楽怒 看病可楽
病気になると気が滅入るとはよく言うけど、まさにこの事。
うう…ダルい…気持ち悪い。誰か助けてくれ…
可楽は昨日の夜遅くから発熱してしまった。嘔吐を繰り返すし汗は出るし発熱による関節痛もあるし…死にそうだ。
あーなんで他の兄弟は平気なんじゃ…儂だけ変なもの食うたか?いや、みんな同じ食事だし…
そういや昨日隣の席のやつが咳き込んでたな…伝染されたか…?
なんてことを熱が上がった頭で考える。
こんな状態では学校も当然行けないので、今日は一人で家で療養だ。空喜、哀絶、積怒はそのまま学校に行ってしまった。
うう…寂しい…こんな状態に一人でいるのがこんなに辛いとは…だるい…
意識も朦朧とするし、泣きたくもないのに涙も自然と出てくる。
「うぅ…せきどぉ…助けてくれぇ…」
思わず声に出して呼んでしまったのは好い人の積怒。2人は兄弟だが付き合っていて、そういう関係である。
積怒も同じく学校に行ってしまったので、今居ないのだが…
つらい…せきど…
ガラッ
「なんだ、起きていたのか可楽」
「…っえ?せきど?なんで?」
今しがた恋しさに呼んだ兄兼恋人の積怒が扉から入ってきた。え?お前学校は?これは夢?
「夢じゃない、阿呆が。風邪に効きやすいものを色々買ってきたのだ」
「買ってきたって…学校は?お前、皆勤賞狙ってたじゃろ」
「そんな事どうでも良い。さすがに高熱のやつ一人で家に置いていくほど儂も鬼では無い。憎珀天を学校に送ってそのままドラッグストアに行っていた。空喜と哀絶は学校に行かせたが。
…遅くなって悪かった」
え…積怒が謝った…!俺たちを怒るばかりで(怒らす儂らが悪いんじゃが)謝ることなんて身内にもそうそうないあの積怒が…!
積怒のそう見せない優しさに(普段も厳しい口ぶりでも中々兄弟には甘いところもあるんじゃ!)可楽は緩んでた涙腺と体調不良による心ぼそい情緒が決壊した。
「う゛ぅ…せきどぉ〜〜〜熱がつらいんじゃあ〜〜〜助けてくれぇ〜〜」
「分かった分かった…まずは水分と、食欲あるならなにか入れた方が良い。食えそうか」
「おかゆ…食べたい…」
「味は?」
「たまごぉ…」
「分かった。作ってくるから寝て待っていろ」
「いやじゃ…離れとうない…せきど、寂しい」
「…全く。厚着して、毛布も持ってこい。リビングのソファで横になってろ。そこなら台所と近いじゃろ」
…や、やさしっ!
いつもなら絶対「風邪を治さない気か!寝てろ!!」とか言いそうなのに!
風邪の情緒決壊とは別に、積怒の優しさに感動して泣きそうになる可楽であった。
積怒のいうとおり、厚着をし毛布を体に巻き付けてズリ…ズリ…と階段を降りる。
すでに積怒は鍋に火をかけていて、トントンとリズミカルに包丁を動かしていた。
儂の恋人…かっこよ…
こんなに顔良くて、料理上手くて、可愛いやつ他におるか…?いや、いない
儂…めっちゃ幸せじゃん…
「できたぞ。食えそうか?」
なんて考えながら積怒の背中をボーッと見ていたら、どうやらリクエストしたおかゆが出来たらしい
「せきど。食べさせて」
さすがにキレるか?
「…今回だけだぞ」
まじか!!!
積怒はレンゲにすくったおかゆを少しフーフーしてから可楽の口元に運ぶ
「ほら、可楽」
発熱最高か…?積怒のフーフーを間近で見れるとは。
別の意味で熱が上がりそうじゃ
「…あーん」
「熱さ大丈夫か?」
「うん、大丈夫、美味い。さすがせきどじゃあ」
「これを食べたら薬飲んで寝るんだぞ」
「うン…わかった」
雛鳥のように積怒にひょいひょいおかゆを口に運んで貰って、おかゆは完食した。腹が減ってたと言うよりは、積怒があーんとふーふーしてくれるのが嬉しすぎてそんな積怒をまた見たい、また見たいとやってたら全部食べ終わってしまった。
あーん&ふーふー積怒見れるなら儂ずっと熱でいいしおかゆで良いわ。
「薬も飲んだし、ソファでは寝づらいだろう。儂も部屋に行くから、ベットで寝るんだぞ」
「わかった…せきど、ずっとそばにいて」
「…近くにいるから、部屋に戻るぞ」
部屋に戻って、儂はベットに横になる。
積怒はベットのすぐ近くにテーブルを持ってきて、教科書やノートを広げ始めた。自習する気か。どこまでも真面目なヤツめ。
「ここにいるから、お前は寝てろ」
「うん…なあせきど」
「なんだ?」
「…手、にぎって」
「…ん」
積怒は左手を伸ばし、可楽と恋人繋ぎのように握り合わせる。
積怒は左手を可楽と繋ぐと、空いている右手でそのままカリカリとシャーペンを動かして勉強し始めた。
片手で教科書抑えにくくて、勉強し辛いじゃろうに…積怒のやつめ
あぁ〜やさしい…すき…せきど…すきだ…
「可楽、別の教科書を取りたいから、1度手を離していいか」
積怒がこちらを見ないまま、書く手を手を止めないまま尋ねてくる
「だーめ」
「…」
積怒はすこし渋い顔をしたが、そのまま身体を最大限傾けて通学バックから教科書を取り出す。
もちろん左手は少しでも可楽と繋げられているように触れたまま。
そしてまた自習を始める。
「せきど…」
「なんだ?」
「ありがと…がっこう、行かないでそばにいてくれて…
儂、すごい心細くて…せきどがいてほんと良かった…」
「…」
「せきど…すき…すきじゃあ…大好き…」
「…すー…すー…」
「…やっと寝たか。全く。…儂も」
好きだ
儂は、積怒の重要な返事を聴き逃して寝てしまったような気もするが、全快したので良しとした。
…いや、良いのか?!