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    悠木(餅)

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    悠木(餅)

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    あの人と会う前のお話
    晞視点

    家出少女ㅤ能力は本当に必要なものなのか。でもこれは私たちが望んで身につけたものじゃない、私たち人間のせいでは無い。それでもこういう力があるせいで利用される人やする人、悪事を働く人、沢山の人が出てきたと思う。家にいた頃はよくニュースを見てたっけ。でも今はそんな平穏な生活を捨てて1人途方に暮れている訳なんだけれども……
    ㅤいうなれば今の私はホームレスというやつだ。私の能力を利用して賞賛を浴びる親が嫌になってつい飛び出した結果がこれだ。親が私に入れていた貯金も使えなくなる前に全部卸して少し多めの荷物を持っては数日間店で泊まったり外で寝たりと転々としていた。

    ︎︎ㅤこんな時にでも不意に夢のように誰かの過去を見てしまう。数十年と付き合ってきたこの能力でも発動条件はいまだ分かっていない、ただ私は誰かの過去を見る。その内容は私が選べるものではなく、どういう基準で見せられているのかもわからない。平穏で穏やかな幸せな日常風景から誰かのトラウマ、暗い過去……実際問題前者のような記憶を見ることは稀なようにも思える。仕事への不満、人間関係への思い、どれも幸せとは言い難いどこか強く不満を抱いているような感情が過去の記憶から読み取れる。……正直疲弊するばかりだ。
    「あ〜……、気分が沈むぅ〜…………」
    コントロール出来るようになればこんなに疲れることもないのに。勝手に流れてくる情報に頭が痛くなる。能力で得た過去の情報は私の意思関係なく積まれ読み込まれていく、過去に暴走した時こそ情報量の濁流に耐えきれなかったのだろうそれからの記憶はすっぽり抜けていて親から話を聞いた時は恐怖で冷や汗をかいたのを覚えている。暴走は、怖い。自分の能力に対して恐怖心が縫い付けられた感覚は今も健在だ。私はこの力が嫌いだ。
    ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ*

    ㅤ今私は追いかけられている。相手は男、過去の記憶から断定してヴィランと呼ばれる存在だ。切っ掛けは私と男の目が合ったこと、私が相手の過去を見てしまって反応を見せてしまったこと、相手の能力はわからないけど目を見開いてこちらを見ていた。こうして追いかけられてるということは私も同じ顔をしていたのだろう、失敗した、と思いながら路地の中を駆け巡った。ただただ自分を追いかけてくる足音と息が切れる音だけが妙に響き渡る。​───捕まったら殺される​─────そんな嫌な確信を持ちながら体力が切れる前に廃墟のような建物に逃げ込んだ。
    「通報は……出来ない。ここら辺に人がいるとは思えないし、どうしよ……。とりあえず抵抗しないと殺される……武器、武器を探さないと……っ」
    ㅤ息を切らしながら必死に建物の中を逃げ回りつつ探し回った。瓦礫、廃材は多いが自分の身を守るには心許ないもの、振り回すのが困難なものばかりで難航していた。こうしている間でも相手は自分を探している。このままここで撒いて逃げるのも策だがリスクが高すぎる。この建物の構造がわからない中で逃げ切れる可能性は低く思えた。そんな思考を巡らせる中、視界の端に捉えた物を見つける。
    「……バールだ……!これなら……」
    抵抗することが出来るかもしれない。バールを両手に持ちそんな淡い希望を持った最中、夢中で気づかなかったか近くで足跡が聞こえた。バッと振り向くとそこにはあの男が息を切らしながらこちらへ歩いてくるのが見える。追い詰めるかのようにゆっくりと距離を縮めてくる歩に一気に緊張感と恐怖心がこみ上がり心臓が五月蝿く脈を打つ。じりじりと詰められる距離に対して後ずさる、逃げないと、必死に私は相手に背を向けて走り出した……が逃亡劇はそう長くは続かない。腕を強く捕まれ酷く抵抗したが力の差はこちらが圧倒的に負けている。空いていた隣の部屋に投げ込まれた。
    ㅤ本格的にこれはヤバいと必死に体勢を立て直すが気づけば相手は目の前にいて私の身体を蹴り飛ばした。痛くて苦しい、それでも立たなければ、逃げなければ死ぬと必死に身体に力を入れる。相手は少し驚いてるようだが目つきが鋭くなり私でもわかる「殺意」を向ける。頭の片隅で彼の能力が攻撃系統でないことに安心していたがもうそれどころでは無いのだ。まだ武器は自分の手にある、まだ、まだここで終わるわけにはいかない。

    「ほら来いよ。僕を殺さないとお前が隠してきた情報もばら撒かれ放題になっちゃうよ?」

    ㅤ分かりやすい挑発をすると相手は乗ってきた。いや、元より私を殺す気でいるから挑発も意味もないのだろう。でもこうでもしないとこの武器は相手に当たらない、あとは自分の運動神経を信じることしか出来ない。相手には武器が無さそうだ、強く握られた拳を奮わんと地を蹴った。​───────ここで私の生と死が決まる……
    ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ*

    ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ息を切らす音が部屋の中で静かに響く。無我夢中であったがなんとか相手を沈黙させることに成功したが、同時に己の手を犯罪に染めたのだ。ただ自分は利用されるのが嫌で家を飛び出してきただけなのに、微かに手が震えている、未来への恐怖か緊張の糸が切れ安堵したからか、今の冷静さを欠いた自分には分からなかった。
    ㅤ暫く放心した後に、目の前の死体の処理に悩み始めた。勿論人を殺したのだって初めてで、いくら必死だったとはいえ……と考えるも、相手の能力によっては自分が殺されていたのかもしれないと思うとゾッとする。そうだ、私は運が良かったのだとここで実感するなんて……。
    「……………………はぁ……。死体……死体処理……うーん、なんか無いかな……調べて出てくるもの?うーん……」
    ブツブツと言いながら充電が少ない端末を弄ると1つの項目が目に入った。これなら、なんとかなるかもしれない。藁にもすがる思いで情報の真偽を考えず記載してある番号にかけた。意外にも相手が出るのが早くて1コールで出てくれるとは思わず慌ててしまった。
    「あ、す、その……!…………頼みたいことがあって…………───」

    ㅤちょうど近くにいたのか足が早いのか、連絡した相手は思った以上に早く来てくれた。部屋の入口付近から足音がする、でも不思議と恐怖はなく振り返ると全身黒服を纏った長身の男が立っていた。

    「死体処理、手伝ってくれない……?」




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    悠木(餅)

    DONEあの人と会う前のお話
    晞視点
    家出少女ㅤ能力は本当に必要なものなのか。でもこれは私たちが望んで身につけたものじゃない、私たち人間のせいでは無い。それでもこういう力があるせいで利用される人やする人、悪事を働く人、沢山の人が出てきたと思う。家にいた頃はよくニュースを見てたっけ。でも今はそんな平穏な生活を捨てて1人途方に暮れている訳なんだけれども……
    ㅤいうなれば今の私はホームレスというやつだ。私の能力を利用して賞賛を浴びる親が嫌になってつい飛び出した結果がこれだ。親が私に入れていた貯金も使えなくなる前に全部卸して少し多めの荷物を持っては数日間店で泊まったり外で寝たりと転々としていた。

    ︎︎ㅤこんな時にでも不意に夢のように誰かの過去を見てしまう。数十年と付き合ってきたこの能力でも発動条件はいまだ分かっていない、ただ私は誰かの過去を見る。その内容は私が選べるものではなく、どういう基準で見せられているのかもわからない。平穏で穏やかな幸せな日常風景から誰かのトラウマ、暗い過去……実際問題前者のような記憶を見ることは稀なようにも思える。仕事への不満、人間関係への思い、どれも幸せとは言い難いどこか強く不満を抱いているような感情が過去の記憶から読み取れる。……正直疲弊するばかりだ。
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