シルクの手袋今年も夏祭りが盛大に行われた
俺たちはパトロールついでに祭りを堪能し、勿論ドラ公もめちゃくちゃ遊びまくっていた筈だった



だがその夏祭りからこっち、何故かドラ公の体調が悪い
元々すぐ死ぬやつではあったが、なんかここのところ息切れしている

ちょっと今、ご飯作れなくて、ゴメンね、
なんとか凌いでいてくれ、
私の目が無いからってあんまりジョンにオヤツばかりあげちゃ駄目だぞ
なんて言って棺桶に入ってしまう日が続いていた。
もうじきしたら多分治るから。
そのもうじき、ってのは何なんだ？
人間の風邪は、お前らは引かない筈だろう？

何で苦しがってんだお前は？
吸血鬼専門風邪？VRCとか行く？
と声を掛けてみるが、
あんなところ行っても実験材料になるだけだよ、と返される
まぁ確かに。
じゃあ栄養付ける為に血液ボトルでも買ってやるか？と財布を探しながら立ち上がりかけて、ふと気づく。

お前、左手の手袋、どこやったの？


あからさまにしまった、と言う顔をして、あいつがソッポを向く。
お前タビコに靴下取られた時もめちゃくちゃ苦しんでたじゃねーか。
アレの再来かよ。
なんだ新しい変態でも出たのか？今度は手袋に興奮するタイプ？？
どんなやつだ？流石に何もしてない相手の持ち物強奪してたら、そいつが悪者だからな。
ギルドにも俺から言っといてやるし、ほら、教えろって
そのうち、観念して話し出した。


…どっか行ってしまったんだ。
どっかって。
オーダーの総シルクだから大事にしてはいたんだが。
オーダーのそうしるく。
よく分かんないが、シルクの手袋って女優の人とかが寝る時つけるやつじゃねーのか？
何処で無くしたか分かんねーの？

さぁ、風で飛んだんじゃないかねぇ？？
誰かさんの干した時の洗濯バサミが甘かったんじゃないかなー！
あー私、可哀想に！ロナルド君が洗濯バサミ忘れたばっかりに！！もう死にそう！
急にイキイキと俺に文句を言ってきた
めちゃムカつくけど、でも青い顔して黙って棺桶入られるよりはずっといい。

うっせークソ砂急に元気になりやがって
いつもと同じように干した筈だわ！！
でも風で飛んだんならごめん！
つうか、替えとか無いのかよ？
具合悪くなるくらい弱点なら、手袋や靴下位いっぱい買えよマジで。

まぁ、ちょっと…概念だからな…
ん？？
いやいや、予備を切らしていただけさ
まぁいいんだよ
1番守りたいものが守れたんだからな
？？？



その晩、夢をみた
何か大きな白いヤツに捕まっている俺
縛られた訳でも無いのに動けない
〔翡翠にしろがね、憑座もできる清浄な男の子とは素晴らしい
良い贄を寄越すこともある〕
目の前がくらくらして、意識がぼんやりしてしまう
…なんか失礼な事言われてないか？
〔それにおまえはとても綺麗だね
命が溢れている
血もたくさんある〕

やけに目線が低い
ヤツが口を開けた
〔だからおまえは特別に、
このまま丸ごと戴こう
どこも欠けてはいけないからね〕
デカイ口だ　牙が見える
噛み殺されるのか
頭から丸呑みか
いや
喉の奥、向こう側に赤黒い闇が渦巻いている
あぁ、生き物じゃないんだ
全然分からないが、駄目なものだという事は判る
あぁ、おれはこのまま、存在ごと食われてしまうのだな
『居た』という、その事実すら食われて
無かった事にされて、
誰もおれを思い出さない
悲しんでもくれない
居なくなったと気付かない
この渦の中の一粒になるんだ…


と、その時
ヤツの顔面に白い手袋が叩きつけられた
振り返ると黒いヒョロ長がいる
どうも怒っている
手袋で決闘を指すのは、、コイツには少し難しいんじゃないか？
だって多分コイツは
もっともっとずっと古くからの何かで
ヒトが敵うようなものではなくて

だがまぁ、ヒョロ長のムカついた気持ちは伝わったらしい
何やら叫んでいるらしき黒いヒョロ長の声は聞き取れない
お前、煽り文句が決闘手段の9割なのにな。
あわや果たしあいか？
ヤツが俺から手を離して、ヒョロ長の方へと手を伸ばした
おい攻撃されるぞヒョロ長　せめて避けろ
化け物同士の獲物の取り合い
いや絶対負けるだろ
だってお前はーーー


「すぐ死ぬんだから」
自分の寝言で起きた
変な夢

現実感なんかひとつもないのに、
何故かそれが過去本当にあった事のように感じる

まぁ、、恩に着るわけじゃねーけど
弱って唐揚げ作る元気もないアイツなんかヤダもんな
しゃーねぇ
美味い唐揚げの為だ
シルクの手袋を一揃え、どっかで見繕って来てやろう







後で『憑座もできる清浄』ってどういう意味？なんか馬鹿にされてるやつ？って聞いて、
SEXしようロナルド君！！それが1番アレに狙われなくなる！！！
って叫んでブン殴られるドラルク