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    せいへき

    @migireihosii

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    POIPOI 36

    せいへき

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    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24744874
    のR-18の部分を抜いたものです

    ##簓零
    ##サカ零
    ##盧零

    ドッペルゲンガーや!「二人おるな」
    玄関を開けば零が二人いた。そっくりさんとかでは無く、本当に全てが同じ人間が二人いた。
    「なんだそのつまんねぇ反応」
    「もっと驚けよ」
    全く同じ表情で、全く同じ声で、違っている所といえば身に纏っているものと発した言葉だけ。
    「すまんなんか受け入れてもうた」
    そっくりな人がいる、ではなく天谷奴零そのものが二人いる。何故かそれを受け入れてしまったため驚きはほとんど無かった。
    芸人失格な上に零が望んだ反応を見せられなくて申し訳ないと思うが受け入れてしまったのだから仕方がない。
    今は収録中でもないしドッキリを仕掛けられている様な感じもしないからまぁ良しとしてほしい。
    「盧笙呼ぶわ。良い反応してくれるやろし」
    つまんねぇとぶちぶち文句を言う二人にそう言い「ろしょー!」と奥でいつも通りツマミを用意している盧笙に向かって叫ぶ。
    「なんや!」
    「ちょっとこっち来てー」
    「今手離されへん! ちょっと待っといて!」
    しばらくキッチンの方からカチャカチャと音がした後、程なくして扉が開いた。
    「なんで二人して入ってこおへんねん……って二人おる!」
    二人もいる零に驚くか怖がるかして悲鳴を上げもしかしたら意識くらい失うかと思っていたのに目をかっぴらき驚いてはいるが想像よりも随分と冷静だ。
    「 あかん! 零! 目瞑れ!」
    でも実際はそうではなかった様でよく見ると額から汗を大量に流し手は震えている。
    っていうか目を瞑れってどういうこや?
    「早く! 零! 目瞑れ!」
    不思議に思っている間に盧笙は手に持っていた菜箸を床に投げ落とし拳を握りこちらに必死の形相で駆け寄ってきた。
    「な、なんや!」
    思わずガードする俺を通り過ぎた盧笙は零に向かって殴りかかりながらこう叫んだ。
    「ドッペルゲンガーや‼︎」

    ◇◇◇◇◇

    「ドッペルゲンガーちゃうかったんか……」
    パニックになり後ろにいた方の零に襲いかかろうとした盧笙は呆気なく前の方に立っていた零に倒され、今は頭に作ったタンコブに保冷剤を当てている。
    「いや仮にほんまにドッペルゲンガーやったとしてもなんで殴りかかったんん?」
    「会ったら死ぬって言うやろ。やから零が気付く前になんとかせなあかん思て」
    「それで殴りかかってきたのか。悪かったな。心配させて」
    「頭は大丈夫か? 結構派手にぶつけたろ」
    零に左右から心配されている盧笙の顔は心なしか嬉しそうに見える。いいな、俺も挟まれたい。
    「念の為冷やしてるだけやし大丈夫や。それよりドッペルゲンガーちゃうんやったらなんで二人おるんや?」
    そういやそうだ。何故か普通に受け入れてしまっていたが零が二人おるなんて異常事態だ。
    「朝起きたらなんかいたんだよな」
    「昨日野良ラッパーに絡まれたんだがそれ違法マイクだったのかもな」
    「いやそれ昨日のうちに知らせろや!」
    「知らせなきゃダメか?」
    「あかんに決まっとるやろ! というかさては今まで絡まれた事もあったな!」
    全員返り討ちにしたと得意げな顔をしているけどこれは後で問い詰めなあかん。
    「知らせた所で駆けつけて来れる訳でもねぇんだしいいだろ」
    「そういう問題ちゃう!」
    見守りアプリでも入れたろかこのオッサン。
    ふらふらどっか行きよるし知らん間に危険な目に遭っとるし。
    「後でちゃんと話聞かせてもらうでな、今はなんで二人おるかや」
    「え、というかどっちも零なん? 片方偽物とかではなく?」
    「どっちも俺だな」
    「あぁ。どういう理屈かは分からねぇがコイツも俺も天谷奴零だ」
    同じ顔と体を持つ二人が同じ声で話す。違う所といえば服装くらい。同じ服を着ていたら余計に脳がおかしくなりそうだったから別の服を着てくれていて良かった。
    「なんで分かるん」
    「なんとなく、だな」
    「俺もコイツも互いの事を偽物だと思わなかったんだよ。だからどっちかが偽物だとか本物だとかは決めずに一旦両方本物ということにしたんだわ」
    「なるほどなぁ。病院には行ったん?」
    沈黙。これは行っとらんな。
    「れーいちょっとお説教やで」
    ばつが悪そうに目を逸らす零の顔を無理矢理自分の方に向ける。もう一人の方は盧笙がやってくれるやろ。
    「行かなあかんやん。今なんもなかったとしても今後はどうなるか分からんねんし」
    「そやで。それに二人に分裂したんなら戻さなあかんしな」
    「良いじゃねぇか便利だし」
    「時間が二倍になるし別の場所に同時に行けるんだぞ?」
    「でもそれもう一人の自分が行ってるだけで実際に自分が行くわけちゃうから意味なくない?」
    「それともあれか? 記憶の共有でもできるとか?」
    「できるな」
    「できるん⁉︎」
    「なんて説明すれば良いんだろうな……脳は同じで体が分裂しているっつーか、思考を共有しているというかまぁそんな感じだ」
    「ここに来る時試しに別のルートにしてみたんだがお互い自分の通ってないルートの記憶があったから記憶の共有があると考えて良いんじゃねぇか?」
    マイクの効果の話になると途端に楽しそうに話し出す。
    めっちゃ可愛いんやけどこれで許したらあかん。これで絆されて後々零の体に何かあったら悔やんでも悔やみきれん。
    「情報量が多くて頭がパンクしそうだ」
    「あかんやん」
    「しばらく経ったら慣れるだろうよ」
    「やったら今同じ事考えてるって事?」
    「そこがややこしいんだよな」
    「同じ事を考えようとすればできるが意識しなかったらそれぞれ別の事を考えてるな」
    「脳は同じやから考え方とか下す結論は同じ。でも別個体やから考えてる事は違う、という感じか?」
    「大まかに言えばそういう事だが……」
    「同じ事を考えていても時間をおけば考えが変わる事もあるだろ? それと同じで結論は違う事もあるだろうな」
    「ややこいな」
    「あ、あと感情は共有されるっぽいな。多分こうなんだろうなくらいだが」
    「ん〜やったら感覚も共有されてんの?」
    「いや感覚は共有されてねぇな。多分コイツが殴られたとしても俺は痛みは感じねぇ」
    「あぁでも殴られて痛いっていう情報の共有はあるんじゃねぇか?」
    「ん? 実際に痛くは無いけど痛いという認識はあるんか? なんか考えれば考えるほど分からんくなるな……」
    「あれだ、昔殴られた事を思い出してあの時痛かったって思うみたいな感じだ」
    「はーなるほどな」
    この様子やと盧笙零の話に引っ張られて病院に連れて行かなあかん事忘れてるな。確かに気になるけどそろそろ行かななぁ。いつくらったかも聞いてへんし。まぁそれは病院で聞いたらええか。
    「ほな行こか」
    「どこにだ?」
    「病院に決まっとるやろ。ほらはよ行くで」
    「……行かねぇ」
    「やったら中王区に連絡して中王区のお医者さんによぉさん来てもらう事になるけどええか」
    「いやよく考えろよお前ら。俺が二人になるんだぞ?」
    「今までセックスする時どっちかが我慢する時間ができてたけどそれも無くなるんだぜ?」
    「魅力的やけどあかんで」
    「ちゃんと検査してもらわんと」
    「どうせ効果が切れるまで待つしかないって診断しか出ないのにか?」
    「それでもや」
    「逃げるか」
    「そうだな」
    二人で顔を見合わせて頷いたと思ったらいきなり立ち上がり玄関に向かって走り出した。悪戯っ子な双子みたいで可愛いと思わなくもないが今はそれを堪能している暇はない。
    「逃さへん! 盧笙そっちの零頼んだ俺こっちの零抑えるから!」
    「そっちってどっちや!」
    「黒いシャツ着てる方!」
    「分かった!」
    盧笙はもう玄関の鍵に手をかけていた零を、俺は靴を履こうとしている零になんとかしがみついて抑える。
    「離せ!」
    「俺は行かねぇぞ!」
    「子供か! 観念せぇ!」
    それでも逃げようとする零にこれは説得をするのは無理だと察した。
    「あんま使いたなかったけどしゃーない。総理大臣直通の電話使ったろ」
    「なんでお前んなもん持ってんだ!」
    「知らんやろけど俺ちゃんとリーダーの仕事してるんやからな!」
    前に急ぎの用がある時に間に人を挟むのも時間がかかるだろうという事で教えてもらったのがこんな所で役に立つとは。
    「もしもし白膠木ですけど! 急ぎで医者派遣してもらえますか零なんか分裂? する違法マイク当たってもうて!」
    ワンコールで出た事に驚きながら手短に要件を伝えた俺に返された言葉は一言。
    「自業自得ですね」
    「話も聞かんとそんな!」
    何やらこの二人の間に因縁があるのかないのか仲が良いのか悪いのかこの総理大臣は零にだけ他の人にはしなさそうな反応をする。
    「冗談ですよ。場所はどこですか」
    どうせ住所は管理されているしこれだけで通じるだろうと「盧笙の家です!」と叫ぶと「一時間後には着くように手配しますので耐えてくださいね。どうせ逃げようとしているんでしょう」とさらりと返されそのまま電話を切られた。
    「零お前ッ……総理大臣になにしてん! なんか嫌われてるっていうか呆れられてない⁉︎」
    「クソッ医者派遣されないくらい嫌われとけば良かった」
    「いや嫌われれば嫌われるほど医者呼ばれるんじゃねぇか」
    「確かにな!」
    あと一時間、俺達はこの駄々っ子を抑えていられるのだろうか。

    ◇◇◇◇◇

    「な? 効果が切れるまで待つだけだったじゃねぇか」
    なんとか耐えた一時間後、ゾロゾロと現れた中王区の医者にどこかへ連れて行かれた零はその更に二時間後に不機嫌そうな顔をして帰ってきた。
    「異常ないか調べて貰うんが大切なんやから」
    ぶすくれる零を宥めるが二人いるとまぁ大変だ。いつもなら二対一でなんとか宥められるが今日は二対二だ。片方が少し機嫌が良くなってももう片方がでも、と言い始めてそれにつられてまたもう片方もぶちぶちと文句を言い始める。
    「せっかく久しぶりに休み揃ったんやからそんな怒らんとって。楽しく過ごしたいわぁ」
    「そのせっかくの休み三時間も無駄にされた」
    「俺らも零と過ごす時間減らしたい訳や無かったんやで?」
    「あのまま行かせへんと過ごしとったら大丈夫なんかどうなんか気になって楽しめへんかったわ」
    「そうそう。今はもう大丈夫なんやって分かったから安心できてるけどな」
    「……ほんとかよ」
    「ほんまやで」
    もうそろそろ許してもらえそうだと二人の頭を抱きしめて「ごめんな」と謝る。しばらく頭を撫でていると恐る恐るといった様な感じで控えめに服の裾を掴まれた。
    「俺も……悪かったよ」
    「そんな心配すると思わなかったんだよ」
    急にしおらしくなった様子に思わず可愛いと叫びそうになるがそんな事をすればまたやり直しになりかねない。
    「俺もごめんな。嫌がってる訳も聞かんと無理矢理押さえつけて……痛かったか?」
    「盧笙には来た時タンコブ作っちまったからこれでおあいこだ」
    柔らかくなった声色にもう大丈夫かと体を離すと耳を赤く染め少し瞳を潤ませた零の顔が現れた。
    いや……可愛すぎんか。
    何? なんでそんな顔してんの? 恥ずかしいん?
    「零キスしてええか?」
    あまりの可愛さに耐えきれずお伺いを立てると二人で顔を見合わせて少し困った様に聞いてきた。
    「別に良いが……どっちにするんだ?」
    「えっ、どっちもやけど」
    「いやだって例えば俺とキスしたらもう片方の俺はキスできねぇだろ?」
    「どうせ軽いキスで終わんねぇし片方あぶれるじゃねぇか」
    「なんや零そんな事考えとったんか〜可愛いやっちゃなぁ」
    「零俺もおるん忘れてる……?」
    「二人ともとしてぇだろ」
    「交代すりゃええやん」
    「いや……なんかそれ間抜けじゃねぇか?」
    「盛り上がって最後までするだろ。その途中ではい交代とかするか?」
    「間抜けなんは別にええけど確かに交代するんは難しいやろな」
    「なんでぇ」
    「やって同じタイミングで終わるわけちゃうやろ? 例えば簓が先に終わったとして俺らが終わるのを待てるかって話や」
    「無理やな」
    「やろ? そういうことや」
    「ってか後で記憶合算されるんやろ? やったら問題ないんちゃうん」
    「……後で記憶に残ったとしても今の俺は片方とできねぇだろ」
    昼はセックスの時も同時にできて便利とか言っとったくせにいざそう言う感じになるともう片方とできないからちょっと拗ねるなんてわがままで可愛いやっちゃな。
    「まぁそれはそんなん気にならんくらい気持ちよくしたらええ話や」
    「自信過剰だな」
    「騎乗位したらすぐヒンヒン言うくせに」
    「言ってませんー‼︎」
    確かに零の騎乗位ほんまやばくていつもより早よ出てまうけどヒンヒンとか言ってへんし。言ってたとしても零もヒンヒン言ってるしお互い様や。零自分のテンポ崩されると一気にトロトロになるから可愛いんよなぁ。
    ……思い出したらちょっと勃ちかけてしもたな。あかんあかん。いや今からそういうことするんやからあかんことないけどまだちょっと早い。
    「んで……キスしねぇの?」
    「するならどっちとするんだよ」
    あ、あかん完全に勃ってもうた。ギャル二人に迫られる童貞ってこんな気分なんやろな。めちゃくちゃ最高やねんけど選択ミスったら人生終わる気がする。
    「……とりあえず三秒ずつくらいキスしてもええ?」
    「ん、」
    あぁ、最高や。二人とも目瞑って俺のキス待っとる。可愛えぇ。
    「しねぇの?」
    「するする! 零の顔可愛くてちょっと堪能したかってん」
    「んなのいつでも見れんだろ……」
    もっと見ときたいけどこれ以上待たせたらあかんよな。あーほんま可愛ええ。
    「れい、」
    顔を近付け唇を密着させる。ただそれだけなのにいつまで経っても心臓は破裂しそうになる。
    なんで自分より身長高くてゴツくて髭も生えててちんちんもデカいおっさんがこんな可愛えぇんやろ。
    「ん、簓俺も」
    キッチリ三秒キスしてから唇を離すともう一人の零が早くしろと顔を差し出してきた。
    「ん〜可愛い! ごめんな待たせてもうて」
    普段こんなに甘えてくることなんて無いから本当に可愛くて仕方がない。あ〜、動画に残したい。ほんまに、盧笙撮っててくれへんかな。
    なんて考えていると急に腕を引かれ抱きしめられた。厚い胸に顔が当たったときの柔らかさに驚き思わず「うわっ! やらかっ!」と叫んでしまったことは仕方がない。
    「は、ぇちょっ、」
    驚いている間にいつの間にか顔が目の前にきていていつの間にか口までくっついていた。
    「んむ、れっ」
    唇が触れあったと感じた瞬間舌が入り込み口内を好き勝手に弄られる。
    いきなりこんな激しいキスされるなんていつぶりやろ、っていうか初めてちゃうか?
    「三秒経っただろ」
    「おわっ……とと、」
    不満そうな声と顔の零が俺とキスしている零と俺を引き剥がしてきた。
    「すまんすまん三秒ずつって約束やったよな」
    キスに夢中になってついつい時間のことを忘れてしまっていた。少しオーバーしてしまった分最初にキスした方の零にもう一度キスをする。
    「ん、よし」
    満足そうに笑うその顔があまりにも可愛くて「お前は……ほんまに可愛い……」と思わず抱き締めて頭を撫でる。
    「何言ってんだお前」
    「いや、ほんまに」
    そんな事をしている間に盧笙も零にキスをねだり始めた。
    「零簓とだけやなくて俺ともしてや」
    「ん? あぁすまん。盧笙のこと忘れてたわけじゃねぇよ。ただこいつが約束破るから」
    「ほんまか?」
    「本当だよ。ほらキス」
    零と盧笙がキスしているのをもう一人の零が羨ましそうに見ている。なんだかそれが気に食わなくて顔を引き寄せ思い切りキスをしようとした。しかしもう少しで唇が触れるというところで顔を引かれそれは叶わなかった。
    「次は盧笙の番だからお前はお預けな」
    「あかん?」
    「ダメだ」
    待つ時間があるならその間にしてくれれば良いのに。そわそわと二人を見つめながら零は俺を遠ざけた。
    「……けち」
    っていうか俺は三秒ずつだったのに盧笙はなんか、なんか長ない? 一分経ってへん?
    「盧笙! 終わり!交代!」
    「え、もう終わり?」
    「盧笙結構長いことしとったって!」
    物足りなさそうな顔をした盧笙はまたさっきしていた方の零にキスをしようとしたがそれはもう一人の零によって遮られた。
    「そいつばっかとキスするのかよ」
    「いや、そういうわけやなくて」
    「別に俺はそうでも良いぜ」
    今度は俺ではなく盧笙が零に迫られている。羨ましい。
    あ、してない方の零とキスし始めた。振られた方の零拗ねてんな。いやお前はさっきまでしとったやん。
    ほんでやっぱ盧笙長いな!
    「はいもう終わり!」
    間に割り込み止めると二人とも不満気な顔をして俺の方を見る。
    「なんやその不満気な顔!」
    「足りん……」
    「俺もや! ってか俺の方がや! 零もっかい俺ともキスして!」
    「さっきやったろ」
    「盧笙より時間短かった!」
    「はいはい分かった分かった」
    許しが出たから意気揚々とキスをしようと身を乗り出すと肩を押され元いた場所に戻された。
    文句を言おうと顔を上げるともう既に二人の顔が目の前まで来ていた。いや一人ずつじゃ無いん? これどういう状況? あれ、これ俺どうなるん?
    「え、ちょ、一人ずつ」
    迫る顔に思わず目を瞑ると額に少し湿った柔らかいものが二つ押し付けられた。これでこちゅーってやつや!
    「はい終わり」
    「へ、終わり?」
    「終わりだ」
    「い、いやや‼︎」
    これはこれでええけど俺はでこちゅーやなしにキスがしたいんや!
    「れぇでこやなしに口にしてや」
    「えーお前しつけぇからな」
    「盧笙やってそうやん!」
    「否定はしねぇよ?」
    「俺しつこかったんか……」
    「そやで、俺らはしつこい」
    「お前はなんでそんなに堂々としてんだ」
    「別に恥ずかしい事やないからな」
    「いやしつこいのは恥ずかしい事だろ」
    「しつこいってのは粘り強いって事でもあるからな。ちゅーわけで俺は諦めんで。零キスして」
    今度こそ口にしてもらおうと顔を近づけるがまた避けられてしまった。
    「いけず……」
    「ほんとしつけぇなぁ」
    これもしかして俺めちゃくちゃからかわれてる? なんかめちゃくちゃニヤニヤしてるし俺に見せつける様に盧笙とキスし始めたし!
    「なぁ零」
    こんなん、こんなん仕返ししてくれって言ってるようなもんやん!
    「なぁ零、そういや感覚は共有されんけど情報は共有されるみたいな事言ってたよな」
    「あぁ」
    「やったらさ、キスの感覚も共有されてんの?」
    「まぁ、そうだな」
    「お、ほんまか」
    やから二番目にキスした方の零めちゃくちゃ激しかったんか。
    「ほんならさ、同時にやったらどうなるんやろな」
    「え、」
    零の顔を両手で挟み無理矢理俺の方を向かせ、まずは軽く触れるだけのキスをする。本気出せば俺やって無理矢理キスできんねんから。まぁ普段はせんけど。
    「おい待てお前ら」
    こんなに早く形成逆転されるとは思ってなかったのか少し焦った様な顔をする零に思わず笑いが出る。
    「ろしょー」
    「おう任せろ」
    盧笙にもしてもらおうと思って声をかけるともう既に零を押し倒し顔を近付けていた。手はや。
    「なんでちょっと男臭いん」
    「緊張してもうて」
    「いやお前ら、ちょ、」
    「待て待てやめッ……、んん〜〜!」
    本気で焦り身を捩る零の口に舌を捩じ込み歯列を、上顎の凹凸をなぞる。
    分厚い舌を吸い上げると大袈裟に体を跳ねさせ「ぇぁッ♡ ぁ、ぅぁ♡」と小さな声を漏らし始めた。
    「は、ささ、ろしょ、ぉ♡」
    「ん〜やっぱ零かわええなぁ」
    「なんやもうトロトロやん」
    「ん、いや、ちがッ、ぅ♡」
    「やめ、ろ……は、ぁ♡」
    違う、やめろと口では言うものの抵抗していた手は背中に回り縋るように服を掴んでいる。
    「んー、でも零が言ったんやん」
    「それぞれ相手してくれるんやろ」
    もう一度零の顔を掴み顔を覗き込む。
    少し潤んだ零の瞳は期待に染まっていた。
    ◇◇◇◇◇
    「なんか三人でヤってるってよりそれぞれヤッてるみたいで恥ずかったな」
    「ほぼ乱交やったな」
    今は何時だろうか。なんとなくカーテンの外が少し明るく見えるような気がする。
    何時から始めた? ……考えるのやめとこ、冷静に考えたら怖すぎる。
    「やっぱいつも通り三人がええわ……」
    三人でヤっている時はあまり〝他人事〟として見ていなかったから恥ずかしさなど感じていなかったが、それぞれ〝二組〟としてヤっていると〝他人のセックス〟を見ている様な感じがしてしまってなんだかとても恥ずかしくなってしまう。
    「……ん?」
    「零どしたん?」
    「体なんか変なん?」
    「いやなんかよ……」
    そう言ってからしばらく不思議そうな顔をして体を触っていたが急に腑に落ちたような顔をして「あ、戻りそう」と言った。
    「分かるん⁉︎」
    「多分そうだな……お、なんかこれ」
    「え、うわ引っ張られてるみてぇ」
    磁石がくっつくように二人の意思とは関係なく距離が近づき指先から溶けてくっついていく。
    「え、あ、溶けてる! 溶けてる? なんで?」
    「ちょっ、融合や! これ融合や!」
    「煙出て次の瞬間にはもう戻ってるとかや無いんや!」
    てっきり煙が出たり光ったりして姿が見えなくなった後に戻るものだと思っていたのにまさかこんな感じで戻るとは。
    「「動画撮ってくれよ」」
    「うわー! 声二重や!」
    「「いや驚きとかいいから。せめて写真」」
    「写真、写真な、スマホスマホ」
    「あかん見つからんどこや」
    「「ふざけんな早くしろもう戻っちまう」」
    理解が追いつかない俺達をおいて零はどんどん重なっていく。
    「ウハハハ! 目三つある!」
    「「だから! 俺も見たいんだよ!! 写真!」」
    二人いたのがもう既にほぼ一人になっている。
    「ちょっと写真で手ブレしたみたいになっとるな」
    「「お前ら! 写真撮れ!」」
    その言葉を発した瞬間ズレた二人がピッタリ重なった。
    「あ、戻った」
    「……俺も見たかったんだけど」
    「すまん興奮してもうて」
    「あとスマホも見つからんくて」
    多分リビングにある気がするが定かではない。
    「にしても案外ぬるっと戻ったな」
    「これ服着とったらどうなってたんやろ」
    「確かに」
    服をすり抜けて戻ったんだろうか。それとも服を破りながら? ちょっと気になるな……
    「どっか痛かったりせん?」
    「んー、別に体に違和感はねぇが……とんでもねぇ賢者タイムだ」
    「あ、二人分になってるって事か? キツイな」
    「あと体の疲労も二人分だ。無理だ、寝る。あとは頼んだ」
    そう言い残した零は体液に塗れた布団に倒れ込み寝息を立て始めた。
    普段はシーツを変えてシャワーに入ってからじゃないと寝ないのに。
    「秒で寝たな」
    「よっぽどやったんやで」
    まだ汗でしっとりとした零の額を撫でると甘える様に顔を擦り寄せてきた。
    「うっわかわいすぎん?」
    「ず、ずるいで簓!」
    「ちょ、そんな大声出しな零起きるって」
    「す、すまん……」
    「にしても……可愛かったなぁ」
    「せやなぁ」
    二人で思わずため息をついてしまうくらいには可愛い。可愛すぎる。
    「……タオル用意してくるからシーツ剥げるとこまで剥いどいて」
    「あーい」
    なんかはしゃぎすぎたんか体の変な所が痛い。
    あ、そういや四十八手試そうとか思っとったんやった。
    昨日そんな変な体勢とったつもりないのにこんな体痛かったら絶対四十八手とかしたら筋とか痛めそうよな。
    ストレッチとか始めよかな。いやセックスするためにストレッチ始めるとかおもろすぎやろ。
    「タオル持ってきたで。体拭いてからシーツ変えよ」
    「せやな」
    ま、そんな事はおいといて取り敢えず、今は後始末を済ましてしまおう。
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