きっかけは、珍しく俺が彼の背後を取れた時、その首筋に迸った紫の光が不思議と目に焼き付いてしまっただけなんだけど。
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「今日はやけに溜めに拘るね、そんな冗長な構えで僕が隙を与えてあげるとでも?」
大きく弓を引いて、十分に水元素を集めた矢を満を持して放ち華麗に外して数回目。空間を雷光のように駆け鮮やかに躱していく散兵は、突然間合いを詰めるなり俺の弓を片手で掴んで嘲るように笑った。
「さっさと剣を持ちなよ。こんなもので僕に勝とうだなんて、全く随分舐められたものだね」
ミシ、と俺の弓から嫌な音が鳴る。
ちょっとムカついたくらいで、そんな簡単に俺の弓を折ろうとしないで欲しい。
「勝つのも勿論そのつもりだけど……今日はもう1つ、個人的な目的があってね」
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