貴方が微笑む夢を見る。「クアンタン」
テレビで偶然にも放映されていたクイズ番組を見ながら七海さんは、ぼそっと呟いた。
次の瞬間、七海さんが言った言葉が正解と表示されており番組内で街が紹介される。
「詳しいんですね、私ちっとも分かりませんでした」
「行きたいと前々から思っていた場所だったので」
淹れたばかりのコーヒーを手渡して隣に腰掛けて一緒にテレビを見た。
青く澄んだ海に陽の光が反射してキラキラ輝いて、美しい光景が映し出されている。
「綺麗な場所ですね」
「……もし、君が良ければ」
テレビを見ている目線を七海さんに向けると、翡翠色の目がこちらを見ていた。
「いつか、一緒に行きませんか。クアンタン」
「わ、私で……良ければ」
恥ずかしさから俯いてコーヒーを啜ると七海さんが「ふふっ」と笑う声が聞こえた。
七海さんが笑っている。
青い海を背にして笑っている。
前に見た、あの街、一緒に行こうと話した街で笑っている。
目を開けて勢いよく起きると体に激痛が走った。
そして彼が夢枕に立ったことで、もうこの世にはいないのであろうという事を悟ってしまった。
「七海……さん……」
行けば良かったですね、クアンタン。
その言葉に呼応するかの様に傷口が一層強く痛んだ。