槇炎柱にずっと想いを寄せていた直属夢隊士の話炎柱が結婚をするずっと前から好意を抱いていた
私は炎柱からしたらただの部下に過ぎない
この気持ちは伝えてはならない
炎柱の奥様は美しくて聡明でとても炎柱に合っている
奥様が亡くなられてから彼は変わってしまった
任務にお酒を持ち込んでくるようになり
それに揶揄を飛ばすものには掴みかかり罵声を浴びせる
私の知っている炎柱ではない
人はこんなに変わるものなのだろうか
今日は飲み過ぎだ
任務こそはこなしていたが藤の家まで持つだろうか
そんな心配をしていたら道端で倒れている炎柱を見つけた
…やっぱり…
炎柱!起きれますか⁉︎…反応が無い…脈拍は早いが中毒症を起こしているわけでは無さそう。
隠を呼ぶほどではない。藤の家までそう遠くない
担いで運ぶ
ふと鬼殺隊に入ったばかりの頃を思い出した
私は怪我をして炎柱が担いで運んでくれたな…あの時は怪我の痛みと不安で仕方なかった私に『大丈夫だ!』と明るく微笑みかけてくれた…あの笑顔が当時の私には大きな救いだった…
まさか私が担ぐ側になろうとは…
横を見ると炎柱の綺麗な横顔がある…なんだか緊張してきた
普段こんなに近くで見ることがないから…見て…いいのかな…
自分の心臓の音がうるさくて…それでも見てみたかった…
…心臓がさらに跳ねる
まつ毛が長い…なんて綺麗な顔立ちなのだろう…遠くから見るのと違う
目を閉じて唇が半分開いている…
いけない気分になってきた…
お酒のせいだとはいえ、あの気配に敏感な炎柱が起きないのだろうか?
お願い…起きて…
でないと貴方の唇に触れたいと邪な気持ちに支配されてしまう…
触れた…い…
そんな自分の中で葛藤をしている間に藤の家についた…
内心ほっとしたような…
惜しいことをしたような…
こんな考えをしてしまった自分にとても呆れた
炎柱を寝床へ運ぶのを藤の家の方に手伝ってもらった
念の為明日、医者を呼んでくれるらしい。
私は湯浴みに行こう
湯を終えて炎柱の様子を見にきた
よく眠っている…
こんなに起きないものだろうか?
いつも忙しく動き回っている印象だったから動かないとなんだか…
心配になる…
炎柱‼︎炎柱‼︎声が聞こえますか⁉︎炎柱⁉︎
風呂上がりの髪が炎柱の頬に触れた瞬間ピクリと炎柱の目が覚めた
炎柱‼︎良かったです!お身体に異変はありませんか…
次の瞬間炎柱は私に覆いかぶさった
私は驚いて声も出なかった…
炎柱が私の着物の中に手を入れる…
⁉︎…硬派な炎柱がこんな事するはずないっ‼︎
その理由は…すぐに分かった
瑠火…
‼︎亡くなった奥様と間違えている⁉︎
お酒の匂いが濃い…
お酒に溺れて亡くなった奥様を忘れられない…思考が鈍る中、私を奥様と間違えるほど奥様の死を受け入れられてないんだ…
行為はどんどん進められていく…
私は止めることができなかった…
だって…奥様を想って触るその手が…とても優しい…
貴方が覚えていたらきっと後悔する…
そして私は貴方の近くには居られなくなる
それでも…
止める理由なんてないんです…奥様を想っていてもいいんです
一度だけでも…繋がれるなら…
一度だけでも…この好意を吐き出せるのなら…
貴方のことをずっとお慕いしておりました…槇寿郎様…
声にならない吐息の様な声でこの気持ちを吐き出した
声を出してしまったらこの夢から覚めてしまうと思ったから…
行為が終わって炎柱はまた眠りについた…
今までお近くで鬼殺が出来たこと光栄でした
ありがとうございました
朝日が登る前に私は藤の家を出て鬼殺隊を辞めた