冷たい彼熱い…
暖房がやたら聞いたデパート内をウロウロしていたクライゴアは露出させた顔だけでその熱を感じていた。
クリスマスも近いこの時期あちらこちらにカップルが歩いている。今日デパートに来た理由はペニーとマイクとクリナにクリスマスプレゼントとしていいものはあるか下見だ。
(とは言っても…なにを上げれば良いのか…マイクには音楽用品か?クリナは…ビー玉とかおはじきだとか…安っぽすぎるか…天然石の詰め合わせにしておこう、ペニーは…そろそろ空気中では不安定な物質を扱わせてもいいころじゃから真空式グローブボックスでも買ってやるか)
ウキウキしながら歩いていたら何か人だかりが出来始めて何事かと近寄ってみると人々は白衣を着たクライゴアを見て「医者が来た?」「お医者さん?」と道を開ける。
ただの科学者ならそう断るがクライゴアは以前暇つぶしに医師免許を取っているから気にせずに近寄ればよく知る彼が擬態姿で倒れていた。
「おや、オービュロン君?大丈夫かね?」
声をかけてみたが返答はない、これはまずいかもしれない。手に触れると普段ひんやりしている彼の体は生暖かい。
「熱中症だな、すぐ外に運び出した方がいい」
確かここには空中庭園があったことに気づいてクライゴアはオービュロンを抱えてすぐに向かった。
何人かはもう大丈夫だろうと判断したのがついて来なくなったが数人はそのまま付いてくる。
自動ドアが開くと冬らしい凍てついた雪混じりの風が吹き付けた。あとはこれで冷たい飲み物でも買ってあげれば…
「ハッ…!」
「気がついたかね?」
クライゴアを見るなりすぐに抱きついてぐすぐす泣きながらテレパスで怖かった、熱かったと感情を吐き出す。
故郷から遠く離れた地球で意識を失ったのだから当然とも言えるその涙をポケットに入れていたハンカチで拭き取った。
「救急車で運ばれなくてよかったよ…何か冷たいものを買ってくるから、座っていてくれたまえ」
「ハイ…オ願イシマス…」
近くの自販機で冷たいスポーツドリンクを買って彼が飲んでいるのを眺める
いきなり体を冷やしてしまったが彼にはちょうど良かったらしく、元気そうな姿を見て他の人間はそのまま居なくなっていったあと、キョロキョロと辺りを見渡して急に彼はよく知る姿になった。
「いいのかね?その姿で」
「今くらいごあサンシカイマセンカラ…チョット擬態疲レマシタ…」
もたれ掛かるオービュロンを手で支えながら脇の下あたりを優しく触り、体温を確認する。
まだ少し高い
「君は何か用事があるのか?」
「楽シソウダカラ入ッタダケデス…」
「そうか…なら今日はもう帰りなさい」
「ソレハ〜…チョットサミシイデス…」
「駄目だよ、今日はしっかり寝て体調を戻しなさい、また今度ここにくるなら、その時は私も行こう」
私も、その言葉を聞いたからかオービュロンは納得したらしく、宇宙船を呼び寄せて乗り込み「約束デスヨ」と声をかけて飛んで行った。
後日デパート内にあるうどん屋でざるうどんと天ぷらうどんを食べる2人の姿があり、カップルというには離れすぎた見た目と祖父孫と呼ぶにはおかしい会話に周囲の人は首を傾げた。