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    azisaitsumuri

    @azisaitsumuri

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    azisaitsumuri

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    眠たいので懲りずにまた新しく書いてしまっているしんよへとらまんでも舐めて(?)ってくれ…

    ##傭リ

    いちまんさんぜん字なのにまだ終わらねえ… あの輝く星は、いったいどこの星なのだろう?
     今自分が居るこの星は、光の星と、どの星人もがそう呼ぶ程、光に満ちた美しい星なのに。遥か彼方の銀河系、ここより何十万年も遅れた科学力なのに、光の星の偉人、果ては他の異星人達にも、美しいと言わしめた星が有ると言う。絶望を希望に変える星、と。
     その星の名は。

     エウリュディケ科学特別捜査隊、通称、科特隊は、元々その名の通り、小惑星帯に位置するM型小惑星エウリュディケを捜査及び研究をするために組まれたチームだったが、現在その活動を一時停止。活動内容を、特殊生命体対策に変更。その理由を世間では、小惑星エウリュディケ上で調査することが無くなったからだとか、予算の関係とか、現実的なものから下世話なものまで数多く勝手に推論されたが、実のところ、それは最重要機密事項として秘されて居る。
     科特隊隊員はエウリュディケにて、異星人と接触したのだ。
     その重要事項は機密レベルULTRAに認定され、科特隊の彼らはその異星人のことを親愛を込めて光の使者と呼んだ。
     そして今、特殊生命体対策の要と成ったエウリュディケ班は、昨今地球上で出現が確認されるように成った巨大生物の対策を、主な仕事として居る。
    「地球の独立愚連隊へようこそなの〜。」
     両手を振りながら親しげに歓迎してくれた、一見幼く見える女性も、この、対特殊生命体に関しては今じゃエキスパートの精鋭として活躍して居るチームの、メンバーのひとりである。
    「班長がヘッドハンティングして来たって本当か?あの頭でっかちを唸らせる程の実力とは、科特隊の名前が今より有名に成ってしまうな、今から怖いよ。」
    「こら、聞こえるよ?また、頭でっかちなのは君の方だ、って言われても、知らないから。ねえ、相棒。」
     そして、ごちゃごちゃした機械を自らの体に身に付けて居る奇特な男性も、梟を連れて目隠しをして居る奇妙な出立ちの男性も。
     さらに。
    「五月蝿いぞ、お前達。この男は自分も民間人の立場のくせに他の民間人の救助をして居た暇人だ。しかしその判断の速さと行動力、そして何より、我々は勇気と希望を称賛するタチだろうが。」
     班長の男性までもペストマスクをして居るありさまだ。そんな男が勇気と希望を口にして居る。そう成ると、やはり愚連隊と言っても過言では無いのかもしれない。言って居るのは、自分達自身のようだが。しかしそれにしては肯定的だ。
    「勇気と希望!その通りなの!」
     紅一点が班長に賛同して盛り立てる。そうは言っても。
    「自分はただの、傭兵だ。」
     それでもエウリュディケの人間達は。
    「良いじゃないか、傭兵。」
    「私だって科学研究所から引っ張って来られた、傭兵みたいなもんだ、ここに居るみんなもそうさ。」
     その言葉に各々頷いている彼らは、それぞれの得意分野からそれぞれの叡智を携えて集まった。そういう場所らしい。
    「……これで全員なのか?」
    「いや。」
     班長に否定される。
    「本当はもうひとり居るんだけど……。」
     明るい彼女が寂しそうな声を出しながら続けた。
    「と言うか、実は来てるんじゃないか、彼?その辺に。」
    「……いや、視てみたけれど、今は居ないみたい。」
     他の班員にこんな扱いを受ける残りのメンバー、いったいどんな人物なんだ。
     しかし、その紹介を受けることは、結局その時は叶わなかった。
     高い声で悲鳴を上げる電信音。
    「緊急通信!特殊巨大生命体出現なの!身長100メートル!体重3,000トン!既に人的被害発生!吸血行為及び毒の鱗粉を現在も放出中!外見的形状は、巨大な花……!」
     続く、一二を争う事態の報告。
    「巨大植物かな、君の得意分野じゃないか?」
    「なら、私はここで研究の続きでも……」
    「ひとごと言ってないでさっさと出動なの!本当に植物なら、光合成に必要な炭酸ガスを固定出来れば倒せるかもしれないの!」
    「巨大植物か……、よし。通称マンモスフラワーと名付け、科特隊、二酸化炭素固定の方向で作戦開始だ。」
     班長が合図を出す。
    「班長のネーミングセンスは相変わらずだなぁ。」
    「それにしても流石の作戦立案だね、やっぱり私は留守番でも良いんじゃないか?」
    「つべこべ言ってないで彼女の言う通り全員で出動だ。当然新人、お前もだぞ、七番目。」
     なんだかんだ言いながら全員素早く行動を起こす班員と班長。
    「ななばんめ……」
     迅速に出て行った班員は梟を含めて五。そして。
    「まだ見ぬ六人目、か。」
     出て行ったメンバーは六人目が居なくても、誰も気にして居ないみたいだ。
     気を取り直して、自分も五人の先輩に続く。
     そして、巨大植物、命名マンモスフラワーは、作戦通り炭酸ガス固定特殊剤の投与により、見事、科特隊の手により倒された。
    「カンパーイ!」
    「君はストレスに弱いと言うか、こう言う時はここぞとばかりに盛り上がるよな、目隠し越しでも分かるよ……。」
     彼女のお手柄なのに、と言う声に、別に構わないと言う当事者。
    「喜べる時に喜べるのは、生命に、人間にとって良いことなの。」
    「君は飲んでも変わらないなぁ。なあ、ディケンズ先生?」
    「君、もう酔っているのかい?それはビール瓶だよ?」
     アルコールを摂取し、自らを酩酊状態に追い込む人間達。班長の立場の男迄もが、その席に参加して居た。と言うか。
    「……この会はなんのために開かれて居る?」
    「何って、祝勝会さ。ささ、君もカンパイすると良い、新人さん、エンリョしないで?」
     祝勝会。成る程。
    「何かの節目の都度、互いを労い憩い合うのが、生き物の群れと言う訳か。」
     何故かその場の活気が静まり返った。
     参加人数がそれ程多くないとは言え、全員が黙って表情を固めて、怪訝な顔を揃えて居るこの状況がおかしいことは、新人の自分でも分かる。
     その時。
    「おや。もう酔ってるご様子ですね。この新人サンは。」
     まだ一口も付けて居ないグラスが、何かに奪われるように突然ひとりでに取り上げられ、そのまま宙に傾いだ。
     しかし中身のアルコールは溢れること無く。何故か宙空にどんどん消えて行く。
    「あら。来てたのね。」
    「こう言う席にだけ盛り上がるのは、私だけでは無いものね?」
    「やあやあ、良い飲みっぷりじゃあないか!」
     自分だけ状況が飲み込めなかった。
     しかしそんな自分を置いて、飲み干されたグラスだけが、机上に音を立てて戻される。
     班長が切り出す。
    「紹介が遅れたが、奴も科特隊の一員だ。オイ、立った儘は行儀が悪いだろう、貴様も席に着かんか。」
    「いえ。もうお暇します。」
     わたし、悪い子なので。グラスを開けた声の主は、声だけ存在を明かして姿を見せない儘、どうやら立ち去ったようだった。
    「……地球にこれ程の技術が有るとは。」
    「いやぁ、彼は」
    「彼は地球人なの。」
     ね。と、酒瓶を抱いた隊員に、言葉を遮った彼女は、笑って見せて居た。結局、酒瓶を抱えた儘大きく頷いて居たので、新人である自分には、まだまだ分からないことが有るようだ。
    「地球上の生物には、確かに群れない生き物も居る。昨今我々が戦って居るような、特殊巨大生命体とか。」
     彼女は、先程酔っ払いの戯言と称されたこちらの話題を丁寧に取り上げ、けれど、と言った。
    「彼らは孤独じゃないのかしら。」
    「孤独……」
     彼女はにこりと笑った。
    「仲間が居る我々は、楽しめる時に仲間と共に楽しみましょうなの。」
    「そうそう、ブレーコーだよ新人さん!」
    「わー!?最初から盛り上がって、その儘凄い勢いで酔っ払ってるー!?どうにかしてくれ、梟くん!君は彼の相棒だろう!?って寝てるー!?」
     梟は夜行性じゃないのか!?班長も寝てるし!静まり返った筈の場は、再び盛り上がりを取り戻した。自分としても、人間達の喜びを壊したいと言うことは、決してない、なかったのだ。しかし。
    「……分からないものだな。」
    「だいじょうぶよ。」
    「……分かるように成るだろうか?」
    「ちがうの。」
    「え?」
     彼女はやはり、にこりとして言った。
    「人間のことが分からない、それが、人間なの。」
     祝勝会は、無礼講の名を欲しい儘に、参加者の過半数が眠ったことで、穏やかな静けさの中終わった。
     そして翌出勤日。
     科特隊は特殊な職業だが、公務員と呼ばれる職種に該当するらしい。つまり、平日、と呼ばれる暦の上では、毎日決まった時間に決まった職場にて活動することが義務付けられているとのこと。しかし。
    「六番目は?」
    「たんどくこーどーさ!」
    「私の相棒の方が、よっぽど協調性が有るよねえ。」
     規則に則り科特隊執務室に集まった隊員達は、しかし六番目の行動を黙認して居るらしい。班長迄も。
     隊員人数を考慮しても、決して広いとは言えない部屋には、空いたデスクだけがそこに有った。
     そして、六番目の不在を気に留めないのは、何も班員だけでは無い。
     部屋に響く電信音。
    「緊急通信だ、特殊巨大生命体出現だぞ!身長45メートル!体重40,000トン!ただし不可視!サーモグラフィー及び移動時に巻き上がる粉塵により居場所と形状を確認!現在変電所を襲撃中!電気を……食ってる……!?」
    「この生命体、なんて呼ばれてたかは知らないけど、江戸時代にも出現したらしいね。当時の勇敢な侍がひとり相手取ったところを、しぶとく生き残ったようだ。今のこちらの技術なら透明は無意味だが、当時だったら幽霊だとか思われて居たかも。」
    「一騎討ちで挑むとは、大したものなの。」
    「ま、ジーっとしててもドーにも成らないしな。」
     口々に言う犯人達。そして。
    「科学技術と数で勝る我々が、遅れを取る訳には行かん。分かってるな?」
     班長の言葉に返事をしながら出動する科特隊。特殊生命体に、平日も休日も有りはしないのだ。
     科特隊、現場に到着。
    「巨大生命体を、これより透明怪獣ネロンガと呼ぶ!」
     班長が告げる。
    「あの巨大生物、ツノが有るね。」
    「あのツノの部分に高濃度の熱エネルギーを感知。吸収した電気エネルギーを、あそこで自分の生体エネルギーに変えて居るものと推測。セオリー通りなら、あのツノが弱点なんじゃないか?」
    「だけど……」
     目隠しの男が、どうやって見ているのか分からないが巨大生命体の特長を述べ、機械をいじって居た男が見識を述べる。そして、麦わら帽子の下からは、少女のような不安そうな声が漏れて居た。
    「航空自衛隊に、ネロンガの頭部を狙った攻撃を依頼する。」
     班長が外部に指示を出す。
     直ぐに青空を円錐状の飛来物が幾つか流れて行く。
     しかしそれらはネロンガに到達する前に、他でも無いネロンガが、自らツノから放った放電攻撃により迎撃を受け、なんと全弾宙空で爆散。空振りを食らった。
    「なんてヤツだ!」
     班長が忌々しげに言い放つ。
     そこへ。
    「わたしが行きます。」
     宙から聞こえる声。
     またか。
    「あんた、ひとりで……?」
     思わず、何も見えない場所に向かって声をかける。
    「かつての侍の方もおひとりだったのでしょう?だったらわたしも、武士に対して忍者の武勇でもお見せしましょうじゃありませんか。」
     それに、ステルスにはステルスを、ってね。相変わらず姿は見えないが、肩を叩かれた感触が有った。
     途端。巨大生命体は霧に包まれた。
    「なんだ!?」
    「彼の冷凍攻撃によるものだね。」
    「ドライクロー光線さ!」
    「因みに命名は班長なの。」
     自らを忍者などと称した彼の活躍を疑いもしないように、他の隊員達が口癖に述べる。
     そして、霧の中、赤い閃光が透明怪獣ネロンガの頭部を直撃し、その巨大なツノを折った。
     上がる隊員達の歓声。
     ツノが折られたネロンガは、その衝撃にか、もしくは溜め込んだ電気エネルギーを発散出来なかったためか、自ら爆散した。しかし、辺りに漂う霧が、我々を、地球を守るように、爆発の衝撃を和らげて居た。
     こうして、またも地球の平和は、守られた。地球人、そう、六番目、彼は地球人に地球人と呼ばれて居た。
     その後日、暦の上では休日だった。
     科特隊本部、地球に対しては小さな、当然、宇宙に対してはもっと小さな、その部屋は、普段仕事をして居る隊員がひとりも居ないにも関わらず、やはり、とても小さい儘だった。
     今日に至る前に、隊員のひとりに、妙な機械を通して伝えられた、合言葉、とやらを口にする。
    「キエテコシキレキレテ」
    「ふは。なんですそのカタコト……!」
     カタコトだろうとなんだろうと、姿が見えなかろうと、確かに返事が有った。
    「……そう、教わったんだよ。」
    「ふふ、地球人に宇宙語はウルトラ難しいでしょうから、2万年早いですね。で、どうしたんです、今日はお休みですよ?」
     新人だから間違えちゃいました?誰の姿も見えない部屋に、普段は居ない者の声がする。
    「やはり居たか。」
    「……わたし?」
     と言うと?姿の見えない儘、声が問う。
    「平日に居ないから、逆に休日なら、と。」
    「ええ?……ふふ。面白い新人さん。」
     透明な笑い声が聞こえる。
    「珈琲でも飲みます?お茶も有りますけど、ま、今日は珈琲で。本当だったら使われて居ない筈の日なので、ナイショですよ?」
    「……人間は個として完結して居る生命体なのに、何故そのように周囲に声をかける?」
    「ふふ、完結なんてしていませんよ。人間は、我々は互いに干渉し合い、支え合って生きています。例えば、」
     珈琲カップから立ち昇って居るのであろう霧のような白が、こちら迄届く。
    「この珈琲の豆もこの現在地点からすれば地球をぐるっと回らなければならない場所の人間が採取している。珈琲カップを作ったのも、どこの地球人か知れない。機械の珈琲メーカーなんて、部品に分ければ、ばらばらにどこで作られたものやら。」
     目の前に、珈琲カップが宙を滑るように差し出される。
    「それが、群れです。」
     おまえの言うところの、ね。
    「まあでも、生命が、地球人が不思議なのは分かりますよ。地球外星人同士ですものね。」
    「え?」
     飲もうとして居たカップの手を止める。
    「しかし、隊員の彼女は、君を地球人だと……」
    「ちょっとちょっと、ここ迄透明化出来る技術は、地球人にはまだありませんよ。そんなことも分からないなんて、ほんとに新人なんですね、地球の。」
     それに、と、地球外星人だと自ら明かした、透明な男は、どこか彼方へ向けるような声で続けた。
    「ユザレの子孫くらいですよ、わたしを地球人として当たり前のように扱うのなんて。」
    「ユザレ?」
    「古代の、3,000万年前の地球の地球星警備団団長です。」
    「……君はいつからこの星に居るんだ?」
    「……ふふ。いつからだったかなあ。」
    「……姿を見せてはくれないのか?」
    「そう言うおまえは?」
    「自分は……、」
     珈琲に口を付ける。
    「……以前、この星に来たと言う、我が星の宇宙警備隊員が持ち帰った、この星の情報。と言うか、御伽噺のような冒険譚が伝わって居て、それを知って、……それを、忘れられなくて」
    「……だから地球人を知りたくて、地球人の姿をとって居るのですね。そう言う意味では、おまえもこの星に魅入られたのですね。その隊員と同じように。」
     地球の因子、とでも言いましょうか。
    「君は彼を知っているか?」
    「まさか。」
    「それこそ、まさか、だろう?ずっとこの星に居るのだから、彼と会っていないと言われる方が、信じられない。」
    「いえいえとんでもない。」
     だって。
    「わたし、嫌いですもん、スペシウム。」
    「……スペシウムが、」
     そうか、としか言わざるを得ない。スペシウムは、我々の主要エネルギー源、これによって存在そのものが構成されて居ると言っても過言ではない。それを。
    「だから、こちらを避けて居るのか?」
    「これでも新入隊員さんを歓迎して居るのですが、おまえ、思ったより可愛いですね。」
    「……。」
     無意識のうちに飲み干して居たカップを、またもひとりでに取り上げられた。
    「地球人に惹かれる外星人よ、おまえがわたしの姿を見たら、きっとびっくりして思わずスペシウム光線を放ってしまいますよ。」
     それは御免なので、と言う相手に、そんなことで放つような訓練は受けていない、と返すも、聞こえて居たかは分からなかった。
     それから数日経っても、六番目の姿は知れない儘だった。
     そんなある日。
    「特殊生命体を発見したよ。」
    「今回は巨大じゃないのか。ってそいつは君の使い鳥じゃあないのか?」
    「失礼な。別の鳥だよ。」
    「痛ッ!?悪かったよ!」
     目隠しの隊員が、いつも連れて居る梟とは、別の鳥を連れてやって来た。梟は彼には恭順の態度を示して居るように見えるが、今は、機械を纏った隊員を機械ごとつついて居る。恐らく手加減、否、嘴加減はして居る。
    「文鳥みたい、かわい〜の!」
    「今はね。」
    「と言うと?」
     二羽の鳥に挟まれた隊員は、一度咳払いをして話し出した。
    「この鳥はラルゲユウス。第三氷河期以前に絶滅したとされて居たのだけれど、十世紀半ばにインド西部の大都市で大量発生した記録が有る。」
    「こいつはその生き残りなのかい?」
    「いや。」
     目隠し越しに、隊員は問題の鳥を見詰める。
    「一千年程前の船の中から発見された。どうやらタイムスリップして来たらしい。」
    「ええ?」
    「鳥繋がりで個別に報告を受けたのだが、ここに来る前に調査したところ、更にこの鳥は、どこかの時代のタイミングの、太陽の異常活動の宇宙線の影響により、お腹が空くと夜に巨大化して暴れるらしい。」
    「なの?」
    「すると身長50メートル、体重15,000トン、嘴は鋭く変化し、巨大に成った翼は風速40メートルの突風を起こせて、飛行速度はマッハ1.5の儘500時間飛び続けることが出来る。」
    「……設定盛り過ぎじゃないか?」
     最後には班長迄、情報に対し混乱の意を示した。
    「結局、巨大生命体なのか……。」
     引っ詰めた髪をがしがしと掻く隊員は、その動きで、身に付けた機械をがちゃがちゃとも言わせた。
    「しかし、どうする。」
     班長が科特隊の役割とも言える、解決策の対応を班員に求めた。
    「今は真昼なのと、ご飯をあげているから、こうして大人しくしてくれているだけだよ。」
     鳥使いが言う。
    「なら今のうちにに倒すの?」
     可愛いと称したと同じ口が告げる。
    「……良く似た生命体の暮らす場所に、心当たりが有る。」
     隊員らの、地球人の両目が一斉にこちらに向けられる。まるで光線みたいだ。かの隊員がスペシウムを嫌う理由なんかより、余程弱い影響だとは思うが。
    「……自分はただの傭兵だ。しかし、様々な場所を転々と移動する際に、プランクブレーンの通過を手段とする。この鳥と良く似た生命体の暮らす場所と、今この場所を繋ぐことで、この鳥をそちらの場所に移すことが出来る。」
     どうする、と顔を上げて、地球人達を見回す。
    「……場所を繋いで、そちらの場所をラルゲユウスが選ぶなら、移ってもらおう。」
     鳥使いの隊員が、皮切りに声を上げた。
    「ラルゲユウス自身に、自分の居場所を選んでもらうのね。」
    「さんせーい!」
     他隊員達も賛同する。
     最後に班長が纏める。
    「古代怪鳥ラルゲユウスが、地球の生命体として地球を選ぶのなら、同じ地球生命体である我々が、この地球上にて倒す。それで行く。」
     そうして、地球上の技術では生み出せない機械、ベーターカプセルを取り出し、起動させた。
     光の点火と同時に異次元空間の展開。
     出現した「穴」の向こうからは、温暖な空気。ラルゲユウスは、新世界を見定めるように覗き込んだ。そして、一度科特隊を振り向いて見回すと、穴の先へ羽ばたいて行った。
    「さらばだ。」
    「達者でな!」
    「ばいばいなの〜!」
     科特隊の見送る中、ラルゲユウスは新天地を選んだ。
     穴の中へと小さく成って行く姿を、自分も見送る。本来ならあちらの世界、異星の方が、こちらの星より規模が大きい。正に巨大な鳥ラルゲユウスに相応しい。しかし今、ベーターカプセルによって星と星の場所を繋ぐ際、その規模を同程度に調整した。プランクブレーンを通過しない間は、星の規模に差異は無い筈だ。
     何事も無く去って行ったラルゲユウスに、なんだかほっとした感情が湧き上がった。そしてベーターカプセルのスイッチをもう一度押し、プランクブレーンへの扉を閉じようとした。
     しかしその時、先の世界から逆にこちらの世界へ、大きなドリルのような何かが突っ込んで来た。
    「……ガボラ!」
    「どけ、傭兵!」
     班長が叫ぶ。
     それより先に、何かが目の前に立ちはだかり、回転するドリルを右手の片手で掴んだようだった。そこから散るように霧が立ち昇る。それによって上背の高いシルエットが見え隠れする。
    「おい……!?」
     長身痩躯が、ドリルの勢いを逆に利用して一度上方に向けた瞬間、現れた下方を素早く蹴り上げ、その体をひっくり返した。ドリルからは四つの足が生えて居る。あちらの星でウランを常食して居る生命体、ガボラだ。確かにこの星にもウランは存在する。しかし、ラルゲユウス同様、地球人には御し難い相手だ。
     それでもステルスした儘の目の前の者は、ガボラを怯ませ、地底移動時にドリルの姿をとる襟状の鰭を開かせた。中には鰭で保護されて居たガボラの頭部が鎮座して居る。
     直ぐにガボラは鰭を閉じようとする。しかし六番目がそれを許さない。霧の中見えた、鋏のような爪のような左手で鰭を切り裂き、その隙間から見えたガボラの頭部を右手拳で殴った。ガボラは大きく後退した。今が好機……!
    「閉じて。」
     霧の声の通り、ベーターカプセルのスイッチを押す。
     プランクブレーンの扉は閉じられた。
    「……すまない、自分が場所を繋いだから、」
    「何言ってるの!」
    「君の作戦を採用したのは、満場一致だった。」
    「終わりよければすべてよし、ってね!」
    「……ありがとう。」
     隊員達が口々に言う。
     これが。
    「群れ、ではなく、仲間、と言ってみなさい。」
     頭上の霧から、声が落ちて来る。
    「仲間。」
    「そうとも。良くやったぞ。」
     班長が言う。
     半ば呆気に取られて居ると、霧が離れて行く気配。
    「ありがとう。」
     慌てて霧に向けて言う。
     すると霧の男は、こちらの頭をわしわしと撫でるように触れ、今度こそ去って言ったようだった。感触からして、その手が損傷して居る様子は無かった。良かった。
    「今日もお酒が飲める……!」
    「おいおい……。」
    「本当なら新人さんの歓迎会もしたかったんだよね……!」
    「日々のお酒の席を増やしたいのね〜」
     地球人の口はひとり一つしか無い筈だ。それでも口々に言う。騒がしい、仲間達だった。
     そして後日、恒例の緊急通信だ。
    「やあやあみんな!特殊巨大生命体出現だよ!身長40メートル、体重20,000トン、南極で仕事中の観測隊を反重力を伴う光線で攻撃!その温度マイナス130度!現在は移動し東京に出現!」
    「そんなに超低温じゃ、無重力に成っても仕方ないな。冷凍光線か、今東京は真夏なんだが……。」
    「東京氷河期なの!?」
    「オイ、どうやって移動した?」
    「羽だ。椀部が翼に成っており、その飛行速度マッハ80!遭遇した南極隊員の調査協力によると、ペンギンの突然変異らしいけど……。」
    「また鳥か……ッ」
    「いや待ってくれ、ペンギンは飛ばないだろう!?アザラシの間違いじゃないか!?」
    「アザラシなんてもっと飛ばないの!って、そんなことより!どうして東京に来たの?」
    「南極隊員が言うには、何かを嫌がる素振りが有ったらしい……何か、苔?のような……」
     目まぐるしく交わされる会話の中、麦わら帽子の下の顔が、何かに思い当たったように、はっと上がった。
    「ひょっとして……ペギミンHかしら?南極の苔から抽出出来るの……!」
     体に付けた機械を鳴らして、呼応する隊員が言葉を返す。
    「なら、ソイツをミサイルに乗せて、発射させよう!」
    「よし。試してみろ!」
     班長の号令で、作戦が始動する。
    「この巨大生命体を冷凍怪獣ペギラとし、ペギミンHのミサイルを撃て!」
     科特隊の駆け付けた現場は既に凍てつく寒さの中に有り、特殊巨大生命体、冷凍怪獣ペギラは、自身の住み良い環境を自ら作り上げてしまって居た。
    「陸上自衛隊と協力して、この環境下でペギラに迎撃されず確実に打ち込むためのミサイル発射地点の確保及び万が一残って居る場合の市民を安全に誘導!」
     了解!各員、吹雪の中を駆け出す。
     科特隊と自衛隊は、ペギラが踏み付けたり反重力光線を放たない、かつ、撃破可能地点にミサイル発射台を設置。また、他の人員はミサイルがペギラに気付かれないよう誘導。
     これで準備は整った。
     しかし。
    「危ない……!」
     氷漬けの周囲から、倒壊した建物の破片が落下。氷柱のように鋭く、危険な礫と成って飛来。
    「傭兵……!?」
     唯一と言って良い所持品を構える。
     そして。
    「すごい……!」
     それを宙へ投げ、全ての礫を破壊するように弧を描かせる。
    「自由自在か……!?」
     危険物を粉々にして安全にした後は、また自身の手に戻って来るように引き寄せる。
    「今のうちなの!」
    「急げー!」
    「準備完了……!」
     慣れた動作、手に馴染んだ感触。しかし、身の内では緊張が迸って居た。これでひとを救えたか?
    「発射!」
     冷凍怪獣ペギラ、撃破。
    「やったじゃありませんか。」
     止み始めた吹雪の轟音と、それに負けない歓声の中、雪雲とはまた違った霧の中から、そんな声が聞こえた気がした。
     そしてその日も祝勝会は開かれた。
    「ナイスだったの!」
    「凄い活躍だったね!」
    「もう新人とはとても呼べないな〜。」
     その中で、まだ酒が回って居ないらしいペストマスクが、冷静に言う。
    「あのナイフ投げのような技、よくぞ氷を破壊出来たな。」
    「あれは……。」
     参加者のひとりが、宙空に目を向ける。
    「あら。いらっしゃいなの。」
     六番目。
    「スラッガーですね。」
    「なるほどね。」
    「はは。確かに、肩が強そうだ。」
     宴の席は、いつ迄も騒がしいかと思いきや、やはり幾人か寝始めてしまう。
     一番乗り気の目隠しとその鳥、班長の鳥頭、機械に話しかけて居る内にうとうとし出す者。
     その中で、密やかに続けられる会話も有る。
    「本当に投げただけで、あんなに自由に武器が飛び回るの?」
    「念力ですよ。」
     どうして自分の武器なことを、自分以外に問われ、そして解答されて居るのだろう。
    「しかしわたしも、あそこ迄宇宙ブーメランを使い熟す者を見たのは始めてです。彼、相当な念力の使い手ですよ。おそらく目で操って居るのでしょう。言うならば、アイスラッガーとでも言いましょうか。」
    「アイスラッガーなら、スペシウムと違って、好き?」
    「いや別にアイスラッガーも好きでは無いですよ。」
     どうして自分抜きでそんな会話をされて居るのだろう。
     けれど、遂に彼女も船を漕ぎ始め、眠ってしまった。
     宙を浮く上掛けが、ふよふよと女性にかけられる。
     それをなんと無しに眺めながら、思って居たことを口に出す。
    「……自分達を凌ぐ科学力を、もっと頼るものだと思って居た。」
    「地球人がですか?」
     宙空のどことも言えない方向に向かって、こくりと頷く。すると全く見当違いの方から笑い声が返る。
    「物分かりが悪い訳では無いのですよ。」
     声は宙空を移動して聞こえる。
    「地球人を試したのですか?」
    「そんなつもりは……」
    「分かってますよ。」
     また笑われた。
    「わたしはこの子達地球人に、同じく地球人と呼んで貰える程度には長くここに居ますし、ここに就職して居る身ですから、手を貸すことを余り惜しみませんけど。」
     そちらはそうでは無い?問われて、なんとも返せないで居ると。まあ、おまえの気持ちを思うと、どちらかと言うと観光の意味合いの方が近いか。そう代弁される。姿は見えないのに、地球人のように良く喋る。あるいは、この仲間達が、彼に触発されて居るのだろうか。どちらでも良いと思った。そのどちらも、良いと思った。
    「あ。」
     黙った儘で居るこちらを他所に彼はまた言った。
    「と言うか、そもそも専門の戦闘員では無かったりします?」
    「……言ったろ。傭兵だって。」
    「わたしが思うに、恒点観測員辺りの方では?随分念力がお得意のようですし、まあ場合によっては戦闘訓練が必要ですし。あと、文明監視員っぽくは無いんですよね〜。」
    「……詳しいな。」
    「言ったでしょ。嫌いなんです、スペシウム。」
     そこ迄……。
    「どうです、結構良い線行ってると自分では思うのですが?」
     笑う宙空に、勝手な奴だと思いながら黙る。
    「……自分も寝る。」
    「ええ?つまんない〜。」
     そう言う君は、その場に居たり居なかったり、そもそも居るのかどうか分からないじゃないか。思うだけにとどめて、黙って地球人のように目を閉じる。
     光一つ差さない闇の世界。だけど、光はいつでも共にある。自分では、今迄その光こそが自分の仲間だと思って居た。しかし今はその輝きが、地球人の言う仲間というものと本当に同一のものなのか、分からなく成って居た。
     それでも地球での日々は過ぎて行く。この星では太陽と言う名の恒星が一日を司って居る。燃える太陽の輝きは、熱く、無作為にエネルギーを放出し、感情の起伏が激しい地球人のようであると思う。同時に、優しく、身の内からあたたかい気持ちを湧かせる光も、また、地球人のようであると思った。
     そしてその日の科特隊は、特殊生命体の出現も無く、雑務を熟す平和な時間が流れて居た。その中でひとり、こんな日だからか、植物学関係の古巣に声をかけられ、科特隊の紅一点は別の仕事に当たって居る。そんな彼女はさて置き、いつも居るんだか居ないんだか判別が付かない男も居るが。
     そんな平穏な一日として終わると思われたが。
    「なぁ……、謎の霧が発生して居ると報道されて居るんだが……。」
     恐る恐る、班員達を見回す。
    「それは心配だけれど、ここには通信が入って居ないから私達は……出動することは出来ないよ。」
     声だけでも案ずるようなものだと良く分かるのに、彼も鳥も、言った通り動こうとはしなかった。
    「ペギラとかじゃなく、結局ただの霧だろう?我々は特殊生命体のための組織だから。それ以外に対しては、一般人同然さ。」
     機械弄りをやめない手の男がそこに続ける。
    「現場に行って、例え出来ることが有ったとしても、それをいつもどこでも同じ人物がやることはない。そんな英勇は居なくて良い。居てはならない。そのため我々人類は、互いに役割を分断させることで、協力し合って居るのだ。」
     嘴鋭く、班長が締め括る。
     それが、群れ。
     しかしそこへ、我らが科特隊に通信が入る。
     けれどそれは、良く知った相手からのもので。
    「こんな時に、古巣に帰郷中の彼女からだな?」
    「何か有ったのかな?」
    「繋げ」
     機械をがちゃがちゃ言わせて居た男が言うのに、目隠し越しに心配そうな顔が呟き、最後に班長が命じる。
    「こちら……なの!……訪問の移動時に謎の霧に遭遇!……他の人達は避難させたの!その際霧の中に青く発光……未確認物体を発見!」
     通信状態が悪い。
    「なんだか……な予感がするの……音を……ながら光を点滅させて……今度は赤に……!?これは……タイマー……?心臓みたい……いきてるの……?」
     聞き取りづらいが、もし本当に彼女の言う通り原因が生命体なら、科特隊の出番ではなかろうか?
     班長のマスクを見るが、まだ判断材料に欠けるようだった。他の班員も、巻き込まれた仲間を心配しては居る様子だが、じっと動かない。そこには確かに、やるせ無さが爆破しそうな、太陽の熱のようなものが有ると感じるのに。
    「……点滅が消えた!?霧が……!……だめ!その姿は……!」
     通信が途絶えた……!
    「出動。」
     嘴が命ずる。
     班員達が動き出す。
    「……良いのか?」
     班長に訊ねた。
    「仲間を助けに行くのに、理由が必要か?」
     これが、仲間。
     太陽のように熱くたぎる想い、しかし、優しいあたたかさ。
     太陽に照らされ生きて居る者達の後を追った。
     ところが、現場に到着した我々を待っていたのは。
    「あれは……!?」
     ここら一帯どころか地球全てを包んでしまって居るのでは無いかと錯覚するような霧の中を、悠然と闊歩する巨大な何か。
    「あれー……なんか知り合いに似てるなァ〜……」
    「彼女が、発光する物体だと言うから、何か装置に近い、よもや機械生命体でも現れたかと楽しみにして居たのに。」
     どこか拍子抜けしたような隊員達が、途端に頭部を殴られたかのように痛がった。梟は避難して居た。
    「何を呑気に!がっかりするな!失礼ですよッ!」
     宙空から聞き覚えの有る声。
    「来てたのか、六番目。」
    「当たり前ですッ!肖像権の侵害ですかッ!?」
     冷静なのか呆れて居るのか、落ち着いて言葉を発する班長に、珍しく声を荒げる六番目の、姿の見えない班員。
    「あー……、まァ、仲間を助けるのに、理由は無い、からな。」
     班長迄も拍子抜けしたような対応に、姿が見えないながらも六番目の癇癪の気配を感じる。
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    azisaitsumuri

    MOURNINGリが傭の人形を使って都市伝説の一人隠れん坊(と言うかホラゲのハィドアロォンからの妄想)をする話。現パロなのかな。怖い話ではない(?)。こうれいじゅつ。
    ※お話に都合良くルールを改悪して居ます。それ以前に一人隠れん坊をしないでください。(ホラゲは楽しいです。)
    海外版一人隠れん坊風よーり(?)家中の明かりを消した内の一室のテレビを点ける。液晶の砂嵐に好きなだけノイズを歌わせ「彼」を迎えに行く。寝室に横たえた人形を持ち上げて微笑み掛ける。「さあなわぁぶ見つけましたよ。」そのやわい腹に鋏を突き立てる。「次はおまえが鬼です。」人形をベッドに戻したら部屋を出て浴室に向かう。空のバスタブに自身を沈め、目を閉じて暗い冷たさに心地良く身を委ねる。やがて扉の開く音が聞こえるので目を開ける。寝室の方からだ。それから順番にがちゃりがちゃりと他の部屋の扉を開けられて行く、部屋の中を一室一室確認するように、それが徐々に近付いて来る音がする。それが浴室の前の部屋からした時点で、隣の部屋に入った彼と入れ違いで風呂場を出る。その儘リビングのソファに座り、足を組みながら砂嵐の液晶を眺める。今頃は風呂場を確認して居るであろう相手の立てる物音もノイズ音に混ざるが、紛れること無くはっきりと耳に届く。それがもっと、もっと近付いて来る。ノイズ音は不快な筈だが長く聞いて居れば微睡みが誘うようだった。それが強制的に引きげられる感覚。背中にひやりとした空気が張り付くようなバスタブよりも冷たい気配。「見ぃつけた。」人形の腕が人の腕のような大きさで動き、人の通常よりも激しく後ろから捕えられる。「だめだろぅ、ちゃんと隠れてなくちゃ?」押さえられた腹は、鋏で彼を刺した箇所だ。砂嵐はいつの間にかやんで真っ赤な画面を映すばかりだった。
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    azisaitsumuri

    CAN’T MAKEどこかの時空の傭とどこかの時空のリとよーりが居るどこかの時空(???)
    傭とリと傭(とリ)が出る(??????)
    ※えすえふでは無くふぁんたじぃ()
    陸続きで無くとも、川や海を渡って来たならば、その国に入国手続きを迫られるだろう。そこ迄大袈裟で無くとも、コミュニティにまみえるのならば誰何故何処から等々聴取が有るものだろう。そうして内部に居る者は、自分を含めたそこに居る者が得体の知れた者だと思うのだ。ところで、ワームホールと言うものが有る。これは安全を思い込む人々を容易く裏切る来訪手段で有るが、使える魔法使いとまみえる機会はそうそう無い故、人々は安心されるがよろしい。それが分かったところで、諸君にはどうせ何も出来無い。ただ、来訪者が温厚で有ることを祈ることしか出来無い。「ここは平和ですね。」滅茶苦茶にしたく成ります、とうっそりと笑う来訪者の案内人は、諦めて居るのか呆れた顔を浮かべるだけでそれ以上をしようとはし無い。「宿を取るにも証明書が居るようなところでは困るからな。」歩き出す案内に任せきりで付いて行く長身痩躯は忙しなく始終辺りを見回して居た。そんな二人に周りは、旅の人かい、観光かな、やあ目を引く方々だ、等々気さくな調子だ。朗らかだが気安い人々に案内人の方は辟易して居た、目立ちたく無いのだ。反して連れは目立ちたがりのきらいが有る。それも案内人を辟易させる要因だった。「ここは穏やかですねえ。わたし、ここを気に入りました。何処か、特にここ、と言う場所は有るのでしょうか?」そりゃ嬉しい、きっと領主様もお喜びに成る、そうだ主様のお屋敷に行きなよ。「…おれ達みたいな奴が、そんなお偉いさんのところなんか。」案内人は人々から連れを引き離したかった。人々の思惑も、連れが何を言おうが関係無く。大丈夫さ、寧ろ歓迎してくれる、あの人は良い人だよ。お屋敷には綺麗な絵が沢山有るんだ。「へえ、では是非に!」やあ背の高い人、あんた主様のお連れの人によく似て居られる!何より案内人が気掛かりだったのは、人々のそんな眼差しだった。宿も人々がなんとかしておくと言う話にも乗せられて、案内人の静止は掻き消された。何せ人々と敵対なんてなろうものなら、それこそ宿どころの話じゃ無く成るからだ。強い拒絶なんかそもそも出来やし無かったのだ。あれよあれよとそのお屋敷とやらに案内もとい連れて行かれ、人々が言って居た通りの美しい絵画の数々が飾られて居た。並びに規則性は感じられ無かったが、おそらく同じ作者によるもので有り、そしてどれも、大切に手入れされて居る様子だった。主様
    1916

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