと、というほどに体調を崩している。杉下からどれだけ血を分け与えられようと一向に具合が良くならないのだ。昨夜困り果てた杉下が青い顔で梅宮の所へ行くと言っていたのを思い出して、桜は細く息を吐いた。

    「ずっと、貧血?みたいな……くらくらして、眠い」

     柊は横たわる桜のすぐ横に胡座をかくと、額に散らばる白と黒の髪をさらりと撫でて控えめに微笑む。

    「ああ、そうだろうな。全部出てってんだから。お前ヒフが薄い上に穴開いてんだよ」
    「ひふ……?」

     桜がどこか怪我をしていただろうかと不思議そうな顔をしていると、柊はクツリと笑って付け足した。

    「皮膚じゃあなくてだな……あー……触ってみた方がわかるか?ホレ」

     柊は桜の手を取ると己の首元、肌には触れない位置に導き『ヒフ』に触れさせた。指先には何も触れてはいないのに、温かなそれに桜は僅かに身体を震わせる。

    「……なんか……ある……」
    「お、わかったな。良かった、どう説明したもんかと思ってたんだ。アイツへ説明するにはだいぶ時間かかったからな。これに穴が開いてんだよお前」
    「俺、どうなるんだ……?」
    「不安か?心配するなよ、今から塞いでやる。……対処療法でしかないが」

     柊は桜の身体を抱えると、壁に背を預けて胡座をかき、桜に布団をかけてやる。目と鼻の先に晒された柊の首元から、薔薇の匂いがした。桜は朦朧とした頭で何を考えるでもなく、上手く体温の調節ができない冷たい指先を這わせ、血を吸う。柊は驚いたものの桜の好きにさせ、指の形に鬱血が残るのを良しとした。

    「……?……アッ、悪い……」
    「構わん。眠かったら寝てて良い」
    「……おう……」

     ぼんやりとしていた桜がハッとして慌てて手を引くと、柊はその手を捕まえてまた首元に戻す。ぽん、と桜の頭を撫で、柊は桜を抱き込んで目を閉じる。
     不思議な感覚だった。じわじわと暖かい空気に包まれているような、杉下に抱き締められているときのような、なんとも言えない心地良さに桜はゆるゆると眠りに落ちていった。


    ❇︎


    「お!さっすが柊仕事が早い!」
    「声がデケエことを自覚しろお前は……」

     ペカリと夏の太陽のように笑う梅宮は柊のぼやきにハッとすると、そっと口に手を当ててこくりと頷く。その横で杉下はぺこりと頭を下げ、桜の元に近寄った。桜の顔色はだいぶ良くなっており、死体のような色だった肌に僅かな赤みが差しているのを見て杉下はホッと息を吐いた。

    「……ありがとうございます、柊さん」
    「おう、根本的な解決じゃあねえからな。どれくらい保つかはわからん」
    「……どのくらい、かかりますか」

     柊の腕に収まる桜の髪をさらりと撫でる杉下が、恐る恐る訊ねる。すると柊は難しい顔をして桜を抱え直した。

    「ゆっくり時間をかけて塞いだ方が良いとは思う。いかんせん知識として知ってるだけで実際にやるのは初だ」
    「柊さんでも……ですか」
    「柊〜ちょっと摘んできたけどいるか〜?」

     ヒョイと仕切り戸の向こうから顔を出す梅宮を見て、柊はフン、と鼻を鳴らし顎をしゃくる。

    「見ろアイツを。アレがか弱く見えるか?」
    「いいえ」
    「そういうことだ」
    「なんの話?」
    「お前の世話は疲れるなって話」
    「いつも感謝してるぜ、俺の毘沙門天」

     梅宮は数秒キョトンとした顔をして、翠緑色の宝石のような瞳を半分隠してうっそりと笑った。
     柊はこの目が嫌いだった。何もかも見透かすように笑う梅宮が嫌いだった。剥き出しの神経に優しく頬擦りされるような、すでに止まってしまって久しい心臓に直接キスされるような、そんな不快感をこの笑顔から感じるのだ。命を握られている心地がする。
     おそらくは、これが遠い昔のポーの一族として生きていた頃の梅宮なのだ。人を信じない、人を真似た、『人でなし』の。柊はスウ、と目を細めると美しく微笑む梅宮を睨みつける。

    「その顔をやめろ」
    「……変な顔してた?」

     梅宮はパッと『いつもの』笑顔になると、薔薇を手に柊の傍らに腰を下ろした。柊の膝で眠る桜を覗き込む杉下に手を伸ばす。細く柔い夜色に指を差し込むと、緩くうねる髪をするりと梳いた。

    「ごめんってほら、綺麗に咲いたの柊にあげる」

     新雪の髪、透き通る肌、宝石の瞳、赤い薔薇。絵画の中にでも棲んでいそうな出立ちで梅宮は微笑む。……梅宮ならどこかしらのタイミングで本当に描かれているかもしれないが。柊は顔を顰め、梅宮の差し出す薔薇ではなく、梅宮の首に手をかけた。
     ブワリと部屋に広がる薔薇の芳香に、梅宮は唇を緩ませる。梅宮の持つ薔薇がみるみる枯れて崩れていく。年中畑弄りをしているのにも関わらず全くと言って良いほど灼けない真白い肌に、くっきりと柊の指の形に鬱血痕がついた。

    「大胆な奴だな」

     クツクツと実に愉快そうに笑うと、梅宮は杉下の髪から手を離し、桜のパッキリと分かれた髪を撫でる。

    「……キングはいつもこんな気持ちだったんかな」

     杉下は目を丸くして梅宮を見る。憂いを帯びた、懐かしむような、ここじゃない何処かを見ているような、そんな顔をしていた。杉下は少し考えると梅宮の膝にころりと転がってみる。そんな杉下を梅宮は一瞬驚いて愛し気に撫でた。

    「俺の血を分けた同族が増えていくのはなんか、嬉しいけど、俺が殺したんだなって」
    「なんだ、センチか?ガラでもねえことを……気持ち悪いな」
    「もしかしてなんだけどめちゃくちゃ怒ってる?」
    「思ったより状態が悪いのを『ちょちょいとやって』と言われりゃな」

     さながら視線だけで人でも殺せそうな表情の柊が梅宮を睨みつける。

    「ごめん」
    「あと普通に自己中発言が気に食わん。俺や杉下が自分で選んだのを強制されたみたいに言われるのは腹が立つ」
    「もしかしてなんだけど今すげーデレてる?」
    「デレてない」
    「俺はデレてます」
    「杉下はそうだな、かわい子ちゃんめ」
    「少なくとも俺にとってのキングは梅宮さんです」

     膝に転がる杉下の頬をもちもちと揉むと、梅宮は血の通わない頬をわざわざ薔薇色に染めて照れ臭そうに笑った。

    「俺がキングかあ」
    「他に誰が居るんだよ」
    「そりゃそうかあ」

     するりと杉下の頬を撫でて、今度は不機嫌な柊の痩けた頬に手を伸ばす。少しばかり嫌そうな顔をするものの、柊はその手を拒まなかった。
     随分と昔に『一緒に来ない?』と言われて、柊はこの手を取ったのだ。この孤独な美しき生き物と歩むと決めた。その選択を否定されることは、当人であっても柊にとって許し難い蛮行であった。

    「……俺頑張るよ」
    「いや頑張るな、これ以上俺の仕事を増やすな」
    「う〜〜ん、無理かも!」
    「〜〜クソ……」

     梅宮は夏の日差しのような笑顔でカラカラと笑った。
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    甘えんぼモンスターの成獣が甘える小話
    この二人がどうこうなる可能性についてメモしていたらできました、おかしいですね……
    甘えんぼモンスターの成獣 なぜか、梅宮を見上げている。より正確に言うならば、すっかり瞳孔の開いた梅宮の向こうに広がる空を見上げている。雲が少なく、快晴と言っていい空模様だ。天気が良いとなんとなく元気な気がする。

    「なあ」
    「黙ってろよ、今状況を良い感じに噛み砕いてるところなんだからよ」
    「あ、そう」

     梅宮はぱちりと瞬きをひとつすると、また口を閉ざした。
     どうしてこんなことになっているのだったか、柊にはいまいち理解できていなかった。杉下の去った屋上で二人、畑と畑の間の小さなスペースで、柊は梅宮によって押し倒されている。つい数分前まで野菜の苗の育ちが良くてご機嫌の梅宮と、それを嬉しそうに見る杉下を眺めてベンチに座っていた。梅宮はともかく、杉下は自分の預かる衆の人間であり、以前から交流もあって柊にとっても大事な可愛い後輩なのだ。それが土汚れを頬につけてニコニコとしているもんだから、軽く拭ってやって、ついでに頭を撫でた。杉下の髪は柔らかく、指通りが良かった。
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    らんじゅ

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    『この街に漂う薔薇の芳香の理由を口にしてはならない』

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