練習「ほう……これは」
珍しいこともあるものだ。
「鍾離様……その……」
控えめに叩かれた玄関のドアを開ければ、そこには魈がいた。
「どうした?」
何やら言いにくそうに目線をウロウロとさせ、その後俯き、ちらりと上目遣いで俺を見ている。
「我の……練習相手になっていただけないでしょうか……」
「…………ほう?」
思わず間抜けな返答をしてしまった。魈がここを尋ねてくることも珍しいが、例えば、魈が槍の稽古をつけて欲しいと思っていた場合このような言い方はしない。つまり、手合わせの誘いではないということだ。
ゆっくり話を聞こうと家の中へ魈を通す。椅子に座るように言えば、立ったままで良いと話を始めた。
「我は……その、他者を誘って遊びに興じたことがなく……」
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