ロマンス 出会いは完璧だっただろう。天国のような陽が降り注ぐ午後、整った美しい横顔、一万分の一の掛けに乗った瞬間。
一瞬で恋に落ちた。もう他の何も目に入らない。彼を逃すつもりは無いし、手放すなんてもっての外だ。蜘蛛に囚われた蝶のように、どうやっても逃れられない。
だから、将棋のように、少しずつ詰めていった。
名前を教え合い、挨拶をするようになり、並んで歩いて、偶然を装って手を繋いで……。
最初に躓いたのは大学三年のときだ。思いのほか繊細だった彼の中に土足で踏み込んでしまった。その反発は驚くほどで、リセットするのにとても苦労したものだ。
あれから何度、この関係が壊れていっただろうか。
その度に自分の愚かさにため息をつき、彼の臆病さに涙しながらも、その度にまた初めからやり直していった。
2797