お互いを恥ずかしがらせないと出られない部屋 ドアのあった場所を蹴る音、それに続く壁の硬さに文句を言う声に、レオナルドはため息をついた。うちの上司たちのようなパワー系ではないのだから蹴破るのは絶対に無理だと思う。
視線を巡らせれば、壁一面にポップな書体で術式が書き込まれているのが視える。ところどころにピンクのハートが混じっていても術式というものは発動できるらしい。
「ふっつーに、術式破る方面はだめなんすか」
「アリギュラちゃんにそのあたりぬかりがあると思うか!」
忌々しい! と吐き捨てた堕落王はレオナルドが座り込んでいたベッドまで来ると勢いよくその上に腰を下ろした。
マットレスが沈み、レオナルドも弾む。フェムトの方に体が傾き肩が触れ、はじきかえされるままにベッドの上に転がりそうになりなんとか耐えた。
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