迷子ふたり、ベンチにて あーあ。本当に、本当にツイてない。
疲れきった足を投げ出して、私はとうとうベンチに座り込んだ。重たくて仕方なかったキラキラのパンプスを、思い切ってえいっと脱ぎ捨てる。今日下ろしてもらった時はとっても素敵に見えたこの靴に、こんなに足を痛めつけられるだなんて思わなかった。靴下をめくると、自慢の白い肌にはくっきりと赤い痕が残ってしまっている。もう、本当にうんざり。
重たい身体をベンチに預け、脱いだパンプスのストラップに足指を掛けてぶらぶらさせる。こんな姿、ママが見たら「お行儀が悪い!」ってカンカンに怒るんだろうな。でも肝心のママはどこにも見当たらない。
街はどこもかしこもハロウィーンの準備で大賑わい。見渡す限りの人、人、人、あと時々モンスター。これだけ人がたくさんいるのに、わたしのママとパパだけが見つからない。ちょっとだけ、そうほーんのちょっとだけ、さっき通った店先の可愛らしいジャックオーランタンに目を奪われている間に、すぐそこにいたはずの二人の姿を見失ってしまった。今日はせっかくの誕生日なのに。どこに行っちゃったのよ。ママもパパも。
2559