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    もんじ

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    もんじ

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    CFSC『暗黒の水晶』

    ##TRPG

    海底に沈むもの前に、カオスフレアやってた時に書いてたブツを加筆修正したやつ。自己満足。
    当時、PC2だった私は「PC1大好きなキャラ作ろうぜ!」と思いつつ作成したら、実プレイでは何でも海に沈めたがるとんだ狂犬野郎だった。という思い出が強く残っている。


    河の畔は、いつにも増して賑わいを見せていた。どうやら、地上でまた戦があったらしい。服装や様相にバラつきのない辺り、内乱なのだろう。
    ここは、幾人の死人が列なす冥府の河。自分も他の者もまた、淡々とそれらを船で向こう岸へと渡す。
    それらの中には未だ自身の「死」を受け入れられず、たまに抵抗を見せる。だが、それも一時のものだ。
    だがそれも、河を渡れば全て忘れる。そう、自分のように。
    向こう岸は死者の国、陸続きの冥界、アラドゥス。そして自分たちは、死者たちの橋渡しをする冥府の渡し守(バルカリス)。
    自分もまた、それらと同じく死人だ。全てを忘れ、成仏するまでの時間を渡し守として死にながら生きながらえている。
    そして何の因果か知らないが「カオスフレア」となった。自分はただの戦を求める悪鬼でしかないのに。
    きっと、自分は生きていた時は血染めの修羅だったのだろう。でなければ、こんな贖罪の日々は送っていないのだから。渡し守をして、幾年経ったか幾百年経ったのか、それすらも危うい。
    そうして、最後の一人を船に渡すため手を取った。その時、何故だか「見つけた」と思った。
    彼の翡翠の瞳が、あの蒼海と同じになってしまった自分の瞳を見つめる。途端に、胸の奥底から何かが沸き上がるのを感じた。ずっと前に、海底に沈めてしまったものが浮上してゆく。その不思議な感覚に、額に汗が滲んだ。
    「あんた、名前は」
    「    」
    その答えを聞いた途端、手を引いて歩き出していた。向かうのは、向こう岸ではない。
    他の者が何やら騒がしくわめく。それも、最早関係なかった。握りしめたこの手は、決して離すことなどできなかった。
    「……お前、は」
    懐かしいような声だった。疲弊し、すり切れたようなその声でも、きっと自分には覚えがあった。
    「オレは──、オレはお前の死神だ。でも、今はその時じゃない。だから連れ戻す」
    自分に言い聞かせるように、そっと言葉を紡ぐ。彼の手を引く反対の手に、己の武器である櫂を出現させる。それを振るうと、海が現出した。
    これは己の中の海。それを引き出し、現実へと干渉する。それが海を使う者、海使い(エクソシア)。
    海は時に守り手となり、時に牙をむく。
    「──グランフォール」
    海は河を飲み込み、海は地を沈めてゆく。ここにあった冥府の河は、海へと沈んだ。もう、元へは戻れない。もう、あの深海へは帰れない。
    海と同時に現出させたゴンドラに揺られ、現世へと舵を切る。そっと彼を横目に見やると、翡翠の瞳がこちらを捕らえていた。
    ──ああ、それはなんて懐かしい。

    雨が身体を打つ。フレアで構成されたこの仮初めの身体は、あまり寒いとは感じなかった。
    辺りは屍で溢れており、戦場特有の臭いが鼻についた。そんな中、彼はそっと息を吹き返した。膝に掛かる重さが、確かに彼を感じさせた。彼は幾度か瞬きをすると、あの翡翠の瞳でこちらを見据えた。
    「初めまして、オレはスティクス。……最初に宣言しておく、オレはこれからあんたについて行く。どんなに拒否したとて無駄だ」
    何せ、命の恩人だからな。そう付け加えて、彼の頬をそっと撫でた。
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