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    718kiki

    @718kiki 凪茨利き小説企画です http://718kiki.8.mi210.com/ ※小説掲載方法をポイピクからサイトへと変更いたしました。以降ポイピク更新はありません

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    凪茨【A0】←グループ、番号です 『心の熱』
    ※ここに他CPや特殊性癖など注意事項などを記載します。

    ##グループサンプル

    【A0】心の熱心の熱

    「今日のシチューもおいしいね、茨」
    「……おくちにあってよかったです!」
     いまのは素の茨の笑顔。
     そのほんとうに喜んだ笑顔が好きだった。茨は大体演技をしていて、仮面いつわりをつけて人とかかわっている。私だってそう。傍にいることによって、だんだん演技ではないところの茨を知るようになって、それが特別なことだって気づき始めた。それが愛おしかった。云ってしまえば仮面と鎧を外すことがなくなる気がして、伝えずにいる。
     私は茨が好きなのだけれど、でもきっとこれは云ってはいけないことなのだろう。
     茨は私の為になんだってした。それは自分の野望の為の兵器の運用で、私を快適に操作するためのオイルのようなものなのだろう。そういう契約だった。
     だから私が恋人になって、と云ったら、そのようにしてくれる。自分のほんとうの気持ちなんて茨はどうでもよくて、ただ這い上がるためなら何だってした。張り付けた笑顔のまま、私の為に、好きです愛していますと云ってくれる。
     君が好きだ、愛していると、云ったらどうなるだろう。仮面と鎧で計画通りに操るための都合のいい言葉を浮かべるのか。それともほんとうの顔でいてくれるだろうか。多分前者だ、茨は。
     世界が敵だと思っている茨には、恋心は備わっているのだろうか。茨は人を好きになるのだろうか。わからなかった。
    「明日の朝食はシチューの残りでグラタンにしたいと思います、いかがでしょう?」
    「……うん、それはいいね。きっとおいしい。楽しみだな」
    「ご期待に沿えるよう、万全を期しますので!」
     私の為に画策する茨の中に、私はどれくらい占有しているのだろう。
     それが私の心の熱と、同じ色をしていればいいと、密かに思った。

     ***

     早朝のグラビア撮影の休憩の時間、森林公園の空を見て茨に云った。
    「茨、少し散歩しよう」
    「アイ・アイ! お時間まででありますがお付き合いいたします!」
     私の隣をちょこちょこ歩き始めた茨は端末を操作していた。休みもないことをいつも心配している。私は何も云わないで歩調を合わせた。
    「茨、みて、綺麗な落ち葉」
     紅葉と銀杏を拾って、茨に見せた。
    「あげる」
    「はあ、……ちょっと閣下」
     私は無理矢理茨の耳飾りにと落ち葉を差し入れた。茨は少し困って、それからほんの少しだけ、ほんとうの笑顔を浮かばせた。
     気持ちを贈る。
     プレゼントみたいに、気持ちも形になって渡せればいいのに。それを確かに受け止められて、理解されて、伝わればいいのに。
     契約がなかったら茨の傍にいられなかった。
     契約がなかったら、損得勘定なしに、茨は傍にいさせてくれただろうか。
    「……寒いね」
    「ええ。ではロケバスに戻って……」
    「抱きしめていい?」
    「は?」
     きっとこれは云ってはいけないことなのだろう。
     云ったら茨は閉じてしまって、ほんとうは失われてしまう。
     衝動がうまく抑えきれない。私は茨を抱き寄せて、ぎゅうと強く抱きしめた。
     ほら、茨は計算をして、抵抗をやめる。
    (君が好きだ、愛している)
    「……閣下、お時間ですよ」
    「……うん」
     いつかちゃんと贈りたい。でもその時ではないことを知っていた。 
     はらはらと秋が舞って、心の熱は、鮮やかに胸を焦がしていった。
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