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    maia_parakuson

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    maia_parakuson

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    悲恋の曲を聴いていた時に唐突に湧き上がってきたお話です。取り敢えず一区切り着いたので、お試しで上げてみた(๑>◡<๑)
    続くはずです(^◇^;)
    ※キャラの口調が迷子だったり、誤字脱字が多いと思いますが、優しい心で読んでください🙇‍♀️

    #巽ひめ
    smallDriedSatsumi
    #巽要
    sundance

    勿忘草と黄色い水仙茹だるような暑さが鳴りを潜め、少しだけ涼しさを感じる夜の海。
    並んで海を見つめる2人の青年の事を月明かりと波音が見守る中、水色の髪の青年が薄緑色の髪の青年の方を向いて口を開いた。
     
    「……これでお終いです。貴方と過ごした日々、それなりに楽しかったですよ。」

    水色の青年——HiMERUは、最後まで笑っていようと泣きそうなのを堪え、笑顔で目の前の青年に共に過ごせて楽しかったと伝えた。
     
    「俺の方こそ……一時とはいえ、貴方と寄り添いながら過ごせて……とても幸せでした。」
     
    薄緑色の青年——風早巽は、そんな青年の精一杯の笑顔に応える様に優しく笑って、共に過ごせて幸せだったと伝えた。
    少しの間見つめ合っていた2人は、どちらから共なく口づけを交わした。

    「さようなら……これからの貴方の人生が幸せである事を祈っています。俺との事なんか忘れて、幸せになってください……。」
     
    (……約束、守れなくてごめんなさい……。愛しています……俺の最初で最後の最愛の人……貴方に出会えて良かった……。)
     
    HiMERUは、巽に自分との事は忘れて幸せになってくれと告げると、背を向けて歩き出した。
     
    「……俺も、これからの君の人生に幸多からん事を願っています……。」
     
    (貴方の事を愛しています……。今までも、そしてこれからも、きっとこの気持ちは変わりません……。)

    巽は立ち去って行くHiMERUの背に向けて、これからの幸せを願っていると伝えた。
     
    —Side.H
     
     巽の言葉が聞こえた瞬間、HiMERUはその蜂蜜色の瞳から涙が溢れそうになるのを堪えて、その場を後にした。
    海辺を離れたHiMERUが人気のない道を歩いていると、1台の車がHiMERUへ近づいてきた。
    HiMERUがその車に気が付いて足を止めると、その車はHiMERUの直ぐ横で停車して、運転席の窓から1人の男が顔を出した。
     
    「……貴方達の望み通りにしました。だから……約束通り、金輪際Crazy:BとALKALOIDには手出ししないでください……勿論【HiMERU】にもです。」
     
    「ご協力感謝します。【貴方】が約束を守ってくださっている間は、我々も約束を守ります。……我々にとって邪魔なのは、【貴方】だけですから。」
     
    HiMERUは冷淡な態度で、こちらは約束を守ったのだから、そっちも約束を守れと男に向かって言い放った。
    それに対して、HiMERUが約束を守っているうちは自分達も約束は守ると感情の伴わない声色で伝えた男は、これ以上話す事はないとでも言いたげに窓を閉め、車を発進させた。
    男を乗せた車が見えなくなると、HiMERUはポケットから端末を取り出して、録音アプリを起動させ、メッセージを吹き込み始めた。
     
    「椎名……桜河……天城……黙っていなくなる俺を許して下さい……。訳あって、俺はもう【HiMERU】として活動することはできませんが……【HiMERU】がいなくなる訳ではありません……後のこと、お願いします。貴方達とCrazy:Bとして活動してきた日々は、退屈とは無縁で楽しかったですよ。……さようなら……今までお世話になりました。Crazy:Bの、そして貴方達の活躍をずっと見守っています。」
     
    メンバーへのメッセージを吹き込み終えたHiMERUは、一度録音を停止した。
    一呼吸置いてもう一度録音開始ボタンを押すと、今度は別の人物へ宛てたメッセージを吹き込み始めた。
     
    「 巽……貴方と、ライバルとして過ごしてきた日々……恋人として過ごしてきた日々……どちらも俺にとっては掛け替えのない日々でした。貴方と交わした約束、守れなくてごめんなさい……。俺は約束を破って貴方の前から居なくなりますが……何時でも貴方の幸せを願っています。さようなら、巽……貴方の事、いつまでも愛しています……。」
     
    巽へのメッセージを吹き込み終えて端末の電源を落としたHiMERUは、ある人との待ち合わせ場所になっている、この付近で一番大きな駅へと向かった。
    HiMERUが待ち合わせ場所に着いて辺りを見回していると、見慣れた金髪長身の青年が手を振っているのが見えたので、HiMERUはその青年の元へ行って声を掛けた。
     
    「すみません、こんな夜遅くに……。頼んでいたもの、持ってきてくださいましたか?」
     
    「ええ、持ってきたわよ。これ以外は、業者の人が明日持って行くのよね?」
     
    「はい。明日のお昼過ぎに業者が来る予定なので……申し訳ないのですが、対応をお願いします。」
     
    「分かったわ。……ねぇ、本当にこれで良かったの……?」
     
    「いいんです……これが俺の出来る最善……ですから。それはそうと……これ、明日の朝にでもCrazy:Bのメンバーか巽に渡して下さい。おや……もう電車が来てしまいますね……これに乗らないと間に合わないので、俺はこれで——」
     
    「……ねぇ、1つだけアタシのお願いを聞いてくれないかしら?」
     
    「お願い……ですか……?」
     
    「そう、——。ね、いいでしょ……?」

    「はぁ……まあ、それ位なら……その代わり、こちらからも条件があります——。」
     
    HiMERUを待っていたのは同室になってからと言うもの、互いの事について相談し合えるほどの仲になった嵐だった。
    嵐は頼まれていた物をHiMERUに渡しつつ、他については明日でいいのかと言う確認をした後、少し考え込むそぶりをしてから、本当にこれで良かったのかとHiMERUに問いかけた。
    その問いかけに対して、これが自分に出来る最善なのだと答えたHiMERUは、先ほど音声を吹き込んだ端末をCrazy:Bのメンバーか巽に渡して欲しいと嵐に託した。
    端末を嵐に預けたのとほぼ同じタイミングで、改札の奥から電車が到着する音が聞こえてきた。
    電車が来たからと、嵐に別れを告げようとしたHiMERUだったが、その言葉にかぶせるように嵐からとあるお願い事を持ち掛けられた。
    それに対して条件付きでその願いを聞き入れたHiMERUは、今度こそ嵐に別れを告げて目的の電車へ乗り込んだ。

    —Side.T
     
     去っていく背中を目に焼き付ける様に見つめていた巽は、HiMERUの姿が見えなくなってからもその場を離れられずにいた。
    本来の光を失ったかの様に虚な瞳でHiMERUが立ち去っていった方角を眺めていた巽の目に、よく知った顔が近づいてくるのが映った。

    「おや、巽くんじゃないか。……何やら、とても愉快な顔をしているね。」

    「英智さん……今は貴方と冗談を言い合う気分では無いので……放って置いてくれませんか……?」
     
    「うーん……本当に放って置いて欲しいのかい……?僕にはそうは見えないけど。」
     
    「……。」
     
    「はぁ……。仕方がないから、優しい僕が君の話を聞いてあげよう。……とは言え、ここでは誰かに聞かれてしまうかもしれないね……一先ず、星奏館へ行こうか。」
     
    巽の前に現れたのは、食えない笑みを携えたスタプロの代表で巽の上司と言っても過言のない存在、英智だった。
    巽の顔を見て珍しいものを見たと揶揄ってくる英智に対して、巽は冗談を言い合う気分ではないから放って置いてくれと淡々とした口調で伝えたが、英智に図星をつかれてしまい黙りを決め込んだ。
    そんな巽の様子に、ため息を吐きながら話を聞いてやると言った英智によって腕を引かれながら、巽は海岸を後にした。
     
    「さて……朔間さんは仕事で明日まで不在だし、白鳥くんにはさっき連絡を入れて別の子の部屋にお泊まりに行ってもらってるから……溜め込んでいるものを全て吐き出してしまいなさい。」

    「……本当は……HiMERUさんとの関係を終わらせたくなかった……別れるくらいなら、全てを投げ捨てても構わない——そう思っていたんです……。だけど……ALKALOIDを……俺を変えてくれた彼等を捨てる事だけは、どうしても出来なかった……。HiMERUさんとALKALOID……この2つのどちらかを選ぶことが出来ず……優柔不断な俺の所為で、最悪の結果になってしまったんです……。」

    星奏館の英智の部屋へ連れてこられた巽は、英智から部屋に自分しかいないから溜め込んでいるものを全部吐き出せと言われ、思いの丈をポツポツと話し出した。
    本当はHiMERUと別れたくなかったと語る巽の声色に普段のような覇気や余裕はなく、後悔と苦痛の色を滲ませていた。
     
    「君は馬鹿だね。革命児と謳われた風早巽の名が聴いて呆れる。」
     
    「ハハッ、酷い言われ様ですな……。」
     
    「かつての君なら、己の身がどうなろうと全てを救う事を諦めなかっただろう?それなのに……今の君と来たら、たった2つの存在を天秤にかけるなんて……どちらも、君にとっては簡単に切り捨てられる程度のものだったのかい?」
     
    「そんな事はありません。俺にとってはどちらもかけがえの無いもので……簡単に切り捨てられるようなものでは無かったんです。でも——。」
     
    「成る程……そういう事情が……だったら尚のこと、君はどちらも手放さない様に足掻くべきなんじゃないかな?忘れている様だけど……君達には、僕や七種くんって言う心強い後ろ盾があるんだから……最善を尽くさずに諦めるなんて、もったいないと思うよ。」
     
    「英智さん……ありがとうございます。明日、HiMERUさんともう一度話してみます。」
     
    「いいえ、どういたしまして。」

    巽の言葉を静かに聞いていた英智は、玲明学園の革命児が聞いて呆れると辛辣な言葉を投げかけ、巽にとってのHiMERUとALKALOIDは簡単に切り捨てられる存在なのかと問いかけた。
    英智からの問いかけに対して、どちらも簡単に切り捨てることなど出来ない程にかけがえのない存在だが、2人の状況がそれを許してくれなかったのだと、巽は事の詳細を英智に語った。
    巽から事の真実を聞いた英智は、自分やコズプロの副所長である茨が後ろ盾になるから諦めずに足掻けと巽の背中を押した。
    そんな英智からの叱咤激励のお陰で、巽はもう一度HiMERUと向き合う覚悟を決めた。

    ——しかしその翌日、巽は覚悟を決めるのが遅すぎたのだと痛感することになる 。
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