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    ナンデ

    @nanigawa43

    odtx・dcst・ユニオバ

    何でも許せる人向け 雑食壁打ち

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    ナンデ

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    通常エンド後アレルノ

    取り返せない日々に、踊ろう、明日に怯えても ルノーがアレインに光を見たのは、アレインがルノーの身にへばりついた覚えのない罪を取り払って「本当のルノー」を見つけてくれたからだ。
     だから、ルノーは本当のアレインを見つけたかった。
    「陛下、どうされました?」
     王の居住であるグランコリヌ城に自室を与えられてから数年。世界の救世主と民草に愛され、祈られるアレインの傍らにルノーはいつでも居て、だからこそ彼はアレインが光を失っていくのを肌で感じていた。
    「ルノー……夜分遅くにすまない」
    「構いませんとも。眠れませんか、陛下」
    「ああ、少しだけ一緒に居てくれないか」
     ルノーの部屋の扉を叩いた、アレインはローブを深々と被っていて、昼日中胸を張って世界の先に立つコルニアの王の姿からは考えられないほど小さく、頼りない姿に見える。その佇まいはまるで子どもだ。十数年前に遠くから見かけた、イレニア女王の小さな宝物であった頃のように。
    「陛下、こちらにお座りください」
     ルノーは夜着の上にストールを羽織り、座らせたアレインの顔にかかるローブをはらってやる。深緑のローブの下からは蒼い髪と瞳がきらめいて、ルノーはその度に彼のローブをはらって良かったのか、と自問する。彼からローブを脱がせて良いのか。それは彼に王に戻す行為なのではないか?
    「ルノー、すまない」
    「いいえ……何かありましたか」
    「……ん」
     ルノーはベッドサイドに置かれた水差しを手に取って、出来るだけさりげなく聞いてみる。水差しに浮かぶ輪切りのレモンの実とハーブは、ユークイットで育てているもので、今やルノーの部屋に愛しい故郷の面影があるものと言えばこれくらいしかない。強いていえば鏡面にうつる己の姿も、あの故郷で生まれ、出来たものか。
    「良い王だったと、言われたよ……」
     アレインの悲しい声に、はたと振り向く。手を離した水差しが滑り落ちて床を濡らすのも構わずに。
    「アレイン!」
     思った通り、アレインはほろほろと泣いていた。瞳を開けたまま、身体を暗い色のローブに包まれて、カーテンを開け放した窓から降り注ぐ月の光に、その蒼い髪と瞳をきらめかせ、ルノーが抱きしめても身体をぴくりとも動かせないまま。
    「……イレニア女王は良い女王だったと、皆……口を揃えて……俺のことも、良い王だと、コルニアは、安泰だと……」
     肩がちいさく震えている。ルノーは力の限りアレインを抱きしめて、彼の名を呼びながら、神に祈る。おお、神よ!この地を守護する一角獣よ、どうしてこの深き愛の人を、光の救世主を、悲しみと後悔の海から掬い上げてはくれないのだ!彼が何をした、彼が何をした、彼が何をした、彼は世界を、世界を救っただけじゃないか……。
    「アレイン、アレイン……」
    「ルノー……ルノー……」
     民草は知らないのだ。イレニアを"討った"のがアレインであることを。ユークイットの民の顔を曇らせたのがルノーの知らぬルノーであったように、コルニアの民を不幸にし続けたのが、イレニアの知らぬイレニアであったのを知らないのだ。コルニアの民はだからイレニアを愛し続ける。アレインを崇め続ける。その重圧をこの少年はこれから、ずっと、抱え続ける。
    「アレイン、アレイン、貴方は何も悪くない、貴方は、貴方は何も……」
     言っているうちにルノーの瞳からも涙が零れて、アレインのつむじに落ちていく。
    「ルノー……すまない、すまない……」
     アレインは、民たちに石を投げられない。だから彼はこうして苦しむ。ルノーはぶんぶんと頭を振りながら、アレインに祈る。
    「貴方は成すべきことをなさった。貴方は世界を救ったのです。貴方はイレニア女王をお救いになった。私も、私のことも、あぁ、あぁ、アレイン、貴方が泣くと私も辛い」
     アレインはやがてルノーの身体を抱きしめ返す。自分の悲しみに泣いてくれる人を、この真っ直ぐで、どこまでも純粋な、アレインの為に在る男の存在を確認するように。
    「アレイン、アレイン……」
     いつのまにか月は雲に隠れ、部屋には暗闇が落ちていた。アレインは泣き止んで、ルノーの嗚咽を聞いている。先程までアレインの心に落ちていた石の雨は止み、愛しいルノーの優しい涙だけがアレインを濡らし、暖めていた。
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    Replies from the creator

    ナンデ

    DOODLE手放したことなんてなかったよ

    前世記憶有り・現代世界転生・年齢逆転のアレルノ
    呟いたものをふわっと小説にしたふわっとした小話なのでふわっと読んでください。ふわふわ。
    千年隣に居させて欲しい、貴方の蒼と魂の ルノーの未練は永くアレインを独りにしたことだった。未練は後悔と混ざりあって執念に変わる。生きていた頃と同じように、ルノーの魂は熱く燃えて、魔法ではなく科学が蔓延り、馬ではなく低燃費軽自動車が走り回る世界に生まれる時に「今度こそ、あの方を置いていきたくない」と大層踏ん張った。その結果が、これだ。
    「ルノー……久しぶり」
    「陛下……」
    「はは、良かった。覚えていてくれたんだな。……もう陛下じゃないし、殿下でもないけど」
     いたずらっ子のように微笑む、かつての恋人は見るからに上等のスーツを着ていた。薄青のシャツに、あの紋章を思わせる濃い青のネクタイをしめている。目元には少し皺が寄っていた。慣れた着こなしと落ち着いた表情は、大人の男そのものだった。問題は、ルノーが着ているのが学生服だと言うことだ。県内でも有数の進学校の創立当初から変わらないレトロな学ランに、夏休み明けに新調したスニーカー。抱えているのは教科書が詰まったナイロンリュックで、これは高校入学の祝いに祖父母に買って貰ってから一年半と少し、大事に使っているものだった。
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    ナンデ

    DOODLEギャメセレ
    この道も天に続いてる  縁、というものを手繰り寄せてギャメルは報われてきた。妹の病気というこの世の終わりにも等しい絶望に打たれ、人の道を外れた自分のそばに居てくれた親友に支えられ、他人の悲鳴と怨嗟の泥に塗れて形を無くしていく最中に太陽のような王の行軍に救われて、セレストに出会った日、ギャメルは自分が今度こそ裁かれるのだと思った。グリフォンの羽ばたきの音は強く、迷いなく、空を駆けてギャメルに届き、その背に乗る女の子は天使のような風貌をしていた。だからギャメルは可愛らしい天使の口から自分の故郷の状況を聞いた時、王は許しても天はギャメルを許さなかったのだと……そう思った。
    「急いで!まだ間に合う!」
     だけれど、セレストはギャメルの手をひいて、ギャメルの人生の来た道を戻っていく。辿り着いた故郷で斧を奮って昔のギャメルによく似た「奪う者」をなぎ倒していく。病で痩せ細った妹の手を握り、「大丈夫ですよ」と微笑む。巻き戻して、やり直しているみたいだ、とギャメルは思った。自分が歩いた泥の道をセレストが歩き直すと花が咲く。ああ、そうだ。ギャメルはこう生きたかったのだ。妹の前で泣くのではなく笑って、彼女を救い、親友の弓を人でも神にでもなく、正しく獲物に向けて自分たちの明日の糧にするために使わせて、奇跡のように現れた清らかな王子様に罪ではなくおとぎ話を見せたかった。何より、何よりも、ギャメルはセレストにとって素敵な男の人として出会いたかった。朗らかで明るくて、優しくて、真っ直ぐで、心根の美しい青年として、セレストに出会いたかった……。
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