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    r0und94

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    94/半ロナ

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    【アンソロ寄稿のお知らせ(サンプル付)】
    2022/12/11 半ロナオンリーにて半ロナ学生アンソロジー「放課後の運命論」に参加させていただきました!
    ◯は夏を担当させていただいております〜。高1の頃のまだ距離感が掴めきれてない半ロナだよ! 全年齢で初々しい感じの二人だよ!!
    よろしくお願いいたします〜

    #半ロナ
    half-lona

    おれたちの夏はこれからだ!!(冒頭サンプル)「お前らはもう高校生になったんだから分かってるだろうが、休み中は羽目を外しすぎるなよー。ああそれと、期末で補習になった奴は特別課題を出すから職員室に各自取りに行くように」
     今日はここまで、と担任が話を切り上げたのを合図に教室から一斉に同級生たちが引き上げていく。明日からの予定について騒ぎ立てる声は、一夏を謳歌する蝉時雨にどこか似ていた。
    (どいつもこいつも、何でこんなに夏が好きなんだ?)
     級友たちがはしゃぎ回るのを、半田は窓際の席に座ったまま他人事の様に眺めていた。
     昔から夏は得意になれない。体質のせいで日に焼けると肌が火傷したみたいに痛むし、夏場の剣道の稽古は道着のせいで軽い地獄だ。それに、夜が短くなるせいで母と過ごす時間が少なくなってしまう。嫌いとまでは言わないが、好きになれる要素が少ないからどうしても気が重たくなる季節だ。
     高校一年生の夏も、今までと特に変わりはない。毎年と同じ様に蒸し暑くて憂鬱だ。早く九月になってしまえ、と始まって間もない夏を呪っていたとき パシャリ、とシャッターを切る小気味良い音がした。
    「うわ、急にすごいしかめ面になった。もうちょい自然にしてもらっていい?」
     薄々察しながら振り向くと、案の定そこにはカメラを掲げた友人が立っていた。油断しきっていた姿を撮られた気恥ずかしさをごまかす様に、半田はいっそうのこと険しい顔を作ってカメ谷を見上げた。
    「……ロナルドの阿呆面ならともかく、今のは撮る必要があったのか?」
    「もちろん。だってこれから夏休みだろ? 夏の間だって色々撮るつもりだけど、夏休みの前と後でお前らがどんな風に変化するのかもちゃんと撮っておきたいし」
     思っていたよりちゃんとした理由が返ってきたので そういうものか、と頷いておく。しかし、せっかく夏の間も写真撮影に意気込む友人には悪いが、夏の間にそんな大それた変化が起こるとは思えなかった。
    半田にとって夏はただ他の季節と同じ様に過ぎていくだけのものでしかない。終業式一週間前からあからさまにそわそわしていたロナルドならともかく、夏休みになっただけで浮かれるほど自分は幼稚ではない──そこまで考えたとき、そういえば当のロナルドが教室にいないことに気が付いた。
     どうせ補習者用の課題を回収しに行っているのだろう。ただでさえ課題が追加されるうえ、夏休み中に補習授業があると知ったときのロナルドの顔は傑作だった。情けなく眉根を下げて半べそをかく姿は思い出すだけで抱腹ものである。もちろん、カメ谷撮影の写真はばっちり保管用と予備を含めて現像済みだし、生徒手帳に挟んで携帯するぐらいに気に入っている。
     と、すっかり人もまばらになった教室に補習課題を回収した生徒たちが戻ってきた。示し合わせたわけでもないのに、半田とカメ谷はほぼ同じタイミングで廊下の方を見ていた。さほど待たないうちに、ちょっとした小冊子ぐらいはありそうなプリントの束を抱えたロナルドがひょっこり姿を現した。
    「ただいまぁ……」
    「お疲れー。うわぁ、大盤振る舞いじゃん」
    「こんな大盤振る舞い嬉しくねぇよぉ! そりゃ俺が赤点取ったのが悪いんだけどさぁ……」
    「回答欄と答えがずれていることに気付かないからそうなるのだ、無様な奴め」
    「オアアアアめっちゃムカつくし嬉しそうな顔しててすげー殴りたいけど一から百まで正論だから殴れねぇ! ていうかさっきから見てるその写真何なの?」
    「赤点のテストが返ってきて膝から崩れ落ちた貴様の写真だが? あのときの無様な様子を思い出しているうちに見たくなったのでな。要るか?」
    「要らねぇよ馬鹿、ていうか捨てちまえそんなモン! お前いい加減に暇さえあったら俺のことディスんの止めろや!」
    「ロナルド、そんな酷いこと言うなよ。半田のこれは呼吸みたいなものなんだから止めるなんて可哀想だろ?」
    「カメ谷まで急に俺を置いて狂うの止めてもらっていい?」
     何だよちくしょう、とロナルドは唇を尖らせていじけてみせる。そんなロナルドを半田がいじめて、カメ谷は会話に参加しつつも、次第にカメラを向ける方に集中し始めた。
     時折シャッター音が混じる三人の会話は、たいていがこんな風に中身の無い内容だ。特に実の無い話をだらだらと垂れ流しているだけだというのに、さっきまで夏を憂鬱に思っていた気持ちがいつの間にか消えているのが不思議だった。
     何か目的があって喋るのではなく、ただ喋りたいから口を動かす。この時間に明確な意味があるわけではないし、きっとなくなっても生活に支障はないが、それでも半田はロナルドたちと過ごす時間をわりあい気に入っていた。きっとあまりにも下らないことばかり話しているから多少の気鬱などどうでもよくなってくるのだろう。
    「ていうか課題もやばいんだけど補習の方が憂鬱なんだよなぁ。日程見た感じ週一で入ってるし……うげ、この日も補習だ」
    「あれ、どっか予定と被っちゃった感じ?」
    「予定っていうか、誕生日と被っちゃって」
    「誕生日って、誰の」
    「え、俺のだけど?」
    「……………………は?」
     全くもって初耳だった。半田が固まり、横でカメ谷が「あちゃあ」という感じの顔をしているのに気付かず、ロナルドは へらり、と眉を下げて笑った。
    「まあでも、どうせ誕生日って言っても何も予定はないんだけどさぁ……え、何、二人とも変な顔して。俺なんかまずいこと言った?」
    「ロナルド……お前、それで気付いてないのって一周回ってすごいよ」
    「え、え、マジで何? 半田は半田で黙ってるし、急にどうしたんだよ」
     突然無言になったのを心配したのか、ロナルドが顔を覗き込んでくる。ぬっと視界を埋め尽くした戸惑い顔のロナルドと目が合って、青い瞳が一心にこちらに注ぎ込まれていると思った途端、半田は頭が真っ白になった。
    「…………うわあああああああッ!」
    「うわ声うるさ、ってオギャアアアこっちにセロリ向けんな馬鹿ああああああ!」
     咄嗟に投げた特製セロリキーホルダーにロナルドが絶叫して、カメ谷が慌ててシャッターを切った。いつも通りのやり取りに、周囲のクラスメートたちも またあいつらやってるよ、と呆れ顔で笑っている。
     しかし、どうしてかロナルドの泣き喚く姿を見ても、今日に限って半田は少しも愉快な気持ちにならなかった。
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    ◯は夏を担当させていただいております〜。高1の頃のまだ距離感が掴めきれてない半ロナだよ! 全年齢で初々しい感じの二人だよ!!
    よろしくお願いいたします〜
    おれたちの夏はこれからだ!!(冒頭サンプル)「お前らはもう高校生になったんだから分かってるだろうが、休み中は羽目を外しすぎるなよー。ああそれと、期末で補習になった奴は特別課題を出すから職員室に各自取りに行くように」
     今日はここまで、と担任が話を切り上げたのを合図に教室から一斉に同級生たちが引き上げていく。明日からの予定について騒ぎ立てる声は、一夏を謳歌する蝉時雨にどこか似ていた。
    (どいつもこいつも、何でこんなに夏が好きなんだ?)
     級友たちがはしゃぎ回るのを、半田は窓際の席に座ったまま他人事の様に眺めていた。
     昔から夏は得意になれない。体質のせいで日に焼けると肌が火傷したみたいに痛むし、夏場の剣道の稽古は道着のせいで軽い地獄だ。それに、夜が短くなるせいで母と過ごす時間が少なくなってしまう。嫌いとまでは言わないが、好きになれる要素が少ないからどうしても気が重たくなる季節だ。
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    ◯は夏を担当させていただいております〜。高1の頃のまだ距離感が掴めきれてない半ロナだよ! 全年齢で初々しい感じの二人だよ!!
    よろしくお願いいたします〜
    おれたちの夏はこれからだ!!(冒頭サンプル)「お前らはもう高校生になったんだから分かってるだろうが、休み中は羽目を外しすぎるなよー。ああそれと、期末で補習になった奴は特別課題を出すから職員室に各自取りに行くように」
     今日はここまで、と担任が話を切り上げたのを合図に教室から一斉に同級生たちが引き上げていく。明日からの予定について騒ぎ立てる声は、一夏を謳歌する蝉時雨にどこか似ていた。
    (どいつもこいつも、何でこんなに夏が好きなんだ?)
     級友たちがはしゃぎ回るのを、半田は窓際の席に座ったまま他人事の様に眺めていた。
     昔から夏は得意になれない。体質のせいで日に焼けると肌が火傷したみたいに痛むし、夏場の剣道の稽古は道着のせいで軽い地獄だ。それに、夜が短くなるせいで母と過ごす時間が少なくなってしまう。嫌いとまでは言わないが、好きになれる要素が少ないからどうしても気が重たくなる季節だ。
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