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    kky_89

    @torey98_

    @kky_89

    トリイ・ガク。パスワードは勘でといてほしい。

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    kky_89

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    旅する宋子琛に関する怪文章
    好評だったら手直しして支部に入れるなりネップリ入れるなりします。

    #宋暁
    songZhiZhi

    とにかく前向きな宋嵐【雪渡】

     宋子琛道長が義城を出てさいしょにむかったのは町からそう離れていない水飲み場だった。かつては街道が敷かれ、人の往来もあったのだが、義城が廃れてからの数年間人が寄り付かないばかりか積極的にそんな町があったことを忘れさせるように街道が架け替えられ役目を終えた。
     宋道長は水飲み場や休憩のためのあばら家のわずかに残った基礎部分の近くをうろうろと注意深く歩き回り、やがて双眸を川に面する林へと向けた。
     花崗岩を多く含む落石は木漏れ日を受けてときおり乳白色にきらめき踏み入る者の目をくらませる。宋道長も迷いの森の誘惑に抗うように一歩一歩と歩を進め朽ちた大木のウロで足をとめた。
    「みつけた」
     と音のない唇がつぶやく。
     彼は大木の前に膝を着き生い茂る草をむしりとると注意深く薄暗い穴の中へ両手を差し込んだ。結わえることも忘れた髪が頬を滑り毛先が泥に汚れる。が、彼はそれに気づいていない。引き抜いた両腕には朽ち果てた衣服と干からびた遺体が抱かれていた。
    彼女の名前を道長は知らなかった。
    彼女も宋道長の名前を知らぬままだろう。名前を名乗ることすらわすれていたのだから。仙門公子たちがそう呼んでいたからようやく彼女の名を知ることが出来た。
     一度、にど、彼の喉が小さく震えたが結局声はでない。
    「すまなかった。おそくなった」
     そう伝えたかった。
     悪党の手によって目を潰され舌を抜かれた彼女は肉体を抜け出し、生きているとも死んでいるとも言い難い状態で長く義城に縛り付けられていた。彼女自身は公子たちの手で手厚く弔われたが、置き去りにされた肉体がどこにあるのかはいまや宋道長しか知りえないことだった。いや、宋子琛自身も霊識を奪われとぎれとぎれの朦朧とした視界でしかこのことを覚えていなかった。
     彼は悪党を退治してくれるのか、と声を弾ませた少女にかけるべき言葉を違えた。はやく家路に付け、とそれではいけなかった。盲目の道士を連れて一刻も早くかの地を離れるよう伝えるべきだったのだろう。負けるはずがないという傲りがあったのだろうか。憎しみにとらわれ視界を失っていたのだろうか。いずれにせよ、後悔後絶たず、だ。深い悲しみが宋子琛に残された気高い魂を染めあげてゆく。
     
     日の当たる、風の気持ちの良い場所に小さな亡骸を埋めると彼はしばらく次の行き先を思案した。
     自身の時間だけが止まったまますでに10年近い年月が流れている。郷里も身寄りも破壊され、きっと見知らぬ人々が新たな営みを築いている。たとえ旧知がいたところでこの身の上では会うことはままならない。
     しばらく思案して、宋道長は過去をたどることをやめた。凶屍は怨霊の一種だ。怨霊は過去の無念をくりかえし、くりかえし反復し自らの魂を傷つけながら執着を増やす。そうして肥えた憎しみや怨みや怒りが強烈な陶酔をもたらし一瞬にして理性を奪い去る。
     まだ見たことのない土地を探すことすら今はすべきではない。それは志しを共にする友と語らい歩んだ過星を懐古するにほかならない。そうして幸福な記憶のあとに血にまみれた呪わしい記憶を連れてくる。この体はそういうものなのだ、と宋子琛はすでに理解している。
     瞭望台も仙門も有力な道閣や社寺のない土地を巡ろう。戦火に踏みにじられた土地を巡ろう。風水の悪く地力に乏しい土地を巡ろう。さいわいこの体は邪気にすこぶる強いうえ、食料も寝床も必要としていない。得られた資源をすべて貧しい人のために与えることが出来る。これ以上悪いことなど起こりようがないのだと奮い立つ宋子琛の心が三つ並んだ影を次の場所へと運ばせた。
     


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    kky_89

    TRAININGRKRN 夢小説 文×夢♂
    夢主=同級生設定 セリフあり 名前・容姿無し
    オリジナル同級生でもいいような気もしたけどそれなら夢小説と言い張る。
    文次郎に困り眉させたい。困り眉させるだけさせて自分は自分の道をゆきたい。

    学園に対する現状の解釈。
    https://wavebox.me/wave/1hk5yfe9ttwwns9q/ ←いいたいことはここに投げると吉
    「きみ」が早期卒業するまでの47時間【一寸の光陰】

    郷里の便りを受け取ってからの君の行動は素早かった。
    便りを見たのは梅の去り桜の至らぬこの季節に最後の斜陽が射す時分だったが、読み終えるやすぐさま内容を学園長に知らせ承諾を得ると、長く伸ばしていた髪を大人らしく切り揃えた。
    翌日、図書室の本と学校の備品はすべて返し、小綺麗な私物を髪と一緒に売り払った。僅かでも急ぎ金が必要になったとはいえ、まともに値がついたのが選りすぐりの品々よりも仙蔵への対抗意識だけで手入れをした髪だったことにどこかさみしく感じた。世は無情だ。
    量は減ったがそれでも、5年間集めたガラクタを広げると一人になったばかりの部屋がいっぱいになった。
    こういう光景はなにも珍しいことではない。3年生から4年生に進級するときには同級生の半分以上が就職、といっても家業に戻った、が決まって学園を去り、その形見物を君も受け取ってきた。先月も同室相手の私物をほとんど丸ごと受け取った。もうすこし長くいるつもりだったが思いのほかことが早く進んだ。それだけのことだ。
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