兄者の手紙。結びの応え「
『代わりじゃないよ』
ごめんね膝丸、僕、だよ。
本当だよ。本当にごめん。
僕は、僕はね、自分を見失ってたんだ。
お前は戦う僕に憧れてくれて、そして本来の僕に気付いてくれて、好きだと言ってくれたのに。
僕はそれを、その僕を、認められなかったんだ。
ごめんね膝丸、本当にごめん。
お前に酷いことをして。
僕は、僕を守るために、なにをどうやっても埋められない、償えない、酷いことをしてしまった。
とんでもなく弱い刀だったんだ、僕は。
武士の世を統べる鎌倉将軍の宝刀髭切の太刀
そんな肩書きに思い上がっていただけだったんだ、僕は。
…まるで人の子みたいだね。
見栄を張って、人並みを認められなくて、大雑把を装っているのを見抜かれて焦って、
…そして逃げた。
それなのに、耐えられなくなってしまったんだ。
代わりの在庫(僕)はたくさんある。
もし主がもう一振り僕を顕現させたら、お前はその僕の弟になってしまう、
って思ったら。
ごめんね膝丸、本当にごめんね。
自分本位の兄で。惣領なのに狭量で。
今こそ愛想を尽かされるときだと思っても、
もう一度、お前の兄でいたいんだ。
ありがとう、弟。
」