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    pduce1012

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    pduce1012

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    キスブラ♀

    ブ様だけナチュラルににょた、本当に微妙なR18描写アリ。
    一瞬ディが巻き込まれますがキスブラしかありません。

    Have a nice dream, darling.  ちゅ、ちゅ。
     湿ったリップ音が胸の辺りから聞こえて、微睡んでいた意識が呼び起こされる。重い瞼をなんとか上げると、そこに見えたのはくるりと軽快に跳ねた癖毛だった。ふわふわしたその毛は、ブロンドにしてはくすんでいて、カーキにしては柔らかい。日本食レストランで出されたわさびマヨネーズいうソース。それみたいな色だと私が言うと、少し困ったような顔をして笑っていた腐れ縁の同期を思い出した。
     「…キース?」
     今、私の身体の上に跨っているのは、まさにその男な訳だが。キースはエリオスの制服姿で、いつもだらけている胸元がさらにボタン三個分くらいはだけている。そこから覗く鍛えられた男の身体に、どうしようもなく違和感を感じた。
     「ん〜?」
     吐息混じりに答えたキースの指は、私の骨盤のうきでた骨をつぅっとなぞると、ショーツの紐にかけられた。どういう状況だ、これは。なぜ私は上半身裸なんだ。そして何故、貴様は私のショーツを脱がせようとしている。
     「おい、手を離せ、離れ…っ…!」
     状況を整理するため、離れろと言おうとした唇が、首に感じたしめった感覚に震える。キースが私の首筋に舌を這わせているのだと理解して、羞恥にカッと頬が熱くなる。キースとの距離感がさらに近づいて、私の襟足に荒い息がかかる。ゾワゾワと背中を走るこのこそばゆさの正体は、一体何なのだ。何もわからないのに、背中がのけぞってしまう。キースはピクピクと痙攣する私の背中を見て、満足そうに下唇を舐めた。馬鹿、私を見てそんな顔をするな。そんなとろけた甘い瞳で、見るな。
     「きもちい?」
     声まで、甘い。キースの低い声が体の芯を揺らすようだ。ただの同期の私たちが、何故セックス紛いのことをしているのだと聞きたいのに、甘い雰囲気に飲まれて瞳がぼんやりと涙でうるむのがわかる。おかしい、普段の私であれば、目の前の男を殴ってでも状況確認をしているはずなのに。
     「かわいいなァ、ブラッド〜。」
     キースは嬉しそうに言葉を零した。存外、この男の笑顔はあどけなくて可愛らしい。私がぐるぐると思考の渦に飲み込まれている間にも、キースの無骨な指はショーツの中に入り込む。
     「あっ、」
     キースの首筋に垂れる汗を見ながら、私は、
     
     
     
     「っ…!」
     ばち、と目を開けて見えたのは、いつもの見慣れた天井だった。周りを見渡す。エリオスタワーにある自室は、昨日眠りについた時と変わらない。窓から差す日光に、朝になっていたのだと気づく。自分の首筋にそっと指を添える。その肌は傷ひとつなくさらりと乾いていて、あの熱い舌の感覚も、あの甘い記憶も全て夢なのだと語っていた。
     「欲求不満というやつなのか、私は…?」
     ヒーローになってからは仕事一筋でやってきて、恋愛にも大人の遊びにも手を出してこなかった。そういった欲求を発散させる必要を感じたことも無かったが、これでも健全な成人女性なのだから、知らないうちに身体が求めていたのかもしれない。…だからといってどうすることもできないのだが。ふぅ、と小さくため息を漏らすと、身支度をするためにベッドから起き上がった。何故、夢の相手がキースだったのか。その疑問については深く考えず意図的に蓋をした。私は、あの男に何も求めていない。
     
     「キース!久々に相手してくれ!」
     執務室に向かう途中で、溌剌とした男性の声が廊下に響いた。ディノだ。朝から元気そうな声に、口元が緩んでしまう。少し様子を見ていくかと思い、トレーニングルームをグラスウォール越しに覗き込む。中には、エリオスのトレーニングウェアを着た二人のヒーロー。
     「めんどくせぇな〜…。一戦だけだぜ?」
     キースはため息をつくと、口に咥えていたタバコを灰皿に押しつけた。トレーニングルームは禁煙だ、馬鹿者。
     「ほら、こいよ。」
     キースは首をゴキ、と鳴らすと、ディノを挑戦的に見遣った。あぁ、キースのいつもの戦術だ。相手に先に攻撃させて、相手の出方から戦略を先読みする。そして見つけた戦略の穴だけを突く。めんどくさがりなキースらしい、無駄な労力を割いた戦術だが…効率的とも言えるそれは私も嫌いではない。ルーキーであれば、真っ向にキースにぶつかっていって軽くいなされていただろう。しかし、相手はディノだ。彼は全力投球で素直な性格とは裏腹に、攻撃にメリハリを付けるのが得意だ。キースだってそう簡単にディノの攻撃リズムは読み取れないのだろう。実際、決着はなかなか着かず、二人は攻防を続けている。
     「ふふ、」
     イキイキとトレーニングする二人の姿を見て、誇らしいような微笑ましいような気分になる。この光景が、ずっと見たかった。ディノのいない四年間の間に降り積もった雪が、春のひだまりに溶けてゆくような感覚。思わずこぼれた私の笑みは、耳の良い同期に聞こえてしまったらしい。
     「ブラッド!見てたのか!」
     一緒にトレーニングするか?キラキラ光る笑顔で、そう言ってディノがこちらに手を振る。その背後で、キースは少し疲れているのか肩で息をしながら、静かにこちらを見据えている。トレーニングウェアに包まれた筋肉質な体と、そこから伸びる喉仏が目立つ男性の首筋。そこに、一滴の汗が伝っていた。
     『きもちい?』
     突然に、昨晩の夢がフラッシュバックする。夢の中で私を抱いた男と同じ顔をしたその人が、目の前に立っている。筋が目立つその腕も、服の下に隠れた恵まれた肉体も、良く見れば整った顔も――どんな風に動いてどんな風に女を抱くのか、私は知ってしまった。咥内にじんわりと湧き上がる唾をこくりと飲み込む。どうか目敏いこの男が、気づかないでいればいい。
     「…いや、二人で続けるといい。私は会議があるので失礼する。」
     少し他人行儀だっただろうか。平静を装って、踵を返す。トレーニングルームから遠ざかりながら、開きかけたパンドラの箱の蓋を閉めようとひとり頭の中でもがく。厄介な夢を見たものだ。腐れ縁の男が、どんな顔で女を抱くのかなんて、知りたくなかった。…否、私は本当に知りたくなかったのだろうか?彼方の有名な心理学者は言った。夢は本能的な欲望の表れであり、潜在的な願望が表面化することもある、と。昔読んだ学術書の内容を思い出して、火照る体とは裏腹に頭は冷えるばかりだった。それでは、まるで私が――。
    「ブラッド!」
     背後から名前を呼ばれて振り返る。キースだった。
    「体調良くねぇの?顔色、悪いぞ。」
     キースは少し屈んで、私の顔を覗き込んだ。走って私を追いかけてきたのだろう、まだ息が上がっている。不器用なこの男の優しさが、今は煩わしくて悲しかった。キースが私のことをそういう目で見ていないことなんて、出会った頃から知っている。とある雑誌のヒーローインタビューで答えていた、嫌いなものの項目にある『口うるさいやつ』というのも私のことだろう。キースは、私のことが俗に言う「タイプ」ではないのだ。そんなのお互い様だと思っていたのに。それなのに、私は無意識にもキースを男性として見ていたのか。彼方の心理学者が正しいのなら、私はキースにあの溶けた瞳で、甘い声で、熱い指で触れてほしいと望んでいる。とんでもなく一方通行な欲望で、とんだ徒労だ。
     「…動くなよ。」
     キースは私のおでこに手を伸ばすと、優しく触れてみせた。キースの腕からふわりと鼻をくすぐる、煙草と汗の匂い。決して良い香りとは言えないのに、ぎゅっと胸が痛くなる。夢の中の貴様はこんな匂いがしなかった。やはり昨晩のあれは、私の脳が作り出した幻想なのだ。夢には限界がある。きっと私は、この男がどんな風に恋人に微笑むのか、何度夢を見たって知りきれずに終わるのだろう。私の額に触れたキースの掌。これが、ただの同期に許された距離感。現実で私たちがこれ以上近づくことはない。
     「やっぱりちょっと熱いんじゃねえ?今日は休んだ方が…。」
     眉を顰めたキースは、最後まで言葉を言い切らなかった。 
     「ブラッド、お前…何でそんな顔してんだ?」
     「どんな顔だ。」
     「言わせんなよ…まぁ…エロい顔?」
     馬鹿者。あまりにストレートな物言いに、キースの肩を勢いよくこづく。いで、というキースの情けない声は無視した。
     「気のせいだ。退け。私はもう行く。」
     「そう簡単に行かせる訳ねぇだろ〜。」
     キースは愉快そうに笑うと、私の目の前に立ちはだかってみせた。この男はこういう所がある。私が調子を乱すと、すぐ面白がって突っかかってくるのだ。さっきまで感傷に浸っていた私が馬鹿みたいだ。
     「久々だったもんな?」
     私の気も知らないキースの口から発されたのは、予想外の言葉の羅列だった。
     「さっきトレーニングルームでディノのこと、随分熱心に見つめてたじゃねぇか。」
     「四年ぶりに好きな男のトレーニング姿見て茹であがっちゃうなんて、オマエも可愛いところあるんだな〜。」
     「なぁ?」
     スラスラと軽薄に綴られるキースの言葉。加虐的に光るグリーンの瞳を見て、それを理解できないほど私も馬鹿ではない。嘲られている。そして皮肉なことに、キースが言っていることは大体当たっていた。対象が間違っているだけだ。
     「そうだとしたら、何だ。私が誰かに欲情していたとして、貴様に何の関係がある?」
     冷えてゆく頭で、毅然と返したのは精一杯の強がりだった。私が誰かに欲情していたとして、貴様に蔑まれる道理はないはずだ。…夢に見たって、迷惑はかけていない。
     「関係ねぇよ。ねぇけど、ディノが好きならオレに言ってくれても良いじゃねぇか。」
     情に厚いこの男らしい理由だと思った。頼られないことに拗ねていたらしい。馬鹿らしくて自嘲の笑みが漏れる。結局、意識しているのはどこまでも私ばかりなのだ。どうにでもなれと思った。
     「貴様だ。」
     「え?」
     「私が欲情していたのは貴様だ、キース。貴様に抱かれる夢を見た。」
     貴様が欲した私の本音だ。これで満足か?笑うなり薄気味悪がるなりすればいいと、自嘲気味に白状した。お前も私を意識すればいい。それが私と同じ気持ちでなかったとしても。そう諦めの境地にいるのに、目の前の男の顔を見上げられないのは、私が臆病なのだろうか。しばらく経つと、キースはあーとか、うーとか、変なうめき声を上げ始めた。私が貴様をそういう目で見たことがそんなに嫌だったのか?失礼な奴だ。最後に一発小突いておこうかと睨みあげると、キースは顔を両手で覆いながら突っ立っていた。両手で覆いきれていない耳が、真っ赤に染まっているのが見えた。
     「…オレはお前を抱く夢を何度も見たことがあるって言ったら、どうする?」
     指の間からちらりと除いたグリーンの瞳は、夢で見たそれよりもみずみずしく甘そうで、美味しそうだった。
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    pduce1012

    TRAININGキスブラ

    付き合ってます。
    ストロベリームーン 『今日の二十時、セントラルホテル四十階のレストランで。到着したらレセプションで俺の名前を伝えるように。』
     時計がもうすぐ十九時を回る頃、恋人から届いたのはたった二行のメッセージだった。半月ぶりのデートの誘いとは思えないほど素気ないそれは、もはや召喚命令に近い。仕事終わりにパブに向かっていたオレは、メッセージを読むなり方向転換してセントラルホテルに向かった。結局、暴君サマの命令に従ってしまうくらいには、オレもお前に会いたい。
     
     デートの誘いに浮き足立って直行したはよかったが、ホテルのロビーに到着した途端に自分の過ちに気が付いた。あ、ここ仕事着で来ていい場所じゃねぇわ。いくらエリオスの制服がタイ付きといっても、上品にドレスアップした紳士淑女に囲まれると流石に場違いだ。あの育ちが良い御坊ちゃまが選んだレストランだということを完璧に失念していた。しかし、腕時計はすでに八時少し前を示している。あぁ、またブラッドに小言を言われるのだろう。久々のデートの時間が減ってしまうよりは小言を言われた方がマシだと自分に言い聞かせて、オレはエレベーターに乗り込むと、四十階のボタンを押した。
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