セリエナの一番長い日 夕暮れの空を雪がちらちらと舞い落ちては、黒い海面に溶けていく。板が不規則に敷き詰められた床に積もったそれらには、沢山の人々の足跡が付いていた。
「ねえ、あの話聞いた?」
「聞いた聞いた。まるで御伽話のプリンセスねぇ」
前線拠点セリエナの船着場には、ちょっとした人だかりができていた。調査員たちの視線の先にいるのは、調査団の入団基準に満たない小さなアイルー。なんとかコミュニケーションを図ろうと女性ハンターが声を掛けるも、アイルーはみぃみぃと鳴きながら、積荷の影に身を隠すばかりだった。
そんな中、人混みをかき分けて仔アイルーによく似た白い毛並みのアイルーが血相を変えて駆け寄ってきた。
「スア! なんでここに居るニャ!?」
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