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    天晴れさん

    @hareyoru14

    @hareyoru14 であぷした小話や絵をアーカイブ。
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    天晴れさん

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    【小話アーカイブ9】
    なかなかアーカイブ8後半が難産なので息抜き……。
    5.3すぐ後位の光ラハ (ひろラハ)っぽいお話。超健全。

    (*´▽`*)お出かけ先はハルブレHです。特製スパイスくれ。

    「へぇ……!そんな事があったのか」
    「ああ。こちらではほんの数ヵ月前の出来事だけれど、第一世界に行っていた分、随分前の事のように感じるね」
    数日ぶりの晴天に賑わうレヴナンツトールの昼下がり。塔の眠りから目覚めてはや数日が経ち、少しづつ身体を慣らす為に石の家から外に出始めたグ・ラハは、ロウェナ記念館のテラスでアルフィノと共に歓談に興じていた。
    今日の話題は、アラミゴでの小さな冒険譚だ。暴君であった王が残した財宝を巡り、アルフィノと当時暁所属の冒険者であったアレンヴァルド、そしてかの英雄――グ・ラハ憧れの冒険者は、死者の魂蠢く迷宮を突破し見事黄金を見つけ出したのだった。
    「結局は、やはり彼には一歩及ばずだったけれど。良い経験になったと思うよ」
    「あの人とその冒険仲間が相手となればなぁ……場数が違うだろう。それに寸差で追い付いただけ凄いじゃないか」
    「君にそう言って貰えると、自信が付くと言うものだね」
    グ・ラハの言葉にアルフィノが含羞はにかむように笑った。グ・ラハが単なるお世辞で誉めるような事はしない性格なのはこれまでの付き合いで十分理解している。だからこそ素直に嬉しく思ったのだ。
    「しかし、迷宮の道中でそんな競争をしていたなんてなぁ。やっぱり実際の同行者の話が聞けるのは面白いよ」
    第一世界に渡る前。グ・ラハは遺された英雄の軌跡をガーロンド社の仲間と共に必死にかき集めて追った。記録の中には今アルフィノが語ってくれた財宝探索についても記載があったが、そこに至るまでの会話や実際の道中での出来事等の詳細までは当然ながら書かれていなかった。
    「大きな戦いの後、ただの冒険者としての探索か……楽しそうで、ちょっと羨ましいな」
    話を持ち込まれた時の冒険者の顔を想像してみる――きっと、心底愉しそうにニヤリとして見せた事だろう。
    冒険者部隊を率いてクリスタルタワー調査の先陣を切り、竜詩戦争にアラミゴ解放戦争、そして第一世界での戦い。グ・ラハが知るかの人はいつだって誰かの前に立ち道を拓く英雄だ。そんな彼が、何も気負わずただただ自由に好奇心のまま冒険へ挑む姿とはどんなものなのだろうか。
    「ふふっ、君もきっとすぐ体験する事になるさ。君の事を、手始めにどこへ連れていくか既にあれこれ思案しているようだからね」
    「えっ、そ、そうなのか?」
    「ああとも。油断していると……ほら」
    「うん。流石アルフィノ」
    「うわ」
    いつの間にか背後に立っていた冒険者に、不意を打たれたグ・ラハが思い切り仰け反った。がたりと浮いた椅子の背を「おっと」と冒険者が片手で支える。
    「来るなら先に言ってくれ……!」
    「すまんすまん。今日は……調子は良さそうだな」
    くつくつと笑いながら、冒険者はグ・ラハの顔色を見遣る。その身に纏う衣装はここ最近の漆黒の甲冑とは真逆の物だった。
    身体に添う赤いジャケットは金糸で煌びやかでありながらも上品な刺繍が施され、黒の生地で全体の色味を引き締めている。ペリース風に仕立てられた片掛けマントのドレープが優雅な曲線を描き、腰に帯びた剣は細く、美しい細工で仕上げられていた。
    この冒険者が様々な分野に秀でているのは良く知られていたが、グ・ラハは彼の記録の中にも、ましてや実際にも見たことの無い出で立ち――赤魔道士だ。
    「あんた、その格好……!」
    「ああ、久し振りに魔法の鍛練でもしようと思ってな。アルフィノも今日は予定空いてるか?」
    「ああ。何処か出掛けるのかい?」
    「ん。黒渦団の連中がまた演習をするらしくてな、久し振りにお呼びが掛かったんだ。いつもは冒険者仲間と参加する事が多いんだが、丁度ラハの訓練に良いんじゃないかと思ってな。……どうだ?」
    「っ……!い、行く」
    「よし」
    二つ返事で答えたグ・ラハの頭を冒険者がくしゃりと撫でた。
    「では、そうと決まれば早速出掛けよう。もう一人位声を掛けるかい?」
    「そうだな。エスティニアンあたり暇してねぇかな?ま、誰かしら居るだろ。ラハは何の鍛練がしたい?」
    「何でも!」
    「流石。頼りにしてるぞ、万能選手オールラウンダー
    にっと笑う冒険者の顔はとても愉し気で、まるで今日の空に浮かぶ太陽のようだった。浮き立つ心を隠す事なく煌めく緋い瞳に目を細める。




    それは英雄譚に書き記される事の無い、ささやかな冒険。
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