[1/30] 30話後、次元を超えるエースとアリス 見上げた空は青く、澄み切っている。ちぎれ雲が浮いているが、空気は乾いているため雨は降りそうにない。
いや、そもそも雨は降らないのだったっけ、と。余所者の少女は白の領土で受けた山のような説明の中からぼんやりと思い出す。四つの領土については聞かされたが、時間帯や天候についてまで話していたか定かではない。空っぽの状態に近い脳内にとんでもない量の情報を一気に詰め込まれた少女は、心なしか重くなったような気のする頭を抱え、頼りない足取りで小道を往く。
まずはどの領土から回ろうか、分かれ道で思案する彼女の視界の片隅。林道に相応しからぬ鮮やかな赤に、思わず目を奪われた。
すらりとした長身に、茶髪。携えた金の大剣が無かったとしても、鍛えているのが分かる逞しい背中。彼もまた、良く晴れた青空を見上げているようだった。鳥か、真昼の月か。少女も同じ方角を見てみたが、これといって特筆すべきものは視線の先に無い。
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