Distance今朝聞いたアリスの声が耳から離れない。
学生の頃からの付き合いだ、アリスの寝言を聞いたのはこれが初めてではない。
「火村、ノート見せて」だの「火村、腹減った」だの「火村、眠い」だの、愚にも付かぬ寝言は学生時代から結構な数聞かされてきた。「眠い」に至っては言語道断だと言ってやったこともある。寝ている癖に眠いとは何事か。
しかし今朝聞いたそれは、今まで聞いたような馬鹿にしてやれる内容とは異なる種類のものだった。
自分が時々見る夢のような、内面に潜む闇が引きずり出されたようなものとも違う。
ただ、顔を見るまでもなく、おそらくアリスは夢をみているのだろう、と思った。
聞き逃せない単語が幾つか出てきたこともそうだが、いつもとは口調が全く違ったからだ。
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