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    @WaGaKimi72

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    カイムの故郷のモブ女視点の話「美しい村の話」https://poipiku.com/3805122/8157818.html のパイロット版のような昔書いた短編が出土したので載せます
    罪人イベを経た今となっては完全に無いルートの話です
    漫画のプロットのつもりで書きだして途中で方向転換したので冒頭にその名残があります
    この後異端狩りで親を亡くした「悪魔の子供」を引き取るヤバ孤児院編に突入します

    ある道化の独白私はカイム
    御身にお仕えする事を、お許しください

    私は辺鄙な辺境の村で生まれ育ちました
    内気で病弱な私は近所の憎たらしい餓鬼ども、失礼、子供たちに馴染めず仲間外れにされていました

    カイムの母「あなたたち ちょうどクッキーを焼いたの よかったら食べて?」
    近所の悪ガキ「………」
    カイムの母「うちのカイムをよろしくね」
    黙ってクッキーを持っていくガキ「………」

    クッキーを食べたガキ「! うまっ!!」
    サブレー「うちのかーちゃんのよりうめぇ!!」

    サブレー「ただいま!」
    サブレーの母親「おや そのクッキー誰からもらってきたんだい?」
    サブレー「カイムのおばさん!すげーうまい!」
    サブレーの母親「………そう」


    母ひとり子ひとり 生活は楽ではなかったが、母はよく他人に施した
    困ったときはお互い様なのだと
    よい行いはいつか自分に返ってくると

    母は遠くの町から結婚を機に夫の故郷であるこの辺境の片隅に移り住んできた余所者だった
    幼い頃に流行り病で死んだ父の記憶はほとんど無い
    今だからこそ言えるが、父が亡くなった時点で即刻村を離れればよかったのだ
    だが夫が眠るこの地を離れる選択肢は母には無かった
    私がまだ幼く体が弱く、移住の負担に耐えられるか不安もあったのだろう

    無理にでも村を出てもう少し大きな町に住めばあんな事にはならなかったはずだ


    いや、そもそも私が悪魔でなければ………


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    この頃の私は断片的なメギドラル時代の夢にうなされては度々体調を崩していた
    母は私が寝込む度によく添い寝をしながら古い寓話集を読んでくれた
    年季の入った頁をめくりながら、自分が子供の頃も母親にこうして寝物語を読んでもらったのだと、悪夢にうなされ汗で張り付いた私の髪を梳きながら懐かしそうに話した
    ランプの揺らめく明かりの中、母の柔らかい声で読まれる教訓と示唆に富んだ物語は何度聞いても私の耳に心地よく馴染み、深い眠りについた

    そのほとんどが高価な本とは生涯無縁の、自分の名前を書くのも覚束ない者が珍しくない村の者たちから、気立がよく明るく字の読み書きと計算ができる母は重宝された

    ある者は村を出た子供から届いた手紙の代読や返事の代筆を頼み、ある者は母から読み書きを習いたいと言い、ある者はさっくりとほどけるクッキーのレシピをこい、ある者はぼったくり行商との交渉に母を呼んだ
    そのような中で母を信頼した者からたびたび悩み相談も受け、母も真摯に話を聞き力になり、それらの対価としてささやかながら報酬を貰い生活の足しにした
    母の周囲には常に人が絶えず、村の皆の中心となった

    しかし、母は聡明で善人ではあったが愚かだった
    本の知識を知っていても人を疑うことを知らなかった
    ヴィータの不滅の愚かしさを知らなかった

    ある者は母の美しさを妬み
    ある者は母の人徳を嫉み
    ある者は母の聡明さを僻み
    またある者は誰の男のモノでもない母の体を眼差した

    ある者は母が若い男を誑かしたと噂を流し

    ある者は母が読み書きや計算のできない者から法外な報酬を巻き上げてると吹聴し

    ある者は地震で濁った井戸の水は母が妖しげな薬を井戸に投げ入れたせいだと冗談半分で言い

    ある者は地震は更に大きな地震の前触れで、その地震は母が招いた厄災であると大真面目に主張し

    極めつけは僅かに大地の恵みが見える古き血筋の老婆が、真夜中に母の家の周囲で大地の恵みが不審な動きをしていたと、きっと何か妖しい儀式をしているに違いないと訴えた

    誰かが言った
    あいつは「魔女」だと

    我々を弄び騙す伝承の「悪魔」だと

    あいつの言葉に耳を貸してはいけないと

    異端の女の噂は異端審問官の耳にも入った

    やがてさざ波は大きなうねりとなり母の身を燃やし尽くし 無慈悲な灰の山にした

    母の罪はたったひとつ
    愚かにも人の善性を、自分の息子を信じた事だ

    家の周囲のフォトンの不審な動きは、夜な夜なメギドラル時代の夢にうなされている私に反応したものだった

    夢を見るたび元の息子とは違う「何か」に浸食され、時折子供のものとは思えない冷酷な目をしていた私の異常に、母も本当は気がついていた
    それでも母は明らかに異端な自分の息子を、息子の善性を信じ、守った

    そしてあの晩、炎に包まれ絶命した母の周囲を取り巻き、高揚を隠しもせず顔を醜く歪ませる村の者達の悪夢のような揺らめく陽炎を見て私は全てを思い出した


    私は『カイム』


    浄化の炎に焼かれるべき『悪魔』は私だったのだ



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    罪人イベを経た今となっては完全に無いルートの話です
    漫画のプロットのつもりで書きだして途中で方向転換したので冒頭にその名残があります
    この後異端狩りで親を亡くした「悪魔の子供」を引き取るヤバ孤児院編に突入します
    ある道化の独白私はカイム
    御身にお仕えする事を、お許しください

    私は辺鄙な辺境の村で生まれ育ちました
    内気で病弱な私は近所の憎たらしい餓鬼ども、失礼、子供たちに馴染めず仲間外れにされていました

    カイムの母「あなたたち ちょうどクッキーを焼いたの よかったら食べて?」
    近所の悪ガキ「………」
    カイムの母「うちのカイムをよろしくね」
    黙ってクッキーを持っていくガキ「………」

    クッキーを食べたガキ「! うまっ!!」
    サブレー「うちのかーちゃんのよりうめぇ!!」

    サブレー「ただいま!」
    サブレーの母親「おや そのクッキー誰からもらってきたんだい?」
    サブレー「カイムのおばさん!すげーうまい!」
    サブレーの母親「………そう」


    母ひとり子ひとり 生活は楽ではなかったが、母はよく他人に施した
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