とまれよ、涙。大型プロジェクトチームのメンバーに任命されたと話す藤真は、たぶん忙しくなるだろうから2.3週間は会えないと思う、と寂しさを滲ませた声でそう告げた。
数週間前にそう話していた通り、藤真からの連絡は最低限のものとなり、「おはよう」と「おやすみ」のメッセージと、シンプルなスタンプが届く程度になった。そのどれもが、朝は牧が目覚めるよりも早く、夜は体調が心配になってしまう時間帯のものばかりで、通知時刻を見るたびに藤真がいかに多忙なのかを思い知らされる。クライアントが海外企業だと話していたので、もしかすると時差の関係上、就業時間が不規則になっているのかもしれない。
だから牧は極力、藤真の負担にならない程度の日常を報告するようにしていた。たとえば、今日はなにを食べただとか、誰とどこへ行っただとか、藤真からの返事を要しない上手な伝え方でメッセージを送るようにしていた。既読がついてそのままのときもあれば、スタンプだけがポンっと送られてくるときもある。そうやって、あと何日を繰り返しながらすれ違いを埋めるようにしていた。
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