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    チィカマ

    成人済みの腐。夏五夏(生産はもっぱら夏五)。夏油傑に沼っているモノガキど素人です。画像小説とか、途中書きとか、諸々置き場。

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    チィカマ

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    GEGO DIG. 1week challengeの
    9月のお題より。(画像小説の上げ直し)

    熱分解(お題:燃えるゴミ)未登録の特級呪霊が何度か目撃されたようなので現場に向かえ、と五条の携帯に連絡が入ったのは、すでに仰せつかっている別の特級案件の任務地にたどり着いた時だった。たった今、別の呪いを祓うところだが、どちらを優先すればいいかと訊ねれば、「はやくそちらを片付けて、なるべく早く次の現場に向かえ」と。つまり、「両方」ということだ。相変わらず命令を下す上層部はこちらを機械か何かだと勘違いしているらしい。だが、機械よりも優れた精度で無理な要求にも難なく応えてしまう人間が、五条悟という男である。
    「はいはい、善処するよ。その代わりさ、この間僕がお願いしたあの件、当然呑んでくれるんだよね?」
     車のドアをバタンと閉めながら、五条は電話口で二つ返事をした。もちろん、こちらの要求を通すことも忘れない。向こうは二つ返事とはいかないので、こういうときに何度も牽制しておくことがこの世界での五条の歩き方である。聞き取りづらい声でごにょごにょとほざくので、そのまま電話を切った。五条は一度伸びをして、補助監督が用意した帳の中へと足を進めた。

     特級案件といえど、今の五条には取るに足らない内容で、予定より早く終わらせることができた。車内での移動中、補助監督に依頼しておいた飲み物を口に含みながら、さきほど電話で指定された次の案件について考えることにした。未登録の特級呪霊が確認された現場は、海岸沿いに最近造られた公園だ。環境保全団体が反対運動をしていたせいで、着工が遅れたという記録がある。そうした場所なら、発生した呪霊は海洋信仰にまつわる能力を持っているだろうか。見た目も海の生き物のようだったら面白いな、などと考えていると、ふと、珍しい呪霊を集めたがっていた親友の顔が脳裏をちらついた。
     すぐに頭を横に振って、関係のないことだと否定した。珍しかろうが、呪霊に遭遇したら報告に足る程度に特徴をしっかりと分析し、祓うだけだ。もう力を加減してわざわざ弱らせる必要もなくなった。おかげで、任務の効率は爆上がり。最高じゃん、と五条は自分に言い聞かせた。それなのになぜだかやっぱり、気分は晴れていかない。一瞬掠めた親友の顔と共に訪れた胸の痛みごと飲み干すように、ペットボトルを一気に傾けた。車窓に目をやると、凪いだ海がどこまでも続いていた。まるで海水の冷たさを隠しているかのように、晩秋の海は晴れ空にキラキラと映えてサングラス越しからでも眩しかった。

     現場に到着して、五条はすぐに異変を感じ取った。仰せつかったのは「特級呪霊」である。だが五条の特別な眼を通しても、その気配はうっすらとしか感じることができず、そこに「居る」ようには思えない。しかし、報告通りに特級が居るのだとしたら、相当高度な能力を持ち合わせているに違いない。五条は補助監督に、30分で戻らなければ、学校に連絡してほしいことと、少しでも自身の身の危険を感じとったら自分を置いて迷わず学校に戻ってほしいということを伝え、背を向けた。
     海岸線に沿って造られた、遊歩道を歩く。冬の夜の海岸を一人で歩いたときのように辺りは静かで、波の音に連れられて潮の強い香りがするだけだった。五条は両手をポケットにつっこみながら、ひたすら遊歩道を歩いた。500mほど先に、あずまやが見える。そこから、かすかな気配を感じ取った。歩みを速めて、五条はあずまやに向かう。ふと、それが憶えのある残穢であることに気が付き、次には走り出していた。
    「・・・傑っ」
     ちいさなあずまやには、ぽつんとにぎやかな紙袋が1つ置かれていた。まるで「遅いじゃないか、悟」とあざ笑われているかのように、紙袋にはべったりと夏油傑の残穢がこびりついていた。枯れ葉が梢から落ちて、椅子の上にかさりと着地した。


     五条悟の親友である夏油傑は、呪霊を飲み込んだ後にいつもどこか、苦しそうな顔をしていた。それに五条が気付いたのは、夏油が望む呪霊を取り込む場面に立ち会って3度目ほどのことだった。
    「呪霊ってやっぱ不味いの?」
    「うーん、美味くはないね」
     夏油は、呪霊を使役するときも、降伏させるときも、そして新しい呪霊を見つけたときも嬉々として楽しそうにしている。だが、呪霊を取り込むときだけは、ほんの少し顔を歪めて苦しそうにした。五条はもちろん、呪霊を取り込むことはできないので、どんな味であるかは凡そ想像の範疇を超えていた。ただ、自らの能力を高めることに関して五条と並ぶほどに貪欲な夏油があそこまでになるのだから、きっと辛いのだろうと推し量ることはできた。
     いつものように、呪霊を弱らせ、夏油が取り込むという任務を終えたあと、五条は寄り道を提案した。チェーン店のドーナツ屋だ。CMで見て以来、行きたいと思っていたのだ。
    「へぇ、悟もこういうところに来るの?」
    「いや、はじめてだけど?」
    「ふふっ…それじゃあ、教えないとね」
     夏油は、先に店に入って、五条にトレイとトングを渡した。列の最後尾を指して、「あぁやって並びながら、食べたいものを自分でトレイに取って、お会計するんだ。パン屋に近いかな」と説明した。1つ食べれば十分だからと、夏油はトレイを持たなかった。
     色とりどりのドーナツはどれも選び難く、五条は全部トレイに載せようとしたが、「そんなに食べられないでしょ、また今度こようね」と窘められて、3つに絞った。黄色い粒々がまぶされたもの、中に生クリームが入ったものに、チョコ生地にチョコがコーティングされたもの。夏油は、丸い節がドーナツ型に連なった、もちもち生地で人気の看板ドーナツを選んだ。
     二人でカフェオレを片手に、ドーナツを頬張った。
    「久しぶりに食べたけど、うまいや」
     夏油は丸を千切って、1節ずつ口に放り込んでは、目を弧の字に細めた。
    「傑が飲んでる呪霊玉が、ポ○デリングだったらよかったのにな」
    「はははっ・・・言えてるね」
     それから五条は、時々ドーナツ屋に寄っては夏油があの日、美味しそうに頬張っていたドーナツを土産に買って部屋に押し掛けるようになった。
    「悟はほんとうに甘いものが好きだね」
     呆れながらも、嬉しそうに目を細めながらドーナツを頬張る夏油を見て、五条はいつもどこか、安心していた。


     あずまやに当てつけとして置かれた紙袋を開けば、ドーナツが4つ入っていた。3つは五条が好みそうな甘いコーティングが施されたもので、ご丁寧に新商品の抹茶味も選ばれていた。残りの1つは夏油がよく食べていたものだった。五条は、あずまやの椅子に腰かけて、丸い節が連なったドーナツを取り出した。1節千切って口に放り込むと、ざり、とコーティングされた砂糖が砕かれて溶けだす。もちもちとした生地を嚙み締めれば甘味が口いっぱいに広がった。夏油が呪霊を取り込んだ後に食べたあのドーナツの味を、はじめて理解した五条は、残りのドーナツを紙袋に戻し、すべて燃えるゴミとして燃やすことにした。
    「ほんとにオマエってば、目立ちたがり屋だよ。僕は上にどう報告すりゃいいんだ」
     独り言をつぶやきながら五条は、敢えて呪力を使って手近なもので火を起こした。そして、ドーナツの入った紙袋丸ごとを砂浜で燃やした。たちまち黒い煙が立ち上がり、砂糖が焦げて燃える匂いが充満した。秋の空気は乾燥していて、気持ち良いくらい燃えた。熱を加えることで、ドーナツを構成する分子をバラバラに作り変えることができる。五条は、燃えて煙を上げながら炭になるドーナツを見つめる。大切な記憶の部分だけを取り剥がして、自分の胸の奥にしまっておくことにした。ドーナツ一節分の記憶で十分だ。それ以外は、燃やして気化させてやった。
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    izayoi601

    DONE思いついたので一人飯するじょしょどのの話。台詞などでも西涼二直の中ではじょしょどのが一番食事好きな方かなと妄想…脳内で色々分析しながら食べてたら良いです…後半は若も。庶岱と超法前提ですがもし宜しければ。ちなみに去年の流星での超法ネップリと同じ店です。
    早朝、一人飯「これは、まずいな……」
     冷蔵庫の中身が、何も無いとは。すでに正月は過ぎたと言うのに、買い出しもしなかった自らが悪いのも解っている。空のビール缶を転がし、どうも働かない頭を抱えつつダウンを着るしかない。朝焼けの陽が差し込む中、木枯らしが吹き付け腕を押さえた。酒だけで腹は膨れないのだから、仕方無い。何か口に入れたい、開いてる店を探そう。
    「……あ」
    良かった、灯りがある。丁度食べたかったところと暖簾を潜れば、二日酔い気味の耳には活気があり過ぎる店員の声で後退りしかけても空腹には代えがたい。味噌か、塩も捨てがたいな。食券機の前で暫く迷いつつ、何とかボタンを押した。この様な時、一人だと少々困る。何時もならと考えてしまう頭を振り、カウンターへと腰掛けた。意外と人が多いな、初めての店だけれど期待出来そうかな。数分後、湯気を掻き分け置かれた丼に視線を奪われた。
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