In case of himきゃああ! と高い声が街中に響いて、驚いた彰人達は思わず足を止めた。
振り返ればそこにはバイクに乗って走り去っていく人と、そのバイクを指さしながら「引ったくり!」と叫ぶ女性がいる。見れば、バイクに乗っている人はその体躯に似合わないブランド物の小さなカバンを手に持っていた。
こういうとき、冬弥のとる行動はいつも決まっていた。いわく、それが義務だとかなんとか、彰人にはよくわからなかったが、とにかくそういうことらしい。
「彰人、追えるか?」
「冬弥が音を追えるんなら」
彰人と冬弥は互いに目を見合わせて合図する。「警察呼んどいてください」と通りかかったサラリーマンに頼んだら準備完了だ。互いのスマホで通話を開始し、彰人が真っ直ぐバイクの向かう先に駆け出す。その場に残った冬弥は、場の混乱に見合わないほど静かに、すぅっと意識を集中させた。
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