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    ume8814

    @ume8814

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    ume8814

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    転生した記憶ありピタジョがギャングの下で掃除屋をしながら暮らしていくAUがみたいというツイッターでのどうにもならない妄想から生まれたものとなっています。
    ・モブの死とそれに伴う流血描写
    ・ジョージが色覚異常/ネットで得た知識をもとにしているためおかしな点が多々見受けられるかと思います
    ・マスターキー(斧)
    その他諸々なんでも許せる方向けとなっております。

    赤の記憶 ジョージ・ミルズは生まれてこの方、現実世界において、世間一般の言う赤という色を認識出来ないでいた。赤と呼ばれる色に割り振られた色は、一応ジョージの中にも存在する。しかしその色が多くの人が言う赤と同じかと言われると、答えは否だった。
     気がついた時にはセピア色のフィルターが幾重にも掛かっているような現実をみていたが、不思議な事にジョージの見る夢は昔から鮮やかだった。幼い頃は目が覚めると広がるセピア色の世界と鮮やかな夢とのギャップに驚き、母を質問攻めにしていた。どうして起きている時と寝ている時で世界の色が違うのか。どうして与えられたクレヨンに書かれた色の名前が自分の知るものと違うのか。
     幼いジョージの質問はどれも不明瞭で、母を困惑させるには充分過ぎるものだった。先天的に知る由もないだろう色の相違を拙い言葉でつたえられるのは薄気味悪くもあったのだろう。いつしかジョージと母との距離は離れていき、仕事を見つけたからと強引に家を出れば知らぬ間に縁が切れていた。それが16歳の冬の出来事。普段から家を空けがちな父には、最後の挨拶すらしないままだった。

     ジョージは家を出た後、いくつか仕事を転々としながら過ごしてきた。人懐っこい性格が幸して出来た多くの友人の家を泊まり歩いて生活していたが、暫く留まるうちに妙な収まりの悪さを感じては別の土地へと移っていた。そうして日雇いの仕事やアルバイトなどで食いつないで生活していくうちに、自分の夢が鮮やかである事の異様さを理解したジョージはいままでよりも夢の中へと意識を向けるようになっていた。そして夢の中の世界に文字通り夢中になっていくうち、いつしか真っ当な人生として進むべき道からはいくらか脇道にそれていた。友人を作り連む時間も減っていたジョージは小さな部屋を借りるようになっていたし、年齢を誤魔化して職を得ていたとは言え17歳の青年が働く時間を切り詰めようとすれば仕事を選り好みしていては生活がままならなかった。
     幼い頃は夢の中で呼ばれる名前が自分のものと同じであるが故にただの夢だと思っていたが、本当にただの夢なのか疑問に思ったジョージは夢の中の出来事を起きる度にメモに書き出していった。夢の舞台、出てくる人物、日付、虫に食べられた葉っぱのような夢を繋ぎ合わせて調べていくうちに、自分の見る夢が過去の記憶である事を理解した。いつしか抜け落ちた記憶の穴の方が少なくなった頃、ジョージ・ミルズと書かれた自分と寸分違わぬ顔写真付きの新聞記事を見つけ出した時の興奮は今でもはっきりと思い出せる。自分の見ていた夢が過去の記憶だと証明された興奮の余り図書館で声を上げ、周囲の利用者から白い目で見られたら事だって忘れていない。
     新聞はおそらく夢の中に度々出てきた幼馴染のピーターが記事として残してくれたのだろう。いつの間にかジョージがピーターのことを考える時には、夢の中でなくとも彼の赤いセーターが鮮やかに思い出されるようになっていた。しかしそうと分かったところでジョージには自分がどうしたいのか分からなかった。ピーターに会いたい気もしたが彼が記憶を持っている保証はなかったし、今の自分の暮らしぶりでは彼に会わない方が良いとも思えた。ピーターに出会ったところで彼に胸を張って告げられる様なことは何一つとしていなかった。ただこれと言ってしたい事も無かったジョージはウェイマスに向かう事に決めた。
     旅に出るならどうしても先立つものが必要になる。既に真っ当な賃金をコツコツと貯める事に見切りをつけてしまったジョージが旅費を稼ぐために目を付けた仕事は、いわゆる掃除屋だった。
     最初の数回は文字通りの清掃。ゴミ袋に詰めるものが少し特殊なだけでまだまだ触りのようなものだった。毎朝鏡の中で見る馴染み深い部位が細切れになっていたがジョージは色の判別がつかない分、精神的な負担は少なかった。受け取る金額は満足の行くもので、仕事内容はともかく職場の雰囲気も悪くなかった。ジョージが本格的な"掃除"に仕事が移行していく前に逃げてしまおうかと考えていたそんな矢先、次から本格的に仕事を始めてもらうからと教えを乞うべき先輩としてジョージに紹介されたのが他でも無いピーターだった。歳も近いだろうからと話すボスの話も碌に聞かず互いに顔を見合わせていたジョージとピーターは、誰の目から見ても既知の仲であるように写っただろう。そしてそれは二人にとっても、お互いが記憶を持っていると確信するに足りる再会だった。

    「ピーターがこんな仕事をしているなんて」
    「それを言うならジョージもだろ。俺にも色々あったんだ」

     褪せた世界の中ですら美しい髪に夢の中のピーターの姿が重なり一際眩しく感じる。片眉を跳ね上げ肩をすくめる仕草は記憶と寸分違わず様になっていた。

    「お揃いだ。僕にも色々あった」

     そう返しピーターの隣に並んだジョージはまるで欠けていたパズルのピースが嵌った様な、今まで生きてきた人生の中で一番の充足感を得ていた。
     ピーターとの再会を思わぬ形で果たしてしまったジョージのウェイマス行きは保留となりピーターとの生活が始まった。

    *****

     ピーターとジョージの生活は問題なく進んでいた。二人とも再開する頃には欠けることなく記憶を持っていたし年齢差が変わっていなかったのも大きかった。出会った当初、ひとしきり再会を喜んだ後ピーターはまたジョージが18を迎える前に自分の前から再び居なくなるのではないかと嫌な考えが過ぎったが、出会った時には既にジョージは19歳をむかえていた。仕事は物騒ではあったが驚く程に平穏な日々だった。

     ジョージが生活していく上で困ることを強いて上げるとすれば、ピーターが今世でも好んで着る彼に似合いの赤いセーター姿を見ることが出来ないこと、自分が料理当番の日に火の通り具合が分からない肉料理をメニューから除いてしまうとレパートリーがどうしても狭まること、たったそれくらいのことだった。もし不便する事をもう一つだけ付け足すとすれば、丁度今のように仕事が終わった後の自分の姿がどれくらい警官に声を掛けられやすい状況かはっきりしないことくらいだろう。

    「ピーター。終わったよ」
    「うん、俺も終わった」

     とびきり大きなマスターキーを引き摺ってピーターが歩いてくる。ピーターの足取りには珍しく疲れが滲んでいた。”掃除”の対象がどこの誰でそれぞれ関連のある人々なのか二人にとっては与り知らぬことだったが、ここ1週間は仕事が途切れることなく舞い込んでくる。あまりの忙しさに目の据わったピーターが、ボスから明日の休みをもぎ取ってくる程には働いていた。

    「1度に3人なんて。しかもそれを日に2度も。人使いが荒い」
    「こんなに続けて何人もやるのは久しぶりだよね。しかも僕らでバラしてパッキングまでしろなんて」
    「おかげで服が台無しだ」

     ピーターの持つマスターキーは濡れてぬらぬらと光っていた。彼が歩いた後にくっきりと足跡が残るのを見るに、彼の履いている靴も同じように濡れているのだろう。自分はどうだろうか。ジョージはしげしげと身体を眺めてみる。服は確かに濡れていて、足を動かせば靴からはグシュグシュと不快な音が聞こえた。しかしジョージにはピーターと自分の服が濡れている原因が、今回の仕事場になった廃工場で流れだしていた得体の知れない液体なのか、はたまたバラした誰かの血液なのか、いまいちはっきりとしなかった。

    「着替えないと不味いかな」
    「そうだな。誰かに会ったら悲鳴をあげて逃げられるか即通報される」

     どうやら血塗れだったらしい。着てる服も処分だろう。ジョージは血を拭い終えた得物をギターケースに仕舞いリュックからタオルと着替えを取り出した。少しオーバーサイズのパーカーとジーンズを引っ張り出すと着ていたシャツを脱いで汚れの少なそうな所にそっと置き、スニーカーもズボンも脱いでその上に乗った。下着姿で返り血を拭うのはなんとも間の抜けた姿だったこれが一番手っ取り早いのは数年間の仕事の中で保証されている。

    「ピーター、僕の顔についた血全部取れてる?」
    「少しだけ残ってる。拭ってあげるよ」

     ピーターはバッグから取り出したミネラルウォーターでタオルを湿らせてジョージの顔を拭った。よく拭いきれていない汚れを拭われたあと、仕上げとばかりに少し硬いシャツの袖でぐしぐしと頬を磨かれるのがジョージのお気に入りだった。

    「綺麗になったよ」
    「ありがとう」

     どういたしましてと手を振るピーターも着替えを進めていく。ファストファッションブランドの黒いスキニーとスニーカーにグレーのシャツ、それにラテックスの手袋が今日の二人の仕事着だった。どれも捨てるのは一向に構わないが普段であれば身につけているはずのビニール製のカッパと手袋を捨てるだけで済んでいた。着替えを済ませたピーターはゴミ袋に脱いだ服を放り込みながらカッパのストック補充すら間に合わないほどの忙しさに小さく溜息をついた。これから地面に転がる袋を工場の外まで運ぶのかと思うと気が滅入る。ピーターが視線を袋から上げた先では既に2つの荷物を運び終えリュックの上からギターケースを背負ったお馴染みの姿のジョージが入口で待っていた。


     二人で工場の壁に寄りかかって迎えの車を待っている。仕事の愚痴。夕飯のメニュー。明日の予定。他愛もない会話をしながらゆっくりと身体の力を抜いていく。二人は仕事から日常生活へと戻る途中の、車を待つ時間が好きだった。
     工場の外へ出ると辺りは既に夜に呑まれかけていた。昔は工場の製品を輸送する為にトラックが途切れることなく通ったであろう直線的に整えられた通りの向こうに小さく見える水平線では、名残惜しげな太陽が一際赤く燃えている。

    「明日の天気は?」
    「晴れそうだよ」

     今にも消えそうな太陽を見ながら答えるピーターにジョージはにんまりと笑った。夕日がとびきり赤い日にはピーターの天気予報は決まって晴れ。ピーターの天気予報は良く当たる。前世でもそうだったし今世でだってそうだった。ジョージの目にも燃えるような赤が見えた気がした。

    「それなら溜まってた洗濯物とシーツの洗濯をしよう」
    「久しぶりの休日なのに?」
    「久しぶりの休日だからだよ」

     わかってないなぁ。そう言ってピーターの顔中に、ちゅっと可愛らしいリップ音をさせながらキスを降らせてじゃれてくるジョージは言葉の割にご機嫌だった。その背中越しに顔を出しているギターケースを避けながら、ピーターもお返しとばかりにジョージの首筋に顔を寄せる。擽るようにして鼻を擦り寄せれば今日1日の仕事で染み付いてしまった血の匂いの奥から嗅ぎなれたジョージの香りがした。血の据えた匂いの奥から香る匂いは普段のジョージの匂いよりも甘く感じる。もっともっとと深く息を吸い込むピーターにジョージは機嫌よく笑い声をあげた。

    「ピーターまるでイヌみたい」
    「言ったな」

     Bow Bow と鳴き真似をして鼻に噛み付く仕草をすればきゃあきゃあとまるで少年のように無邪気なジョージの笑い声が辺りに響く。
     閑散とした廃墟。二人のそばに並べられた3つの大きな袋。誰が見てもその場にそぐわない朗らかな様子の二人だったが、その異様さを指摘することの出来る人間は既にそこにはいなかった。

    「洗濯するならお昼までに起きられると良いな」
    「それはピーター次第じゃない?」
    「じゃあ洗濯は諦めておいた方がいい」
    「ピーターのいじわる」

     太陽がとっぷりと海に呑まれるのを合図に巫山戯あっていた二人の声が自然と囁くようなものになっていく。いつの間にかお互いの瞳の中に写る自分が見える程にまで近づいていた距離。辺りは静かで互いの息遣いしか聞こえない。ピーターは薄く開いていくジョージの艷やかな唇から目が離せないでいた。その奥からはちらりと真っ赤な舌が動くのが見えている。ジョージの下唇を柔らかく噛み、その舌を追いかけようとすると、ジョージの肩がひくりと震えた。ピーターはまだ辛うじて閉じられていないジョージの綺麗な瞳を覗き込む。綺麗な青がとろとろと溶けていくのをすぐにでも見たくなり、刈り上げられた柔らかなブルネットをおざなりに撫でながら引っ込んでしまっていた舌を追うように深くキスをする。ぬるりと入り込んだ舌にんぅと小さく声を漏らしたジョージだったが瞳が溶けるより先に僅かに身を固くしてピーターの胸を叩いた。普段ならば抵抗など滅多にしないジョージの珍しい抵抗にピーターが眉間の皺を深くしキスを止めようとしかけたちょうどその時。ピーターの耳に遠くから聞きなれたエンジン音が届いた。どうやら迎えの車が来たらしい。耳聡く聞きつけていたらしいジョージはサッと顔を離そうとする。

    「家まで我慢ね」
    「本当にタイミングが悪い」
    「車に乗ったらあっという間だよ」

     不満そうなピーターが渋々ジョージから離れると、丁度通りの角から車が顔を出したところだった。Good boyと楽しげなジョージにまるでボスの犬にするようにあやされたピーターは、ささやかな抗議として目の前に車が横付けになるまで、いつの間にかしっかりと握りしめていたジョージの手を離すことはなかった。
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    ume8814

    DOODLEグリクリグリ
    読書 サイドテーブルを挟み緩く向かい合うように置かれた1人がけのソファで、クリーデンスとグリンデルバルドはそれぞれ本を読んでいた。日が落ちてから随分経ち分厚いカーテンの下ろされた部屋では照明も本を読むのに最低限の明かるさに絞られていた。その部屋には2人のページを捲る音だけが静かに響いている。


     クリーデンスが本を読むようになったのはつい最近、グリンデルバルドについてきてからのことだった。最低限の読み書きは義母に教えられていたが、本を読む時間の余裕も、精神的な余裕も、少し前のクリーデンスには与えられていなかった。
     義母の元でクリーデンスが読んだ文字と言えば自分が配る救世軍のチラシ、路地に貼られた広告や落書き、次々と立つ店の看板くらいのもので、文章と呼べるようなものとは縁がなかった。お陰でクリーデンスにはまだ子供向けの童話ですら読むのはなかなかに骨が折れる。時には辞書にあたり、進んだかと思えばまた後に戻ることも少なくないせいでページはなかなか減らない。しかしクリーデンスはそれを煩わしいとは思わなかった。今までの生活とも今の生活とも異なる世界、新しい知識に触れる事はなかなかに心が惹かれる。クリーデンスにとっては未だにはっきりとしない感覚だがこれが楽しいということなのかもしれないと、ぼんやりとだが思えた。それに今日のように隣で本を読むグリンデルバルドのページを捲るスピードは、自分のものとは異なり一定で、その微かに聞こえてくる紙のすれる音が刻むリズムがクリーデンスには酷く好ましかった。
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