Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    amampanda

    @amampanda

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🐱 🐈 🍮 🍩
    POIPOI 32

    amampanda

    ☆quiet follow

    テスデイ
    現パロ
    映画を見てあれこれ語る2人
    言うほど気が短くないテスカ

    どちらかというと+に近いかも

    エマージェンシーには程遠い リビングのソファーにごろんと寝そべって、クッションに頭を預けて映画を眺めている男にデイビットは溜息を吐いた。だるそうに画面を見る姿でも絵になるなんて、顔が整っているやつは得だなとつくづく思う。
     映画を快適に観るためだけに購入した座り心地も触り心地も好みのソファーがテスカトリポカに占領されているがために、悲しいかな、カーペットに座ってソファーにもたれるという快適とは言えない状態で映画鑑賞をする羽目になっている。

     「こいつ、どうしようもねぇ奴だな、」

     流れている映画の冒頭、借金取りに必死にいい訳するお世辞にも見目がいいとは言えない男の姿を画面越しに見つめて、テスカトリポカは不快そうに悪態をついた。

     「人のことは言えないと思うが……」

     ぼそっと呟いた言葉は、しっかり男の耳に入ったようで、「オレは違うだろう?なぁ、兄弟。」とわざわざデイビットの言葉を訂正させようとするから始末に負えない。もちろん、無視を決め込みながら、先ほどスマートフォンに届いた不正利用を疑うカード会社からのメールを思い出し、そっと米神を抑える。
     毎度のことながら人のカードも突然持って出ていったかと思えば、限度額いっぱいまで使い切って帰ってくる。
     テスカトリポカはそういう男だ。
     海外で様々な珍しいものを買い込み、まだ国内に輸入ラインがないその商品たちをそれなりに安価で販売するバイヤーの仕事をしているらしいが、詳しくは知らないし、知ってもあまり善くないことのような気がして知る気もない。
     きちんと引き落とし日には利用額以上の金額が口座に振り込まれていることがほとんどだが、場合によっては足りず勝手に人の預金を使い込んでいるから、自分のカードを作れと再三伝えても作らないから言うのをやめた。余計な事に時間を割きたく無い。
     さて、冒頭に戻るが映画好きのデイビットが、友人に勧められた作品を何作か見てみようとしたまさにその時にこの男は現れた。
     普段から興味無さそうにしているし、文句を言う。それでも最後まで見てあれこれ批評しているから、意外と付き合いはいいのだろう。
     しかし、今回はそうではないらしい。故意にモノクロで作られた映像、特段派手とはいえない内容ではあるが、テスカトリポカは怪訝そうに片眉を釣り上げている。

     「全ての人間に存在意義、生きている意味なんてあるのかねぇ?戦う意志もなく、息をするだけの人間なんて死んでいる者と同じだぜ。」

     アイスグレーの瞳に嫌悪が滲んでいる。この映画のテーマは彼の信条に反することだったらしい。自分が気に入らないものは気に入らないとはっきり言葉に出す、つくづく自由で傲慢な男だ。先ほど飲みたいと言うから用意したアイスコーヒーも口をつけてもらえずに、からん、と氷がグラスの中で寂しい音を立てている。

     「オレは……人間が生きていること自体には意味はないと考えている。」

     一度頭に入れて噛み砕いたテスカトリポカの言葉に対してぽつりと持論を落とせば、見る見るうちに男の興味は映画からデイビットへと移った。

     「ヒュウ!!やっぱりデイビットはぶっ飛んだこというな!」

     それで?理由を教えてくれよ、相棒、とクライマックスに近づく画面そっちのけでこちらを覗き込む男は切長の瞳を三日月にして、愉快そうだ。

     「…………生きていることよりも、何を成したかに意味がある。何かを成そうとした人間であれば、成したことにいつか意味が生まれるだろう。逆に何も成さずただ生きているだけの人間ならば、何の意味もない。死んでいるよりも始末が悪く、ただ酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出し、資源を無駄遣いするだけの無価値な生き物だ。」

     デイビットの考えにテスカトリポカは関心したようにうんうんと頷き、口角を釣り上げる。お気に召した意見だったらしい。

     「いいな、オマエの徹底的な結果主義嫌いじゃないぜ。しかしその考えだとほとんどの人間は無価値になっちまうぞ?オレより厳しいじゃねぇか。」
     「そう、だろうか?」
     「ははっ、少なくともオレはどんなにだらしがなく、悪意に満ち、無価値なクズであろうと武器を取り、戦う意志さえあればそれで生きている意味、証明になると考える。────例え、そのまま犬死にしようともな。」
     「おまえも、十分酷薄で、冷徹だよ。」
     「そうか?オレは誰にでも公平で寛大だと思うぜ。」

     声はいつもの調子であったが、冷ややかな瞳はそれが本心だと教えてくれる。その様にすっと冷たい物を飲み込んだような感覚がして、寒気がした。デイビットも人のことは大概言えないという自覚はある。だが、前々から思っていたことが、この男は普通の人間と少し異なる気がする。
     まるで、そう、視座が人より高い・・・ところにあるような。

     「ほう?ようやく正解に近づいたぜ、デイビット。」
     「…………ん?」 

     突然思考に割り込むように、テスカトリポカが発した言葉の意味は正直分からなかった。
    正解とは、なんの正解だ?
     珍しく頭の上に、はてなマークが浮かんでいるだろうデイビットに、のどの奥でくつくつと笑ってその骨ばった大きな手のひらで、くしゃりと蜂蜜色の髪を撫でてくれる。

    「ま、まだ早いな。」
     
     そう言って、勿体ぶるように髪から、輪郭をなぞる指先は顎から首筋へ。
    咎めるように、その右手を叩けば降参だと大袈裟に腕を上げる。

     「ま、次は、答えを見つけてくれよ。オレは気が長くないんでね。」
     「おまえの言葉の意味を理解できた訳ではないが、善処しよう。」

     もはや蚊帳の外になった映画のエンドロールが静かに流れる中、次に会える時までに、テスカトリポカが気に入りそうな映画を何本かチョイスしておけば、次はその言葉の意味がわかるだろうかとデイビットは頭の片隅で思った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤💘💞👏💴💴👏👏💞💴💖💖👏😭👏🙏🙏💴💴💴💖❤💖💖💖💖👏👏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works