ハメ撮りマハ「名前は」
「……三途春千夜」
「歳」
「来年27」
「初めてはいつ」
「童貞ですか?処女の方?」
「処女」
「13歳」
「まじ?」
「マジ。何か……彼奴の知り合いだっつうオッサン来てオレが大人しくしなきゃ色んな人に迷惑掛かるよって」
「あー……」
「まぁ。今じゃオレがそのオッサン側なんすけどね」
ワハハ。と、三途の笑い声がマイキーの持つカメラに収められていく。
佐野万次郎ことマイキーは激怒した。
必ずかの糞馬鹿ヤク狂いセクハラ盗撮魔の部下をキツく躾けてやらねばならない。
マイキーは反社会的組織に身を置く以前より、抱えた衝動性故に碌な人生を歩まない事は良く理解していた。しかし。とはいえ。人間として最低限持つべき羞恥心や矜持まで捨てたわけではないのだ。排泄はトイレでするし、食事もテーブルへ向かう。セックスだって密やかに行っていたにも関わらず、突如会議中プロジェクターに自分が腰を振っている姿が映し出された。画面上の己が組み敷いていた相手は三途だった。画面に映る配分がマイキーの方が多く占めていた事、元々三途は何かと理由を付けてマイキーの写真を勝手に撮る悪癖がある事とで、瞬時に盗撮犯の正体をその場に居た全員が察す。
常なら口酸っぱく電子機器の取り外しに言及する九井がすぐさまデータ破損の危険も顧みずプロジェクターとパソコンの電源を落としてくれた。重たい沈黙の中、あの灰谷蘭に年長者面でそっと肩を優しく抱かれ慰められたのだから、いっそこの場で舌を噛み切ってしまおうかと思った程だ。
不在だったのは竜胆と望月、ハメ撮り動画を撮ったであろう当の三途本人くらいで、普段なら集まりの悪い他幹部陣はこういう時に限ってしっかり会議に出席していた。三途の部下が「渡すUSBが違ったみたいです」と言いながら入室してきたので、腹いせに肩を一発殴り証拠品としてハメ撮りUSBを押収し、会議の方は無事に進行出来た。その後、虚無顔で退室するマイキーに明司が「弟がスマン」と申し訳無さそうに謝って来た為やはり腹立たしくて尻を強めに一蹴りしておいた。
それが半日前の事である。
ホテルの一室に呼び出され、事のあらましを聞いた三途は大人しくマイキーの指示通り尻の洗浄を済ませた状態で再度スーツを身に纏った。ベッドに腰掛け、三脚に設置されたカメラを間に挟みマイキーから叱責の言葉を受けていた。
三途がハメ撮りに用いた隠しカメラのようなチャチい物ではなく、ゴツくてボタンが多い。しっかりした性能を持つ事を察す。たらり、と冷や汗が額を伝う。こんなつもりじゃなかった。