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    DR_yuu0202

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    DR_yuu0202

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    Δドラロナ「勤労感謝の日」
    勤労感謝の日に働く隊長のお話。
    ΔドラロナWebアンソロジー掲載作品。

    勤労感謝の日 勤労感謝の日。国民の祝日に関する法律において「勤労をたつとび、生産を祝い、国民がたがいに感謝しあう」ことを趣旨として、同法によって制定される祝日である。
    「どこの、誰に、何を感謝してるっていうんだ」
     勿論、祝日と制定されている日に全ての人間が休めば当然社会は成り立たない。ドラルクの仕事は尚更だ。吸血鬼は二四時間三六五日、今日も元気に街を騒がせるのだから。
    「我が名は吸血鬼——」
    「あー、いい、名乗らんで。というか聞きたくない。どうせ碌なもんじゃない」
     市街で衆目を集めていた吸血鬼は、駆けつけてみればそこそこに屈強な男の姿をしていた。何故かその身に、フリルまみれのレディース服を身につけているが。
    「そこの変態をさっさと捕まえろ」
    「うわーーっ、まだ何もしてないのに!」
     ドラルクが指を鳴らすのと同時に、隊員たちに素早く取り囲まれた吸血鬼は迅速に確保され、無事VRCへと護送されていった。それを見送ったところで、ポケットに入れた端末が着信を知らせてくる。
    「はい、ドラ……」
    『ドラルクか! 私だ、ヒナイチだ』
    「どうしたんだね、ヒナイチ君」
     名乗られずとも、この回線を知っているのはチームデルタに関わる者だけだ。そうして、ここに電話がかけられてくるとは、そういうことだった。
    『郊外近くでスラミドロが大量発生しているんだ……退治人組合だけでは人手が足りなくてだな』
    「……了解したよ。至急人員をそちらに回そう」
    『それと、発生源の特定が難しい。半田がフレーメンを起こしていて……』
    「……私も向かおう」
     電話向こうではそこそこの騒ぎになっているらしい。ヒナイチが「すまない、頼んだぞ!」と言って電話を切った後に、ドラルクは息つく間もなく先ほどヒナイチに告げた旨を本部へ通達し、自身はその足で現場へと向かった。


     先月下ろしたばかりの革靴を脱いで、中の泥を掻き出す。グローブも靴下も、今すぐに脱ぎ捨ててしまいたいところだが、急ぎで駆けつけたので予備を準備できていなかった。乱れた髪を撫で付けたいがこうも手が汚れていてはどうしようもなく、ドラルクは小さく項垂れるしかない。
    「隊長、下等吸血鬼の駆除及び発生源の処理、全て完了したぞ!」
    「あーご苦労。すまんが、車にそのまま乗るわけにはいかんから、座席にビニール敷いてくれるかね」
    「了解した」
     隊服の白い裾はすっかり黒ずんでいる。こちらに至っては、昨日クリーニングから仕上げられたばかりのものだった。部下が直ぐに戻ってきて、署へ戻る車の手配が完了したことを報告してくれた。濡れて重たい隊服と、疲労で重たい身体を引き摺って、ドラルクは車に乗り込んだ。座り心地の良くない後部座席に腰を下ろすと、間も無くして公用車が走り出す。
     と、同時に再び懐で振動が響いて、一瞬、ほんの一瞬ばかりドラルクは眩暈を覚えながらも、汚れた手指で端末を摘むように取り出した。
    『どらこぉーー! たすけてーー!』
     ここで一番厄介な案件を持ってくる者からの連絡に、ドラルクの口角が僅かに引き攣る。涙混じりの声からして、どう考えても問題が発生した後であることは明白だった。
    「ロナルド君……? 一体何が……」
    『セロ、セっ、セ、セセ……!』
     全てが理解できてしまった。そうして、ロナルドの気配を探るとどうやら居るのはドラルクのマンションであることが分かってしまう。電話口からは金物が床にぶち撒けられる音や、何かが割れる音、そうしてロナルドの悲鳴がハウリングするように響き渡っている。どうやらそれは運転している葵にまで聞こえていたようで、バックミラーで視線がかち合った。
    「……葵くん、すまないが、私の家まで頼めるかね」
    「了解した」


    「うえ、ひっ、ぐす……」
     吸血鬼化したセロリが、一体どこから侵入したのかは不明だが、ともかくドラルクはそれを排除した後に、ぐずって抱き着いたままのロナルドの背を撫で続けていた。
     部屋の見渡す限りの惨状をロナルドの肩越しに眺める。先日新調した間接照明は中程からボッキリ折れ、リビングのローテーブルは真ん中で真っ二つに割れている。もはや笑いすら漏れてきたが、ドラルクの思考はどうあっても現実逃避をさせてくれなかった。
    「あー……ロナルド君、私すごく汚れてるから一旦離れてもらえる?」
     ぽんぽんと背中を叩くと、ロナルドがようやくしゃくり上げながらも顔を上げる。美しい顔は涙と鼻水でめちゃくちゃになっていた。拭いてやりたいが、今その類の物は手元にない。
    「……ほんとだ。仕事か?」
    「そう、お風呂入ったら署に戻るから……」
     ドラルクの言葉に鼻を啜りながらも、ロナルドは自分で涙やら鼻水やらを袖で拭って、そっか、と返してくる。
    「忙しいのに、ごめん。ありがとドラ公」
     そう言ったロナルドがそっと顔を寄せてきたかと思うと、ちむ、と唇に柔らかいものが触れる感触に、ドラルクは目を見開いた。
    「ろ、ロナルド君……⁉︎」
    「今日って、仕事してるやつにありがとって言うんだろ?」
     だから、ありがとな。そう言ってロナルドはドラルクの汚れた制服に構いもせず、ぴったりと身体をくっつけてくる。
    「……その、帰ってきたら、もっと色々しような」


    「さぁ、勤労だ、勤労! きりきり働きたまえよ諸君! 定時には帰るぞ!」
     署に戻ったご機嫌なドラルクの声に、察しの良い何人かの隊員たちが眉間に皺を寄せ、揃って舌打ちをした。
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