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    おひさま牧場

    完成度は求めるな

    ただの自己満掃き溜めです

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    おひさま牧場

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    ただの欲望
    変なことはしてません(キスだけ)(糖度120パーセント)

    #露仗
    reveal

    岸辺露伴は笑わない
    それは薄い皮で包まれた、薄紅色をし、ふわりとした柔らかな感覚の人間にあるものだ。口を囲み、その人の人相を表すにも重要なものであるだろう。
    薄っぺらかったり、分厚かったり。前者なら少しクールに見え、後者ならセクシーに見える。ほら、意外にも大事なものだろう?

    唇に色を付ける人も少なくはない。むしろ成人女性達はまるで生活習慣かのように毎朝リップを唇に着色する。ぼくもそのうちの1人だろう。赤なら大人な女性、桃色なら可愛らしさを。黒や紫なら怪しさを。その人物のイメージをさらに増すものである。

    漫画で女性の表情を描いている際にふと思ったことだった。チラリ、と目線を紙から逸らすとぼくが学生の頃から愛用している緑色のリップグロスが目に入る。ブランドやら色味やら大してこだわりはないが、何年も変えずにこのものを使っている。何故なのかと言われてしまえば似合うから、その後の口は止まってしまうが確かに一風変わった色味だろう。同じようなメイクをしている女をぼくはあまり、否、殆ど見たことがない。不思議と言われてしまえばそれで終わりだ。

    果たして緑はどのようなイメージを持つだろうか。キミ達に考えてもらう前に1つの参考例として、最近あった面白い話をしてやろう。



    #64 訪問者


    靄のかかったような薄い意識からインターホンの機械音により引き戻された。確かぼくは先程まで原稿を描いていたはずだった。締切なんて余裕しかないがキッチリと書き終えて、それから…。目の前のローテーブルにはまだ1口ほどしか飲んでいないであろうコーヒー。ああ、そうだ。書き終えて少し休憩でもしようと思ったのだが、疲れて寝てしまっていたのだろう。無理もない、暫く予定が詰まっていたからな。
    すっかりぬるくなってしまっているであろうコーヒーカップに手を伸ばそうとしたが、睡眠の妨害をされた原因を思い出した。インターホンが鳴ったんだったな。宅配か、編集社のヤツか。頼んだ覚えが両者とも無いということはあのクソッタレ仗助が帰り道に寄ってきたのだろう。面倒だが仮にも恋人だ。気分的に立ち上がるのはかなり面倒だが仕方ない。
    「ろはぁ〜ん?居ねェのォ?俺ッス、仗助ッスよォ〜!」

    「うるさいなァ、今開けるから静かに待っとけこのスカタンが!」

    扉越しのせいで少しこもりながらも大きく聞こえるヤツの声。静かに待っておくことすらも出来ないのかあのクソッタレは。犬以下ではないか。そんな悪態を心の中でぶつぶつとつきながらもバランと揶揄されたヘアバンドを頭に着け、急いで唇を緑色で着色する。塗りすぎた気もしないではないが、まあ良いだろう。
    時間は無くとも少しでも身なり位は良くしてから顔を突合せたいと思うぼくも若干重症なのかもしれない。

    「珍しーッスね、露伴が出てくるの遅いなんて」

    「何だい突然押し掛けてきて。また金でも騙し取るつもりかい?まぁいい、上がりなよ」

    扉を開けてやれば彼の口元は嬉しそうににっ、と弧を描いた。ぼくの返答には口を尖らせながら2回も仗助くんは同じ手口で人を騙さねぇッスよ、なんて言っているが実際どうやら。元気よく挨拶をしながら家に上がってくる姿は母親の教育を褒めるところだろう。

    学校帰りなんて普通なら疲れて早く家に帰りたいと思うだろうに態々ぼくの家の方に来るなんて到底理解し難い行動だ。彼の様子はというと少し息の上がった話口調、寒さでほんのり紅色に染まった耳。一目見ただけで走ってきたことが予想出来る風貌は可愛らしいものじゃあないか。

    「その様子ならこのクソ寒い中走ってきたんだろ?別にこの場から引越しやしないこの岸辺露伴にそこまで早く会いたかったのかい?」

    意地の悪い物言いになってしまうのは性格というよりはもう奥底までこびり付いて落ちない心の中の汚れと同じようなものだ。仕方ないで済まさせて貰おうではないか。肝心のクソッタレ仗助の顔は先程までの寒さで染まった紅色ではなく、羞恥心で染まった桃色だ。何か言いたげに焦って口を動かしているがあ、えっと、と言うような間投詞ばかりで弁解するには何の意味も成していないものだった。まさに図星。その反応で間違いないだろう。あまりにも面白い様子にフッ、と笑みが溢れてしまう。スケッチでもしてやろうかと思うがあの日のように1ヶ月も休載を強いられてしまえば困るので鼻で笑うだけでよしてやった。

    「ッ、悪ぃかよォ〜〜…」

    おや。食ってかかってくると思いきや。
    普段ならうるせぇ岸辺露伴、なんてキャンキャンと喚く犬のように反発してきて何時の間にかしょうもない内容の喧嘩になるはずなのだが。意外にも目に映ったものは顔はまだ紅色に染めたまま目線を左下に逸らし、肯定の意味のと捉えられるような言葉を口にする仗助。
    この初心な姿を見るとイカサマしようが何しようが未だ高校生なのだと見直した。

    「誰が悪いと言ったんだい?ぼくはただ普段偉そうな口叩いてる君が恥ずかしそうな様子で目の前に居て久々に気分が良いだけさ。」

    強気な奴の普段とは違う顔を見るのはなんて楽しいのだろう。

    ━━━━━━━━━━━━━━━


    寒い中態々来ていただいた訪問に何もおもてなししないのは悪いだろう。食器棚からコーヒーカップと受け皿を取り出し、ドリップコーヒーを淹れる為の湯を沸かす。菓子は様々な人からもらったそこら辺にあるクッキーであいつは喜ぶだろう。普段自分で食べずに置いているのは仗助が来るからなんて口が裂けても本人には言わないが。

    「待たせたね。ほら、これでも飲みなよ。」

    「やった!嬉し〜ッス!露伴の家のもんて全部美味いよなぁ」

    先程までは若干攻めたせいで拗ねていたものの食べ物を見せれば直ぐにあの特徴的な笑顔にひと戻りだ。全く現金なヤツだと思うが男子高校生らしくて良いだろう。

    そういえば自分にもすっかり冷えきったアイスコーヒーの様になった飲み物が余っていることを思い出す。勿体無いから飲もうと仗助の横に腰掛けて手を伸ばした時だった。沢山口に頬張ったクッキーを咀嚼し終えた仗助がこちらを向いて口を動かしたのは。

    「そーいや露伴、今日急いでたのかよ?」

    「何故そんな事を思うんだい?」

    「いや、いつもよりチコ〜ッと口紅濃いなって思っただけよ、ッて、普段からそんな口元ばっか見てるんじゃあねェよ?ただ…その…」

    言われてみればこいつが来る前に急いで塗ったことを思い出す。しかし、毎日見ている自分でも若干の変化だと思ったのだが、そんなにこのぼくの事をコイツは見ているのか。中々面白いヤツじゃあないか。
    気付いた様々な理由を述べようとしているが言葉が続かず他所を見ている目の前の奴。全く、この家に来てから何度このぼくに『可愛い』と思わせれば気が済むのだろうか。この短時間で3回目だ。このままもう少し攻めたらどうなるのだろうか。いじめたいという好奇心を抑えきれず、片方の口角が上がりそうになる事は抑えながら仗助に問う。

    「ただ、何だい?そんなにこのぼくの顔が変だったかい?」

    「いや…えっと…いつも露伴の唇って色っぽいッていうの?ほら、他の人があんまり付けねェ緑似合うから…普段から目に入って、あ〜〜ッ、、」

    そんな事を僕の唇に思っていたのか、コイツは。この東方仗助は。思わず4回目の『可愛い』の感情がぼくの胸に刻まれた。
    言い出しっぺはカッ、と耳まで染めながら顔を両手で隠している。ここまで来ればもう少し押してやってもいいだろう。自他ともに認めるS心は抑えきれるものでは無い。
    ぐい、と自分よりも遥かにがっしりとした腕を引っ張り顔を露にさせる。驚いたように目を丸くして固まっているがそんな事今はどうでもいい。

    ふにゃり、と低反発で柔らかな彼の唇にまずは触れるだけの口付けを優しく、ワレモノのように扱い落とす。1度離して息を吸えばまた唇に触れ、口を開けろと言わんばかりに彼の唇を舌でなぞった。大人しく口を開いた彼からは期待の眼差しが痛い程伝わった。口蓋をねっとりとなじれば逃げていた彼の熱を含んだ舌先がたどたどしく絡み付いてくる。
    唾液が混じり合い、はしたないと言われそうな水音がこの静かな2人しか居ない広い空間に響き渡る。先程まで寒かった筈がお互いの吐息の熱で暑さを感じる程だった。
    1度口を離してやれば蕩けた彼の目がこちらを向いている。キスの最中に息を吸う暇が無かったのか若干の涙目になり肩で呼吸をしていた。一体全体、何度唇を重ねれば慣れてくれるのだろうか。この初心さも可愛らしいので十分だが。

    「さてと…。どうだい?ぼくの口紅の色は薄くなったか?」

    「…ッ、もうチコッと色薄めが良いかも…なんて…」


    全く、何時そんな誘い言葉を覚えて来やがったのか。その言葉をもう一度キスをしてという意味で取り扱わない男は居ないだろう。
    はぁ、と1つため息を付けば彼の言葉でにやけてしまわないよう必死で取り繕う。ここで笑って怒られてしまえば台無しだ。

    「きみねェ〜〜〜…自分の為にも可愛いって物に加減を覚えた方が良いんじゃあないかい?ぼくはもう一度という意味だと捉えたぜ。」

    先程よりもお互い余裕も無く、高まった欲情を揺さぶるような、息までも巻き込むような口付けを再び交わした。

    ━━━━━━━━━━━━━━━


    どうやら緑の口紅というものは人に色気というイメージを与えるらしい。色の感じ方に個人差はあるだろうが1つ、参考になっただろうか。
    キミ達はどのように見えるだろうか?
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