光差す方 既に電気の消された部屋。小さな物音で目を覚ました。
見回す程の広さもないベッドの上、窓から差し込む青白い光に輪郭だけをぼんやりと照らされた彼はベッドから身を起こしている。窓を背にした表情は逆光で,僕から見てもはっきりしない。ただ彼の頬を滑り落ちる涙は微かな光を反射して、僕の朧気な視界にもしっかりと映った。
泣きながらひっひっと引き攣った呼吸を繰り返すアレックス。細切れに呼ばれる名前や謝罪の言葉を聞きながら、僕はただ彼の震える肩を擦り続けている。
彼は時々、夜中にベッドの上で迷子の子供ように泣きじゃくる。期間はまちまちで週に2度もあることや、1月あいだが空くこともある。一緒に暮らすようになってまだ半年だけど、もう片手では足りないくらいアレックスは暗闇の中で迷子になっていた。
2891