「楪、これ食べれる?」
「…うん 大丈夫、土はらえば食べれるよ」
「そっか ありがとう」
「ううん、どういたしまして」
と、仲良く会話をしているがこの二人は初対面 初めての会話はつい30分ほど前の事
那谷楪は降頭術の使い手である
蛇や蠍などを用いて毒物等に変換する事が出来る
ただ、蛇や蠍 そんな生き物は身近な場所にいることは決して多くはない(場所には寄るが)
諸々は省くが、彼はその生き物達を収集に来たが 運の悪いことに夜の山奥で足を滑らせて 迷子になってしまった
(まぁ、この山は登山する人が多いし 朝まで我慢すれば誰か気づいてくれるだろう)と冷静な判断を下した楪は落ち葉だらけの土に腰を下ろした
そう思ったのも束の間 暗闇の中から現れたのがこの男 戎狄銀嶺である
楪は驚いた それはもう普通に割と甲高い声で叫んでしまった程に
彼は泥だらけの服を手で払いながら、楪を見た後「あ、人だ」と呟いた
これが彼らの会隅である。
…
「いや、俺も迷子になってたからさ ホントに偶然だよ」
「偶然、というかキミは…」
「ヘラクレスオオカブト探してた」
「…うーん…」
「昼間に木に蜜塗ったから、待ちきれなくて夜身に来たら迷子になっちゃってさ」
「銀嶺君 君ってなかなか…」
「でも楪もだいぶ危ねえだろ、大体こんな時間帯に何しに来たんだよ」
「…昔からボランティアで危険な動物を捕まえる活動をしてるんだ」
「へぇ~ でもそれなら昼間で良くね?」
「危険な動物は夜に現れるんだよ」
「ふ~ん、そんなもんなのか 俺バカだからよく分かんねぇ」
「銀嶺君は普段何してるの?」
「俺大学生」
「え!?こんなとこにいて大丈夫なの!?」
「うん、もう夏休み入ってるし 明日はバイトも休みだから」
「…な、ならいいけど…」
と、こういう風に二人はいつの間にか仲良くなっていた
一緒に木の実を食べたり、子供のように落ち葉で遊んだりした
お互い、身を隠したままだったが一喜一憂の時を過ごした
再会すれば、立場がどうであれ この二人はきっと仲良くできることだろう
生駒夜霧の腐乱死体が見つかったのはまた別の話である