Vegasの謎知識 ◆
二人の寝室、ベッドの上にはVegasと俺。濃厚な前戯によって既に十分な昂ぶりを見せる"俺自身"への、目の前にいる男の不可解な行動が理解出来ずに動揺が目蓋を瞬かせる。Vegasに対して思わず浮かんだ疑問符は直ぐさま喉を通って吐き出されていた。
「な…んで…」
ほんの数分前──…向かい合ってキスをして、互いの肌に触れ合って…当然下も然り。Vegasのはちょっと規格外だから片手じゃ上手く扱えなくて両手で包んで擦り上げた。拙い動きでも悦んでくれるのが嬉しい。
Pete…と俺の名を呼ぶ声に熱がこもり、身動いだVegasの手が徐ろにサイドチェストへ伸びて行き、手慣れた手付きでスキンを探る。着けるのを邪魔しないようにと窄めた両手を離し、そのまま腕を肩に回して、もたれ掛かるように抱きつきキスを強請った。
お互いの舌が数回絡んでVegasの唇はするりと下へと降りていく。違和感を感じたのは胸の突起を舐られて震えた瞬間。
ベッドの上で座り込むような状態だった上半身を僅かに後ろへ倒し、布一枚すらも剥ぎ取られ空気に晒される自分の股ぐらを覗くように顎を引けば、二重に装着されたスキンが見えた。
(なんで俺に?しかも二重って…)
Vegasの不可解な行動に思わず、な…んで…と呟いてみたけど理由が全く分からない。
「何これ…新手のいじめ?」
取り敢えず、おどけてみる。だってなんて聞けばいい。まさか俺が Vegasに入れ…いっやいや、あり得ない!ふわふわしていた思考がクリアになり、思い浮かべた光景に頭を振る。
自分が記憶している限り、俺がこれを着けさせられたのは二回だけ。一回目は外?…みたいな所。限りなく外に近い場所とだけ言っておく。二回目は車の中。なんであんな状態で始めちゃったのか、はっきり覚えてない。酔ってたような気がする……(自己嫌悪)
どちらも家じゃなくその流れに不自然さは感じなかったし、当然二重にするなんてこともなかった。どうしてこうなったのか分からず、疑問符だらけの俺を下から上へと、見上げるように上昇してきたVegasの顔と切れ長の瞳の中に、悪ふざけの色は見えない。
「違う、期待するな」
と、返事が返ってくる。やっぱり、おふざけじゃないらしい。胎内に響く低い声にゾクゾクしながらも「し、してなッ…い!期待なんて…」と尻込む。いや実際のところ、"いじめ"を期待してなくはない。でも一応は否定しておかないと。と、なけなしの自尊心が顔を覗かせるが、順調に調教されてしまってる。
どうせ俺の葛藤や期待なんてバルバレなんだろうなと思いつつ、既に自由を奪われている自分の手首をちらりと一瞥してVegasから視線をずらす。今じゃ俺自身が望んでこうしてもらっていることが多々ある。そしてVegasは上手く俺をコントロールしてくれていた。
が、この二重スキンには、ちょっと理解が及ばないなッ!!?
「Vegas、まさか俺がお前に…挿れ…ッ、とかじゃないよな?」
舌噛んだ。念のため…聞くのは念のためだ。
「挿れたいのか?」
質問に質問で返すなよッ!!?
「…………」
「Pete?」
「無理、想像つかない」
「そうか。試してみたくなったら言えばいい」
え…ありなの?Vegas的に。
「…──リ、リョーカイ」
明後日の方を眺めて返事をしておく。
「お前、最近起きられないだろ」
「?」
視線を目の前の男へと戻す。Vegasの言葉が何を指しているのか分からない。起きられないって朝の話か?前ほど早起きじゃないが、Vegasの起床時刻には一緒に起きてる。
目が覚めるのは本当はもっと早いけど、起きてもやることがないから、ついついベッドから起きずにぬくぬくしてるだけ。Vegasの寝顔も見れるし。
ちなみにVegasの熟睡時はマジで死んでるみたいで、ちょっと怖い。身動きしないどころか息さえしてるのか怪しくて、たまに頬をつついて半覚醒させてることは内緒だ。
「Pete…」
微かな歪みを伴って訝しむ目元に伸びてきた、Vegasの指先は眉にかかる厚めの前髪をそっと払うと顳顬を通って左耳の後ろを辿り、掌珠にでも触れるかの如く柔らかに耳輪を包む。
自分より幾分か体温の低いVegasの右手が耳全体を撫で回し、名残りを惜しむように親指の腹が優しく耳朶を擦って離れてゆく。
「やった次の日、なかなか起きてこない」
…──は?なに?もしかして俺の身体を心配してる?それともLUNAたちの散歩に付き合わないから怒ってるのか?まさか朝、ひとりで寂しいとか、、、!?
これでも随分わかるようになったと思うだが、はっきり言ってこの男の表情は読みづらい。どれが正解なのか聞こうと口を開きかけたところで、不安げに沈めていた顔を、ふっと真顔に変化させたVegasが話を続けた。
「射精しなければ負担が減る」
「へ?」
シャセイシナケレバフタンガ?…何だって?
「二重すれば刺激が減ると書いてあった」
お前一体なに見たの?そんなのTVでやってた?いや、やるわけない。そりゃ刺激は減るだろうさ。なんたって二重だもんな、うん。翌日の負担?もしかしたら減るかもしれない。
でもなVegas…その状態で俺は何時間"耐久レース"させられるわけッ!?負担倍増しないか??そもそも一晩の回数減らせばよくない???
てか、なんっ…何なんだよ!!?
「無理ッ…取れよ!Vegas!!!」
「Pete…」
そんな叱られた犬みたいな顔しても無理なものは無理だ!
「取らないなら、しないッ」
「頼むPete、今夜だけでいい。いや一度だけ試して無理なら外す」
不安げに眉を寄せ、お前の身体が心配なんだ…と悩ましげに囁くVegasに一瞬絆されて頷きそうになるが、俺は流されない!!!だって、お前が気づいてないわけない。二重にされたところで意味なんてない。前の刺激なんて後ろの快楽に比べたら、最終的にどうでもよくなってるってこと──…
「チィアッ!」
天井を仰ぎ、叫んだ俺の無防備な喉元目掛けて伸びてきた手に緩く締め上げられる。見下ろした時には身体は傾き、押し倒されてベッドに沈められていた。
スプリングの軋む音に眉を顰めて睨みつけると下半身に跨り覆い被さるVegasの指先は力を緩め、首元から滑るように下って胸を弄る。
「いいだろ、Pete?」
よくない、よくないのに、、、結局俺はVegasの"お願い"に頷いてしまう。
…──Ah〜…俺って"Good Boy"だなッ!!