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    kabeutirst

    @kabeutirst

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    recommended works

    ほしいも

    DONE猗窩煉とアートギャラリー
    ■現代パロディ、恋人同士
    宇髄天元の個展に行く二人
    なんとなく、別に深い理由はない、ただなんとなく、港区がイケ好かない。港区なんて漠然とした事は言わない、六本木、特にこの六本木を好まない。オフィスにタワマン、繁華街ととにかくこの狭い一角に人生全てをぶち込んだ街。職住近、働きやすく、住みよい、そして夜は繁華街で派手に遊んで解放しよう!といったラッピング。全然好きじゃない。抽象的なことを抜きにしても、坂が多いっていうところも嫌いだ。
     ──何よりも、定期的にこの街を訪ねるとき、恋人が俺には見せない顔をしているのが気に入らない。

     普段はその肩を並べて歩く恋人が、この時は一歩だけ先を歩く。恋人に誘われて初めてあのギャラリーを訪ねた時、珍しく道案内を頼んだので、その名残りかもしれない。先を歩く恋人の髪が、歩みに合わせて左右に揺れている。急勾配をものともせずに進む姿に、改めてその恵まれた健脚に惚れ惚れとする。その一方で、手を伸ばしても届かない距離まで離れるのは堪え難く自分の歩調よりも少し速い歩みに合わせて追い掛ける。先に歩く恋人の姿を見上げると、真上にある太陽を背負って眩しいくらいで、目が焼けそうだと思った。太陽のような恋人の軽い足取り、気が急 4247

    ほしいも

    DONE恋人に素晴らしい提案をする猗窩煉

    ■現代パロディ
    ■成人向けにするほどでもないけれど、明らかに情事の最中です。
    「杏寿郎。」
     目の縁に生えそろった睫毛が濡れて、小さな束を幾つか作っている。いじらしく目尻の窪みに溜まった涙が、瞬きのたびに震えて今にもこめかみへ向かって流れ落ちようとしている。上気した肌は頬だけに留まらず目元まで血色よく紅潮させ、早鐘の鼓動に見合った浅く、早い呼吸が閉じる事を忘れ薄く開いたままの唇から漏れている。薄っすらと浮かんだ汗で額や頬に色素の薄い髪が張りついていて、労うように頭を撫でながらそれを払う。恋人は俺よりもずっと体温が高く、こうして互いの熱を貪った後でも触れ合う体温が近付くことはない。逆上せたように火照った頬にも触れて、目尻に溜まる涙を指の腹で拭う。指先が心地よいのか、擽ったいのかまるで眩しいものでも見るように切れ長の目元が細められる。恍惚とも見えるその表情が煽情的で、このまま落ち着いていくのを待つばかりと思っていた情欲が再び熱を帯びる。
    「杏寿郎…いいか?」
    「だめだ。」
    「……だめ?」
    「だめ。」
     撫でるだけで満足出来るほど、お行儀はよく出来ていない。触れ合う手を払い除けないところを見るに、そう強い拒絶ではないと読み解いて、短い返事をするのに精一杯といった様子の 1716

    ほしいも

    DONE煙草を買いに行く
    ■猗窩煉です
    ■現代パロディ
    「……。」
     深夜のコンビニ。店員の姿は見えない。カウンターの奥に並べてある、彩り豊かなパッケージに睨みをきかせる。先日配置換えを行ったばかりの棚の中で、小さな長方形の紙パッケージが大人しくいい子に整列していた。
    「お待たせしました、どうぞー。」
     レジ奥からアルバイトの青年が小走りで出てくる。会計待ちだと思われたのだろうが、自分の手元にもカウンターの上にも商品はない。
     目線の先に並んだパッケージから、目当ての銘柄を探す。焦点の会わない視界、僅か1メートルばかりの距離でも識別するのは難しかった。眉間に力を込めたまま、黒い紙箱を探して目を凝らす。
    「すまない、先週まで3番だった…。」
    「ああ、こちらですか?」
     仕事人を手ぶらで待たせている時間が耐え切れずに、誰に言うでもなく呟く。すると、直ぐに目当ての銘柄をカウンターに出してくれた。それも、注文する前から2箱準備をする気の利きよう。いかに、このコンビニに足繁く通っているかが分かる。
    「それだ、ありがとう。」
    「いつもありがとうございます。」
     スウェットのポケットに手を突っ込んで小銭を漁る。逃げ回るコインを追うのを邪魔するのは、部屋を 830