Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    天晴れさん

    @hareyoru14

    @hareyoru14 であぷした小話や絵をアーカイブ。
    味付け(CP)は各キャプションでご確認の上お召し上がりください(*´▽`*)

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🐱 🐻 🌸 🌞
    POIPOI 20

    天晴れさん

    ☆quiet follow

    【小話アーカイブ10】カップリング無し。
    光の戦士と某方々の6.0決戦直後の妄想イデア。

    お見送り部隊の皆様も、ちゃんと「お家帰る」と言うまでは強制送還しないで待っててくれそうだなって思ったり(*´▽`*)

      こぷん。

    海に潜ったような音が身を包んだ。閉じた瞼は柔らかな闇に覆われて、まるで「眠り」というものが形を得たよう。
    暑さも寒さも無く、かといって明確な温度も言い表せず。しかし不思議と恐怖や不快感も無かった。

      とぷん。こぽ。

    泡の音が鳴る度、ゆっくりと身体が沈んで行く。息苦しさは無い。……そもそも、呼吸をしているのかどうか。
    はて、これは夢か。ならば己は何処でどう寝入ったのか。
    眠る前にはどうしていたのか……思い出せないのは夢の中故か、だが何故「思い出せない」と思うのだ?

      こぽり。

    また少し沈んで行く。底まで沈めば、目覚めるだろうか?霞む記憶が形を持つか……魂の奥底に眠る、遠い遠い記憶まで。





    「……はぁ、全くお前と言う奴は」
    「いやはや、今回もなかなか無茶をしたねぇ?」
    ――ああ、この声は……覚えがあるな。
    「当たり前だ。覚えていろと言っただろうが……昨日の今日で忘れるんじゃない」
    「フフ、ほら、ねぇキミ?そろそろ目を覚ましてやらないと、我らが友が心配しすぎて泣いてしまうかもよ?」
    ――泣く?自分の所為でか?それは良くないな……。
    「誰・が・泣くか!……それだけ聞こえているのなら、とっとと起きたらどうだ」
    「フフフッ……素直じゃないんだか――あいたっ」
    ゆるゆると、重い瞼を上げた。視界に入るのは、やはり海の中のようで。
    己を覗き込むように、淡い色彩の髪と煌めく瞳を持つ人が、二人。
    ――ハーデス、ヒュトロダエウス。
    「うん、よしよし。ちゃんと意識が浮かび上がったようだね。キミ、ここが何処だか分かるかい?」
    ――海の中……いや、二人が居ると言うことは……星海?
    「半分正解だ。はぁ、漸く休めるかと思ったら……軽率に落ちて来るな馬鹿者が」
    「ここはね、星の海のみぎわ。終焉を謳うものと戦ったのは覚えているかい?」
    ――終焉……ああ、そうだ……青い鳥……メーティオンが、元に戻って……それから……そうだ。あいつが。
    「うんうん。キミ、少しばかり熱烈な子とだいぶやんちゃをしたものだから……肉体を限界まで酷使してしまったようだね」
    ――……そうか。
    「全く、何だあの様は……まるで子供の喧嘩ではないか。余りに勢い任せすぎる」
    ――……それ、多少……いや大分アンタの曾孫の所為だと思うんだが、ってのは言わないほうが良いか……。
    「駄々漏れで聴こえているわ大馬鹿者」
    「ンッフフフフ、この会話じゃ声も思考も同列だものねぇ、ふふ、フフフフ」
    ――あー……星海って事は身体が無いから、思念みたいなもので今喋ってるのか?俺。
    「概ねそう言う事。理解が早いね!柔軟な姿勢は良いことだと思うよ」
    成る程、どうりで物理的な感覚が曖昧な訳だ。記憶と魂だけの状態とはこういうものか。そして、つまり。
    ――……俺、死んだのか。
    星の海の入江、肉体を失った魂が還る場所の入り口。つまりは、そう言う事なのだろう。
    「……早合点するな。お前は『まだ』完全に死んではいない」
    ――……『まだ』?
    「そうだ。ここは星海と現し世の境目。お前と、お前の肉体を繋ぐエーテルの『糸』はまだ切れていない。……完全に切れていたら、問答無用で一気に底まで沈んで来ていただろうな」
    「とはいえ、このままゆっくりでも沈んで行ったら、いつかは途切れてしまう所だったから。ちゃんと留まってくれてて良かったよ」
    ――つまり、死にかけ?
    「うん、何ならちょっと身体の機能は時々止まったりしちゃってるかも。でも、何とか繋ぎ止めようとしてくれているよ」
    繋ぎ止めようとしてくれている。誰が、なんて考える必要もない。ああ、そうなのか。
    ――そうか……まだ、帰れるのか。
    「……そうだ。お前の意志があればな」
    「このまま星海に身を委ねて星に還り、次の転生へ進む道もあるけれど。キミはまだそうじゃないんでしょ?」
    こくり、と迷うこと無く頷いた。
    ――帰りたい。……まだ、足りないから。
    「うん。ちゃんとキミの意志が聞けて良かった。もう心配は要らないね」
    「ならばさっさと、振り返る事無く行け。冥界から帰るというのは、古今東西そういうものだ」
    ――ああ、ひんがしの国だと「黄泉還り」とか言うんだっけ。振り向くと引きずり込まれちまうって聞いたな。
    「フフッ、そんな伝承もあると言うね。でも多分、キミの場合は真逆の扱いをされるよ?……ほらね」
    え?と問う前に、くっと押し上げられるような感覚がした。押されている、何かに……誰かに。
    振り向かずとも、これが誰か……誰“達”なのかは、分かる気がした。そう、だからきっと、振り向く必要が無いのだろう。
    「……行ってこい、お前が満足するまで。次の舞台の緞帳どんちょうは、自ら上げてみせろ」
    「そうしてキミが存分に物語を紡ぎきったなら、その時はまたここでキミを迎えよう。土産話を楽しみに待っているよ」
    押し上げられて、浮き上がる。水面に近づくにつれて、声が聞こえた。




    ふ、と小さく息を吐いた。

    ぐすり、と啜り泣く声がする。堪えるような呻き声に似た声がする。
    ――どうしたんだ?何か困っているのか?力になれる事はあるだろうか?
    そう、冒険者というものはこれが基本なのだ。勿論職業上、こうして稼がねばならない訳ではあるのだが……それ以上に、気になって仕方がないのだ。
    お人好しだとよく言われるが、大いに結構。勿論毎度すっきり解決するものばかりじゃないが、こうしてやって来た中での出会いが、掛け替えの無い絆を自分に与えてくれた。
    それがどれだけの価値有るものか。何せ、世界を救うほどのものだったのだから。

    柔らかい、温かい光を瞼に感じる。
    呼び声に応える為に、ゆっくりと眼を開けた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭😭👏👏👏👏👏👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works