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    ミラ(→←)プト/案外背後がガバいプトと結局逆に嵌められたミ

    ※捏造しかない。マップの細部はうろ覚え。
    ミがプトを撃ってます。大丈夫な方だけよろしくお願いします。
    (タイトルは格納時に変えるかも)

    千載一遇 正直、痛い思いをさせるつもりも、怖がらせてやろうという気持ちも無かった。
     ただ、強いて言うなら驚かせてやろうというくらいで。
     けれどそれ以上にあっさりと俺の腕の中に収まり、こちらを強い視線で睨みつけてくるクリプトを見ていると、案外コイツはドローンが無ければ隙が多いのかもしれないと敵ながら心配してしまう。
     後ろ手に回させた左腕を掴み、厚めの生地で作られた衣服越しにある右手首は握りこんで壁に押し付ける。
     横を向いたままザラついた岩壁に顔を擦り付けて嫌がる素振りをしているクリプトの、少なくとも俺よりは遥かに細い太ももに片脚をしっかりと挟み込ませれば、逃げるなんて絶対に出来ない筈だった。
     それなのに未だに必死で全身を動かして逃げようとするクリプトに、思わず体重をかけて押さえ付ける力を強める。
     「! ……ッ……ん、ぐ……」
     途端に吐き出された苦しげな呼吸の先にある唇、そこに滲む赤い血が嫌に目にまぶしく映った。

     本日の【ゲーム】はキングスキャニオンが舞台のデュオ大会。
     初動で降り立った研究所にて仲間だったコースティックは、すぐさま同じ建物に降り立った複数の敵部隊にやられ、助ける間も無くデスボックスになってしまった。
     ジャンプマスターとして俺が研究所を指定してしまったのもあり、せめてバナーだけでも拾ってやろうと物陰から機会をうかがっていたものの、片手に残弾数ゼロのP2020しか無ければ、いくらデコイを出せる俺様だとしても全ての敵を倒すのは難しい。
     結局バナーを拾う機会は訪れず、そのまますぐに【ゲーム】用施設へと戻ってしまったらしいコースティックにため息を吐いたのは約五分ほど前の出来事だった。
     そうして後に残されたのは、初動にも関わらず一切の武器もアイテムも拾えないまま、一人さまよう事になった俺だけ。

     仕方なくハイドロダムの方へと研究所の後ろ側にある巨大な岩の裏手をトボトボと歩いて向かう羽目になったのは、なんだかんだ諦めの悪い俺にしてみれば当然の選択だった。
     研究所には何部隊も降下していて、未だに戦いの音が聞こえてきており、ハイドロダムにも降下していた部隊がいくつか居たのは見えたな、とぼんやり考えていた俺の耳に背後から響く誰かの足音が入り込んできたのはつい先ほどの事だ。
     確実に後ろから迫ってくる足音にどうしたものかと悩んだ結果、岩肌の下にある茂みに身を隠したのは半ば衝動的だった。
     緑の草むらに派手な黄色の衣装では、きっとすぐにバレてしまうだろう。
     その時はその時で運がなかったんだと思うしかないと、息を殺してやってくる人物を待ち構えていれば、俺と同じように敵に撃たれたのか傷ついた様子のクリプトが白いコートをひるがえしてふらふらと歩いてくるのが淡い緑色の隙間から見えた。

     そのタイミングで俺の脳裏に浮かんだのは、ビックリした顔のクリプトを見たいという自分でもアホらしい願望だった。
     きっとクリプトも俺と同じように研究所に降り立った部隊の一人なのだろう。
     いつもなら他のメンバーよりも先を行く事をしないクリプトが誰も連れずに歩いている時点で、俺と同じく一人ぼっちになったに違いない。
     だが、どうせクリプトの事だからドローンで周囲の敵部隊の人数は確認しているだろう。
     それにいきなり飛び出たところで最初に出会った時のように上手くかわされるのがオチな気もする。
     そんな事を考えながら、丁度草むらの前を通り過ぎたクリプトの踵が二歩目を踏み出そうとした瞬間に俺は草むらから一気に飛び出して、その腕を掴んでいた。
     「あ」だか「う」だか、とにかく上手く聞き取れなかったが、いつもの母国語で小さく声を上げたクリプトの腰を自分の方へと引き寄せ、位置を反転させる。
     そこからは随分あっさりと岩壁に追いやられたクリプトは、何が起こっているのかをすぐには理解出来ていなかったらしく、ようやく俺を見た時には太い眉をしかめて目を恐ろしいくらいに吊り上げていた。

     そんな怒りに満ちたクリプトを押さえ込む力を僅かに緩めながら、吸い寄せられるまま、勝手にクリプトの黒い金属デバイスに覆われた横顔を観察してしまう。
     ぽってりとした唇を染めるほんのりとした赤色が苦しそうな表情によく似合っている。けれどそんな事を本人に言えるワケがない。
     何か上手い事を言ってからかってやろうと開いた口は、今度は重みから逃れようとしているのか、ずりずりと岩に体を擦り付けて揺れる様子に意識を奪われてしまって何も言えなくなる。
     クリプトもクリプトで、いつものようにこちらを小馬鹿にする言葉のひとつでも言ってくれたらいいのに、隠れていた俺に気が付かなかったのが相当悔しいのか黙ったままだった。
     しかし、ただひたすら黙って相手を拘束したままというのもおかしな話だと、どうにか唇を開こうと努力する前に、クリプトの方が囁きを零す。
     「お前、そんなに悪趣味だったのか」
     「ッ……おいおい、悪趣味ってひでぇ言い方だな。確かに隠れて襲い掛かったのはあれだけど……別に俺は武器が無いからお前から物資をちょっと貰おうかなって思っただけで……」
     「違う」
     こちらの言葉をさえぎるようにクリプトはさらに眉をしかめたかと思うと、その後に何かを言おうとしてから結局黙ってしまった。

     こんな風に黙るコイツは珍しいと思いながら、ふと下腹部に密着したままのクリプトの尻の小ささに驚く。
     細身だとは思っていたが、合間に押し入っている黒いパンツの太ももに巻かれた左右二本ずつのベルトが、衣装に使っているキルト地の向こう側で確かな存在感をもって腿に当たってくるのがこそばゆい。
     『なんで俺はそんな事をいちいち意識しているんだ?』『気が付いてるだろうけど、太ももだけじゃなくて、腕も細いぞ!』『近づき過ぎると汗臭いと思われるかもしれないからちょっと離れろよ』と脳内で何人もの俺の姿をしたデコイが次々と現れては楽しそうに会議を開く声がした。
     「……やるなら早くしろよ」
     「んぇ!?」
     「その銃は飾りか?」
     脳内会議の最中さなか、不意に飛んできたその言葉に、まるで弾を当てられたフライヤーのように情けない声が喉から持ち上がる。
     クリプトの黒い切れ長の目が、空から降り落ちる光と岩で出来た影のコントラストのせいで妙に艶めかしく見えるのは勘違いだ。きっとそうに違いない。
     そうでなければ、こんなにコイツがかん、か……官能的だなんて、嘘に決まってる。
     それなのに腰を反らして俺との隙間を離れさせようとするクリプトを無意識に追いかける。
     クリプトの手首を握ったままのいつもの黒いグローブを纏った掌には、じわりと暑さだけではない汗を搔いていた。
     どうするべきかを悩みながらも掴んでいた右手を放して、クリプトの背にある今は家主が不在らしいドローンホルダーの横に取り付けられたホルスターに掲げられているウィングマンを取る。抵抗は、そこまでされなかった。
     それが余計に頭の奥をゆだらせる。足元からぐつぐつと弱火にかけられている感覚に近い。

     握ったウィングマンの銃口をクリプトの肩甲骨辺りに押し付ければ、これから撃たれる人間とは思えないくらいの余裕めいた笑みを浮かべたクリプトがそこには立っていた。
     「……また後でな、小僧」
     一発の銃声と弾丸がこちらの手に持たれたウィングマンから放たれ、目の前にいるクリプトの胸を貫く。
     ズルリと力の抜けた肉体と、耳にこびり付いたからかい交じりの甘い声が離れない。
     呆気なくデスボックスになったクリプトを目の前にして、衣服と下着をしっかりと持ち上げる熱に気が付かないフリが出来る程、俺も鈍感ではなかった。
     俺たちはただの同僚で、戦場で冗談を言いながらも競い合うくらいの仲の筈だった。
     そのつもりだったし、それを変えるつもりもなかった。何故なら、そういう対象として一度だってクリプトを見た事が無かったのだから。
     それなのに、何もかもを中途半端に期待させたままアイツは先に戻ってしまった。俺が倒したというのは抜きにしても、だ。
     この後、一体どうしたものだろうと握ったままのウィングマンを睨みつけながら本日二度目の深いため息と、眼前に落ちてくる前髪を撫でつけるようにぐしゃぐしゃと掻きまぜていた。
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