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    維新〜アクアリウムぐらいの颯斑

    ある日。
    「颯馬さん、今のは俺ぐらい斬れていないと神崎の名が泣くぞお!おにいちゃんが稽古をつけてあげようか?はははは!」

    またある日。
    「昨日紅郎さんとレッスンしたんだが、やっぱりソロに向いてると思うなあ。雄健蒼勁!ソロでのノウハウを紅郎さんに植え付けるとなると弟の敬愛する人を盗ってしまうことになるが、わくわくするなあ☆」

    そしてまたある日。
    「兄として情けないぞお、颯馬さん。きちんといかなるときでも対応できるように――」




    「兄兄兄と鬱陶しいわ!!!」
    「うおわ!?」
    斑の眼前を何かが高速で素通りしていく。颯馬の得物のリーチからでは到底届かないはずの距離から繰り出された攻撃に、流石の斑も大きく仰け反った。
    「外したか……!」
    「え?今何投げた?石?刃物か?」
    「手裏剣である」
    「何でそんなものを、いや君の家なら入手できるか」
    斑といえども本物の手裏剣を目にすることは初めてだ。自分の顔面から逸れて背後の壁に刺さったそれをまじまじと見つめる。
    「手裏剣ということは、忍さんにあげるためのものだったんじゃないかあ?こんなところで俺に投げていていいのか?」
    「構わぬ。それは貴様を仕留めるために調達したものである」
    「構うが?」
    殺意が高めの颯馬の言葉通り、その手裏剣は十分な殺傷能力を持っていそうな代物だった。毒を塗って投げることが一般的な使用法であるが、当たりどころが悪ければこれ単体でも十分命を奪えそうだ。
    さすがの颯馬といえども、斑に投げたようなものに毒は塗っていないだろう。多分。きっと。斑は少し不安になり、触ることは止めておいた。
    「仙石にも渡そうと思ったが、銃刀法違反になりかねんのでな。断念した」
    「相変わらず忍さんと仲良さそうで何よりだなあ」
    「可愛い弟分である。貴様のように血の繋がりもないのに兄を自称するような小気味悪い趣味は持ち合わせておらぬが」
    毒を纏う視線を投げ、颯馬はふっと鼻で笑う。
    日頃の颯馬から忍への可愛がりようを見ると小気味悪い趣味への才能があるように感じたが、斑はスルーした。
    「酷いなあ。兄弟仲を深めようとしてたんだぞお!」
    「軋轢は深まったな」
    大口を開けて笑いながら背中をバシバシと叩く斑に、颯馬の身体はゆらゆらと揺れる。即座に刀を引き抜くが瞬間移動でもしたのかというほど素早く斑は颯馬から距離を取った。
    もっと手裏剣の鍛錬を重ねる決意を固めつつ、颯馬は深くため息を吐いた。
    「日頃執拗に主張しておる『まま』はどうした」
    その一言に、斑は目の前をゴキブリが通過したように表情を歪めた。意外な反応に、颯馬はわずかに目を泳がせる。
    今の一言を脳内で反芻するものの、特段問題ある内容には感じられなかった。それでも自分が他人の感情に疎い方である自覚がある颯馬は、問題点が分からないままに罪悪感でチクリと心が痛んだ。
    そんな颯馬へ斑は一歩近づき、恐る恐る尋ねた。
    「颯馬さん、俺の子どもになりたかったかあ?きもちわる」
    「腹を掻っ捌いて人形でも詰めてくれようか?」
    「うちの母でもそんなことしない」
    斑の突拍子もない言動の数々に神経がゴリゴリと削られる音が聞こえるような気がした颯馬。

    数時間後、颯馬が癒やしの強奪をするかのように忍を構い倒している姿が目撃された。
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