無題色々あって、本当に色々あって、ていうほど簡単に言うことはできないほどに、ほんっとうに色々あって。彼と元の関係に戻れたのは良かったような、もう一歩踏み出した関係になりたかったような、複雑な気持ちを抱えていて。
明日は二人で出かけることになっているので、これはもうデートと言っても過言ではないのでは?と思うことにしているんだけれども。過言…かもしれないけど、こういうのは思ったもの勝ちだと思うので。
となると、考えるべきは、
「明日の服、どうしよう…」
折角なので普段着よりは可愛くしたいところだけど、可愛くしすぎるのもなんとなく気合い入りすぎというか、浮いちゃうというか。引かれたら…どうしようかなって思ってしまって…。
とりあえず手持ちの服を片っ端から出して並べてみたところ。
「可愛い、とは…」
考えすぎて『可愛い』が頭をぐるぐる回って。最終的に一周回って、冷静になってきてみると。
「そもそも、そんなに可愛い服持ってない、のでは?」
いつも外ばっかり走り回ってるせいか、動きやすい服は沢山あるけど。可愛いとは、ちょっと違う気がする…。
とはいえ、出掛けるのはもう明日で。改めて買いに行く時間も無く、そもそも流行りも知らないし、ファッションに自信も無い、し。つまりこの段に至っては、もうどうすることもできない、というわけで。
「…いつも通りで行くしかない、かぁ…」
がっくりしつつ、それでも諦め悪く、何か無いかなぁなんて考えていたら。
「そういえばゼイユが送ってくれた小包、中身なんなんだろう?」
昨日届いていたものの、明日のことでそわそわしてテンパりすぎて、開けられていなかった小包を開けてみると。
「――っ!ゼイユ、ありがとう…!」
中身は、可愛らしい色合いの、色付きリップで。
服装はもう、今さらどうしようもないけれど。ちょっとだけ、本当にちょっとだけでも、可愛くなりたい今の状況にぴったりで。
「――よし、」
明日、待っててよね、スグリ!