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    天晴れさん

    @hareyoru14

    @hareyoru14 であぷした小話や絵をアーカイブ。
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    天晴れさん

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    小話アーカイブその1【小話アーカイブ】
    頭を空っぽにして読むしょうもない話より。
    だいぶお馬鹿な話題の男光とネコチャン。
    コトに及ぶ前段階はさくっとこれでショートカットしましょう。
    明確なCP左右描写は無いので、光公/ひろ公/光ラハ/ひろラハ または各種リバーシブルでもお好きな組み合わせで脳内変換してお楽しみください()

    時間に追われず、気の向くままに。その先で偶然の出会いを楽しむのが冒険というものであり、その男の愛する生き方である。が、愛しく想う相手の元へ赴くとならば、それは一刻も早く一秒たりとも無駄にしたくはないものであった。
    それ故に、いつもなら予め連絡を入れたり帰還の予定を伝えておく事が多いのだが……たまには唐突に、互いの時間が空く事もある。今夜のように。

    こつん、と額を合わせる。絡む視線は穏やかながらもじわりじわりと熱を帯び始めていた。
    どちらからともなく触れるだけのキスをした所で。男はそのまま少しだけ身を引き距離を空ける。
    「んっ……?」
    いつものように、ここから徐々に互いの唇を食むように深まって溺れてゆく……と思っていたのに。空けられた身体の隙間に僅かな疑問をのせて緋色の耳がぱたりと動いた。
    「一旦ストップ。――準備、しないと」
    「あぁ……」
    どちらかが女性であれば、準備といってもせいぜい風呂を済ませる位だろうが、この愛する猫も男と同じく立派な成人男性であり。男同士で身体を重ねるのにはそれなりの事前準備が必要だ。
    ――必要なのだが。
    「待て、ちょっと待て」
    「ん?」
    「……何をしようと」
    「何って、準備……?」
    不思議そうに首を傾げると同じ方向の耳もぴょこっと傾ぐ。連動するそれはいつまで見ていても飽きないが、視線は思わず彼が手を伸ばしてベッドサイドから持ち上げたもの――彼愛用の杖、つまり武器だ――へ向けられた。
    「何で準備に杖を……俺、何かした?」
    「あ、いや、違うんだ、何もしてないしてない!」
    実は何か機嫌を損ねていたのかと思い男が問えば、彼は耳と尻尾までピンと立たせて慌てて否定する。
    「そうじゃなくって……ああ、言ってなかったから……すまない」
    ぺたりと耳を伏せて謝ると、口許に指を当てて小さくうぅんと唸った。
    「ものすごく端的に言うと……そこら辺の事前準備を一発で終わらせる術式が、ある」
    「…………はい??」
    彼がその年若い見た目とは裏腹に、そこいらの魔導師なんぞ到底及ばない程の頭脳と知識量の持ち主で、あまり知られていないような魔法も数多く使いこなす人物なのは男も良く分かっている。分かってはいるが、一体何がどうなればそんな魔法が都合良く出てくるのか。そもそも何処からそんな術を仕入れたのだ。
    数々の修羅場をくぐり抜け、様々な経験を経て培われた強靭な精神を持つ男ではあったが、流石にこの発言には間の抜けた声を出してしまった。
    「……言っておくが、自分で術式を作った訳じゃないし他に使ってもいないしそもそも覚えたのもごく最近だからな……」
    「そこはちゃんとお前のこと信じてるから……。単純に、何でまたそんなアレな魔法が存在すんだよって面食らっただけだよ」
    「まぁ……出所はアラグなんだが」
    「やっぱアラグのせいか……」

    だいたいこれのせい《またアラグか》

    もはや冒険者仲間ではお馴染み、不可解な事象やはた迷惑なあんなものこんなもの。大体その裏にかかわっているのだ、古代アラグ帝国というやつは。役に立つ場合もままあるから、否定しきれないのがより腹立たしい。
    ついでに言うと、この緋色の青年はアラグ研究の専門家であり、クリスタルタワーにまつわる古代アラグ帝国皇族の知識と血を秘術によってその身に継いでいる。故に、出所がアラグとなれば知っていても不思議は無い。
    「そもそもは医療技術の一環であったらしいんだが……アラグ帝国時代の末期がろくでもない事になっていたのは知っているだろう?」
    「ああ、治安も統率もあったもんじゃなかったって言ってたよな」
    「そう。当然風紀も乱れに乱れていたわけで」
    「あー」
    「快楽主義に走った皇族やら貴族が、ゆっくり大人しく待てをして相手の準備を済まさせてから手を出すとか」
    「あんましねぇだろうなー……」
    ちょっと想像しただけでも何となく分かる。夜を取り戻す前のかつてのユールモアにもそういった類いの人間はいた。
    即ち、獲物に目を付けて捕まえればすぐにでも食らいたい、色々とダメなタイプの獣だ。
    「元々は体質や体調で苦んでいる患者への処置にと編み出されたものだが、得られる結果がそういった用途にも都合が良かったというわけだな」
    「無駄な応用力というか何と言うか……今も昔も人間って欲望に忠実なのな……」
    「全くだ」
    苦笑いしながらしみじみと、ため息混じりに呟く男に、青年がくすりと笑う。
    「さて、そんな訳で慣らすところまでは無理だがその前段階は一発だから、安心して任せてくれ!」
    「あ、うん。宜しく頼む……?」

    ――青年が、己のそこそこ爆弾発言に気がつき、毛並みに負けぬ色の顔で頭を抱えるのは少し後の事。



         ある日のしょうもない二人の話。
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