アデアレ 洗わば恋 ファソンの町を出る時に、町の娘たちが駆け寄ってアデルの手に包み紙を渡した。その頃のアレインとアデルの関係はまだクライブが繋いだ縁の先と先という仲で、アレインにとってアデルとは騎士の一人であり、自分の身内ではなくクライブの知己だった。
いつからだったろう?アデルの人となりを知り、馬の手綱を操る手腕に感服し、酔った彼の口から自分に対する想いを聞き……触れ合う機会が増える度、アレインの中でアデルという男はクライブの仲間ではなく、自分の親しい人、仲間、信頼出来る男とステップアップを遂げ、今では、とうとう、行き着くところまで行き着いた。好きな人、だ。
「あの包み紙の中身?ああ、あの子たちは小間物屋の娘さんたちで……花の香りのする石鹸ですよ。店で一番人気の品を、と見繕ってくれたそうです」
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