hollowチチチ…と小さな鳥が青い空を駆け巡る。
遠くの方から小さな子供の笑い声が聞こえ、隣の家からはテレビから出る笑い声が微かに聞こえた。
窓から降り注ぐ温かな春の日差しに思わず口元が緩む。
だがまだ生まれたばかりの赤子には眩しすぎたようでふにゃふにゃとぐずり始めた。
「そうだよなぁ…まだお前には眩しいよなぁ…」
穏やかなこの場所から離れるのは名残惜しかったが仕方がない。
本格的に泣き出しそうな一郎を抱き上げカーテンを閉める。
「もう眩しくないから大丈夫だぞ」
ゆっくりと左右に揺れながらあやし始めたが少し遅かったようで一郎の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
俺にとっては愛しいこの泣き声も隣人からすればただの騒音らしく壁がドンッと大きな音を
立てた。
その音に驚き更に大きな泣き声を出す一郎をあやしながら寝室へ向かう。
きっとこのまま泣き疲れて眠ってしまうだろうからそのまま昼寝してもらおう。
今日はもうすることもないし久しぶりに俺も一緒に昼寝してしまおうか。
穏やかな時間は長くは続かない。
さっきまで見えていた青空はもう黒い雲に覆われ見えなくなり、子供達の笑い声は救急車のサイレンに代わっていた。