たまたま腕を覆う包帯を外していた男を目にした。うわ。
「おまえその痣なんです?その布巻くならその前にちゃんと手当てなさいよ。なんのためのそれなんですか。」
「ん?これはまあ、有ると色々便利なんだが、使わない時は邪魔だから、こうして腕に引っ掛けてるんだ。」
なんだそりゃ。というか、ん?ではない。
「だから、手当てをしろと。痛いでしょう?」
「痛くない。」
「なら覚えろ。」
患部を、きゅ、と掴む。男は僅かだが目を細める。痛感の機能は有るようだ。
「これが痛みですよ。」
まったく、身体の苦痛に対しても、いつものようにヒーヒー言っていれば良いものを。
「ほら、言ってご覧なさい。」
「……痛い。」
よし。
「痛いって言えて、偉いですね。」
「……え?」
「偉いですよ。」
ちゅ。
「え…?」
「じゃ、痛かったら痛いって、今後もきちんと言うように。」
では。オマケに患部以外に口付けたのは、ただの戯れだ。そうして、その場で呆気に取られた男を置いて別れた。
後日。
「りっぱー……、あの、」
「はい?」
「えっと……」
「うん?」
「……。……痛い。」
「あー、おやおや、転んだんですか。ちゃんと手当てしました?」
「うん……。」
「うんうん。偉いですねー。」
ハイ、ちゅー。
「……うん。」
そしてまた後日。