死ぬならこんな灰色の日がいい。繰り返し、繰り返し、寄せては消えていく波の音を聞いていた。
誰かが歌っていたかのような美しい青白い色じゃない。曇天をそのまま写したかのような灰色。吹き付ける海風は肌を刺すようで。吸い込む空気は潮の匂いが混じった不純物のように纏わり付いてくる。だというのにどこかカラカラと乾いていて、どこか不快で、どこか心地良かった。
しばらく遠い灰色の境界線をぼんやりと眺めていた南風原がぽつりと呟いた。「死ぬならこんな日がいいね」と。それには何も答えずに、彼と同じ方向を見た。どんよりとした雲が広がっている。やけに、空がいつも見るよりは狭い気がした。生きる予定は何もないくせに、こうやって死ぬ予定は決まっているのだ。可笑しな関係だ。
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