「うぉ〜〜寒っ!ったく、ずりぃぜ。アイツらはコタツでぬくぬくのんびりしてるってのによぉ……あーーーオレってほんと可哀想!!」
使い古した洗濯機から洗濯物を取り出し、ベランダに出てそれを干す。いつもなら何ともないのだが、それが真冬ともなれば話は別だ。真冬のベランダは寒いし、洗濯物もまぁ冷たい。当然進んでやる奴はいない。そこでオレを含めた3人でじゃんけんをして、負けた奴がやるって流れになったんだが───あとはご察しの通りって訳だ。
紹介が遅れたがオレの名はターレス。これといったのは特に無いんだが……あっ、家庭菜園ってのに挑戦中だ。残りの呑気にコタツであたたまってる薄情者2人がブロリーとゴジータ。………どっちがどっちなのかって?
髪が長くて眠いのか眠くないのか分からないツラ…うわ睨んできやがった、おー怖っ。ええっと、優しそう?な顔をしてる奴がいるだろ、そいつがブロリーだ。アイツすごく背がデカいんだぜ。おまけにぶっきらぼうで口も悪いが、割とノリが良いんだ。意外だろ?
で、向かいに座ってミカンをパクパク食ってるのがゴジータ。見ての通り食う事が大好きな奴なんだが、料理の腕はまるで駄目……なのに何故かたこ焼きだけは作れるんだぜ、卵もまともに割れないような奴がだぞ?不思議だよな…。
あ、あとオレとブロリーのワガママになんやかんやで付き合ってくれる良い奴だ。今はそうは思わないがな。
「おぉ、寒かった。凍え死ぬかと思ったぜ」
「おつかれ」
「おう」
「そのまま凍え死んでくれても良かったんだがな」
「生憎、身体は丈夫にできてるんでね」
コタツに入りながら嫌味ったらしく言ってやると、向かいから盛大な舌打ちが聞こえてきた。これはいつもの事なので特に何も言ってやらない。
しばらく各自で自由に過ごしていると、ゴジータが最後の1房になったミカンをじっと見つめていた。
「なんだ種でも入ってたか?」
「いや…ミカンのこの形、何かに似てるなぁって思ってよ」
「そうか?オレにはただのミカンにしか見えないがな」
「なんだろうな…ここまで出かかってるんだが………」
「…おむ…らい……す…」
「あ?オムライス??」
「いや、オムライスじゃなくて……オムライス??」
声がした方を2人揃って見てみると、寝惚け眼のブロリーと目が合った…気がする。その後ブロリーは、1分も経たないうちに夢の世界に再び旅立った。
「……なんかオムライス食いたくなってきたな」
「じゃあ、夜はオムライスだな。で、ミカンが何に似てるって?」
「忘れた」
「なんだよそれ…………よいしょっと」
材料が冷蔵庫にあるか確認するべく、名残惜しくもコタツから出てキッチンへ向かった。まさか寝言で献立が決まるとは思わなかったが、考える手間が省けたのはありがたい。余談だがブロリーも料理が得意じゃない、というかそれ以前に作る気ゼロだったんで料理担当は自動的にオレになっちまった、全く酷い話だぜ。
オムライスにどんならくがきをしてやろうかな、思い切ってハートでも描いてやるか、そんな事を考えつつオレは夕飯を作り始めた。