転生AU宋暁哀しい夢を見る。
哀しい、苦しい、否、そんな言葉では表せない。
目覚めた時にあれは夢だったとひどく安心するような。
けれど夢ではないことも知っている。
遠い、遠い過去の記憶。
新たな生を受ける時、本来なら置いて来るはずのもの。
宋嵐はそれを抱えたまま生まれて来た。
ただひとりと巡り会う為に。
☆
「そう言えば子琛、以前話してくれた変わった夢はまだ見ている?あの物語のような」
宋嵐のことを親し気に子琛と呼ぶ友人は、久しぶりに顔を合わせると絵本の続きを強請る幼子のように言った。
「え、ああ、いや……」
「もう見てないのか?冒険譚のようで面白かったのに」
初めてその夢を見た時、漫画や映画の主人公にでもなったようで幼馴染である彼に話して聞かせた。本当に夢だと思っていたし、痛快で面白かったのだ。その時はまだ悲劇の始まりとも知らずに。
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